日誌

ご機嫌麗しゅうございます。
久保でございます。

秋の運動場というのは、不思議な場所でございますね。
誰もいないはずなのに風が吹くたびに、どこか遠くで笑い声が聞こえるような気がいたします。
落ち葉がサラサラと音を立て、白いラインの上を転がっていく…
まるで、過ぎ去った季節たちが、もう一度走り抜けているようでございます。

けれど、よく見ておりますと落ち葉というのはただ散っているわけではございません。
風に運ばれながら、運動場のあちこちで小さな模様を描いていくのです。
それはまるで、人の記憶のようでございます。
形も色も違う思い出が時間の風に押され、少しずつ寄り添いながら、模様をつくっていく。

思い出とは、積もる落ち葉のようなものかもしれませんね。
時には踏みしめてしまいたくなることもございますますが、ふと足をとめて見つめると、そこに確かに自分の足跡が残っている。
あの日の息づかいや、かすかな声の余韻までもが、まだ風の中に漂っている気がいたします。
だから私は、運動場を掃くときも、すべてを片づけようとはいたしません。
少しだけ残しておくのです。
風が吹けば舞い上がり、陽が当たればきらりと光るそんな一枚の記憶を。

それはまるで、心の奥に残した小さな光のようなもの。
過ぎ去った時間を思い出すたび、静かに温もりをくれるのです。

落ち葉も記憶も、消してしまうには惜しいもの。
それらが重なり合って、今日の自分を形づくっていくと存じます。
お嬢様、私は決して落ち葉を片付けるのが面倒になったわけではございません。

そうです素敵な記憶を残しておきたいのです!

ですから、これから午後の給仕に備えてお昼寝をさせていただ、、、。

い、今一度お掃除に行ってまいります。

日誌

お嬢様、奥様、お坊ちゃま、旦那様、ご機嫌麗しゅうございます。
久保でございます。

朝夕の風がひんやりしてまいりましたね。

陽ざしの色も、どこか熟考を重ねたあとのようにやわらかく、木々もため息をつくように色づきはじめております。

秋は、まるで一年が少し立ち止まって、自分の影を見つめ直しているかのような、もう少しで今年が終わるなぁ、ついつい来年について考えてしまうそんな季節でございます。

そんな季節にあわせて、今年もまたブラジルの伝統菓子「ぷぢんケーキ」をお届けいたします。
練乳をたっぷりと使った濃厚なプリンが静かに上層を楽しく

その下では、ほろ苦いココアスポンジが落ち着いた余韻を支えております。

ドイツの哲学者ヘーゲルは「対立するものは、より高い次元で統合される」と説きましたが、
このお菓子もまた、甘さと苦さという異なる性質が互いを打ち消すことなく、
むしろ引き立てあいながら一つの世界を形づくっております。
昨年と今年という異なる時間が、同じ味わいを介してつながるのです。

変化と持続がひとつの皿に並んでいるのかもしれませんね。

ちなみに、今年も表記はあえて「ぷぢん」とひらがなにさせていただきました。

小さくてまるい文字の並びが、このお菓子のころんとした可愛さに似ている気がしたからでございます。
難解な哲学の話をしておきながら、名前だけは可愛く、そんな小さな矛盾もまた、この菓子にぴったりかもしれません。

もっとも、考案者としては「甘さと苦さを調和させる」という高尚な理念を掲げつつ、
試作中は最終的に練乳の量とにらめっこをするという、たいへん哲学的とは言いがたい戦いを繰り広げておりましたが…

考えていたら、私という存在と、この静かなティーサロンの秩序との間にも、なんだか矛盾が生まれている気がしてまいりました…。

きっと気のせいでございましょう!

