風が冷たくなりました。
街を歩けば、吐く息が白くほどけ、
その儚さに、季節の移ろいを感じずにはいられません。
お嬢様、いかがお過ごしでございましょうか。
手袋の内側まで染み込むような冷えの日々、
どうかお身体をお労りくださいませ。
私の部屋にも、ようやく冬がやってまいりました。
窓辺のカーテンが微かに揺れ、
その隙間から忍び込む夜気が、
まるで誰かの囁きのように頬を撫でてゆきます。
この季節になると、紅茶の香りがいっそう深く感じられます。
湯気の向こうに、記憶の景色が浮かび上がるようで――
お嬢様と初めて交わしたご挨拶、
冬の夜に差し出したティーカップの温もり、
そんな断片が静かに蘇るのでございます。
寒さというものは、不思議なものでございますね。
人を縮こまらせるようでいて、
心の奥では、誰かの温もりを求めさせる。
まるで、孤独の中に優しさを忍ばせた詩のようでございます。
どうかこの冬も、穏やかでありますように。
お嬢様の手が、冷たさではなく、
誰かの温もりを覚えておりますように。
八幡でございました。