審美眼

掃き清めし庭に今一度枯葉を撒く。

季節はまさに本格的な冬の片足手前といったところでございましょうか。
お嬢様、いかがお過ごしでございますか?

香川でございます。

塵一つなき様を最適解とするか。
あえて舞い落ちし葉に情をのせるのか。

受け手の鋭敏な感度があればこそのやり取りが、庭の情景一つに込められていた時代もあったのでございましょう。

平均的な解答がコンマ数秒で返ってくることにも安心を覚えつつ、
唯一無二のひとひらの枯葉に手放しかけた探し物が隠れているような、

既視感とは何かしらこういったところにもあるのかもしれないと、
狂気的なオリジナルへの希求に駆り立てられるのは秋の夕景のせいでしょうか?

見方を変えればこの木の葉。
熱した水をかけ、香りや味わいを引き出せることを誰がどのようにして見出したのでございましょう。

お嬢様も日ごろ答えなどなき混沌の中にてお過ごしでございましょうか。

山の端に沈む陽の光を遠目に見つつ、
せめてカップの中の夕焼け色のひとしずくに、
お疲れを癒す心づくしを込められればなどと、
幾ばくか湿り気を帯びた想いなども誘われるのは、
リースなどの用意を仰せつかった時候のせいかもしれません。

二度とはかえらぬ人生の一瞬一瞬。
のびる夕雲がたとえ宵闇に消されていこうとも、
お許しいただける限りお供いたしましょう。

お早いお帰りを心よりお待ちしております。