秋でございますから、やはり考え事が増えますね…

そんな秋の始まりに、どうぞ今年もこの楽しい調和の甘美をごゆっくりお楽しみくださいませ。

 

日誌

お嬢様、奥様、お坊ちゃま、旦那様、ご機嫌麗しゅうございます。
久保でございます。

時間とは目に見えぬのに、誰よりも厳格な監督のような存在でございます。

ほんの数分遅れただけでも叱責し、どんなに早く準備を終えても労いの言葉はかけてくれません。
しかも、その監督は休暇もとらず、夜中であろうと早朝であろうと、律儀に秒針を打ち鳴らしております。
本当に働き者ではありますが、もう少し柔軟に接していただきたいものでございます。

けれども、もしこの監督が存在しなかったらどうなるでしょう。
ティータイムが始まる時間は曖昧になり、お嬢様が紅茶をいただくつもりが、気づけば真夜中。

紅茶の代わりに夜食を用意する羽目になるかもしれません。

そう思うと、この厳しい監督も、実は陰ながら秩序を守る守護者なのだと感じます。
時間は時に私たちを急かし、時に待たせ、思うようにはならない存在でございます。
けれど、その不自由さゆえに、ひとときの笑顔や言葉はより鮮やかに心へ刻まれるのでしょう。
もし永遠に続く午後があったなら、お嬢様との会話も、きっとただの雑談になってしまう。
限られた中で交わされるからこそ、その瞬間が素敵に輝くものだと思います。

ただ、それでもやはりお願いできるのであれば、清掃の最中だけはこの監督に小休止していただきたい。
掃除機と格闘している間の一分は、一時間に等しく感じられるのです。
その一方で、お嬢様が笑顔を見せられる瞬間は、ほんの一秒でも羽のように軽やかに過ぎ去ってしまいます。

かくなる上は、時計の監督を味方につける秘策を編み出すしかありません。

何か秘策を授けてください。

なお、9月16日には冴島と共に、ささやかながら特別なカクテルをご用意する所存にございます。
どうぞそのひとときも、時を忘れてお楽しみいただけますように。

 

日誌

お嬢様、奥様、お坊ちゃま、旦那様、ご機嫌麗しゅうございます。

暑さが日に日に厳しくなる中、いかがお過ごしでしょうか。

お屋敷の中で、冷たいグラスの氷がゆっくりと溶けていくのを眺めておりました。

決して給仕をサボってるわけではございません!決して!

窓がないため外の風は感じられませんが、ふと冷房のそよ風が心地よく、暑さの中にひと息つけるひとときでした。

そんな中、グラスの氷が知らぬ間に減っているのに気づき、

誰かがこっそり味見をしているのかもしれない…
などと想像してしまいました。

もちろん、わたくしの豊かな想像力の産物に過ぎませんが。

こうした小さな気づきや変化は、静かな日常にひとさじの動きをもたらしてくれるように存じます。

変わらぬ毎日でも、ほんの少しの違いが心にささやかな刺激を与えてくれるのでございます。

夏の暑さは時に厳しいものでございますが、そんな風が心に涼やかな余韻を残してくれることもございます。

小さな驚きや喜びが、お嬢様、奥様、お坊ちゃま、旦那様の八月にも届きますように、心より願っております。

それでは私は日誌を認めながら、もう少しだけ涼みたいと存じます。

日誌

お嬢様、奥様、お坊ちゃま、旦那様、ご機嫌麗しゅうございます。
久保でございます。

お嬢様、奥様、お坊ちゃま、旦那様、今年も七夕の飾りつけをしておりましたところ、
「願いごと書きましたか?」と、ふいにお声をかけられまして。

はい、、、書いておりませんでした。
短冊を目の前にして、固まってしまったのでございます。

昔は「背が伸びますように」とか「俊足になれますように」だとか、
ぱっと浮かんでいたのですが……どうにも筆が止まってしまいました。

今の自分は、何を願いたいのか、、、
ありがたいことに、笑って過ごせる場所があって、お嬢様がおられて、
それだけでも十分すぎるくらいだと存じております。

けれども、それでは「満ち足りている」と言いきれるのかと言えば、どこかで「もっとできるようになりたい」、「お嬢様の役に立ちたい」と、欲が顔を出す。
成長したいとか、笑っていただきたいとか、
あともう少しスマートな給仕をしたいと。

人の心は、満足と向上心のあいだを行ったり来たりしているのでございますね。

まるで、冷房の温度設定のように。上げては下げて、また戻って。

結局、悩んだ末に書いたのは、

「今日も、心から笑って過ごせますように」でございました。

答えのない問いを抱えながらも、笑って前に進めるのが人間の良さだと、そう信じております。

それではお嬢様、長い夏が始まったばかりでございます。
くれぐれも体調にはお気をつけてご自愛くださいませ。

日誌

お嬢様、奥様、お坊ちゃま、旦那様、ご機嫌麗しゅうございます。
久保でございます。

窓の外から聞こえる雨音が、今日はなんとも心地よく響きます。

6月の朝は、空気もしっとりとしていて、まるで季節がひと息ついているかのようでございますね。

木々の葉も濡れながら、静かに揺れておりました。
こういう静けさの中で過ごす時間も、案外悪くないものでございます。

日々の暮らしの中でふと立ち止まると、
何気ない風景や音、香りに心が動かされることがございます。

温かい紅茶の湯気、雨に濡れた土の匂い、お屋敷の誰かの笑い声。
そういったささやかなものに気づけること、それ自体が、
「人生の醍醐味」なのではないか、そんなことを思ったのでございます。

けれど、その一方で、「挑戦」というのもまた、人生の味わい深さのひとつだと感じます。
慣れたことだけを繰り返していては、確かに穏やかではございますが、
どこか物足りなさを覚えることもあります。

わたくし自身、不器用ながらも新しいことに手を伸ばしてみることがよくあります。
最初は戸惑いもございますし、時には「なんでやろうと思ったんだろう……」と
後悔めいた気持ちに襲われることも、正直ございます。

それでもやっぱり、「やってよかったな」と思える瞬間が来るのです。
うまくいかなくても、「私、ちゃんと向き合ったな」って、
小さくても胸を張れる気がするのです。

人生の醍醐味と言うのは、
穏やかな幸せに包まれることと、
少しだけ勇気を出して自分を超えてみようとすること。
その両方があるからこそ、毎日がちゃんと「自分のもの」になるのではないかと存じます。

たとえ転んだとしても、笑って立ち上がればよろしゅうございます。

誰かに見せるためじゃなく、自分のために。
そうやって積み重ねていく一日一日が、きっと何よりの宝物になるのではないでしょうか。

 

 

雨が続くと、つい色んなことをじっくり考えてしまいますね。
そんな時間も私は大好きでございます。
お嬢様はどんなことを考えておられますか?

 

日誌

お嬢様、奥様、お坊ちゃま、旦那様、ご機嫌麗しゅうございます。
久保でございます。

先月は、冴島と一緒にお作りしましたカクテルをお召し上がりいただき、誠にありがとうございました。
拙いながらも、あれこれ試行錯誤しながら心を込めてご用意いたしましたので、少しでもお楽しみいただけておりましたら、これほど嬉しいことはございません!
冴島のひらめきと、久保のほんの少しの小細工(?)が、良い味になっておりましたでしょうか。
これからも精進を重ね、さらに美味しいひと品をお届けできるよう励んでまいりますので、その時が来ましたらよろしくお願いします!

ぽかぽかと暖かな陽気に包まれ、五月の風が木々を優しく揺らす今日この頃。外を歩けば、思わず深呼吸したくなるような清々しい季節でございます。とはいえ、日差しの力強さには注意が必要ですので、体調管理にはくれぐれもご留意くださいませ。

さて、そんな5月、私は才木と共に「アントワネット」の配膳係を担当させていただきます。
普段の私にとっては、少々背筋を伸ばさねばならぬ場ではございますが、才木の立ち振る舞いに刺激を受けつつ、張り切って務めてまいる所存でございます!

デザートの配膳係は今回が二度目の挑戦でございます。
前回は重たいワゴンに手こずり、思わず冷や汗をかいてしまいましたが、今回はその経験を活かし、よりスマートにお運びできるよう心がけてまいります。

甘い誘惑に負けぬよう、そしてお皿を飛ばすことなく、しっかり務めさせていただきますので、どうぞご期待くださいませ。

5月も笑顔溢れるおもてなしができますよう、全力を尽くしてまいります!

追記
執事歌劇団…
凄かったですね…

優李君…良いですね…本当に…
三休さん!!ははっ!!