敬愛せしお嬢様へ
ようやく春らしく暖かくなりましたね。
春の果実も数多く届きましたゆえ
パティシエたちがお嬢様にお届けするデザートの開発を張り切っております。

我々も負けじと、よき春の杯をお届けできるよう努めてまいります。


桜はご覧になられましたか?
今年はずいぶんと早く咲き、ひっそりと散っていきました。
花見の宴と言うのは難しい時勢でございますが
季節の雅を楽しまぬのも無粋かと思い
時任も時間が空きましたときにふらりと桜を眺めに出掛けることもございます。

毎年、夜空に白く光るような夜桜が好きで飽きもせず見ておりましたが、お昼の暖かな日差しの中の桜も良きものでございますね。

人気の少ない公園で、のんびりと桜を眺めながら、お茶をいただき休憩するのも良きものでございます。

暖かい日差しと濃いめのお茶は相性が宜しゅうございますね。心がなごみます。

これで柴漬でもあれば極上でございましたが、それは別邸に帰ったらにいたしましょう。



私事ながら。
毎年、お正月とお花見が友人たちと集まれる機会でございましたので。
人が集うのが厳しい昨今、なかなか友の顔を見ることも叶わぬままでございます。

まぁ。どれもこれも強かな友でございますから
さほどの心配も要りますまいが
各々の健勝を桜に祈るぐらいは、許してもらえる範疇でございましょう。


ひとときの休息を楽しみ、職務に戻ることといたします。
良き休憩となりましたし、張り切って勤めるといたしましょう。



あ、そうだ。


帰りに漬け物コーナーで柴漬を買って帰ろう。





Filed under: 時任 — 22:00

気の向くままに

敬愛せしお嬢様へ

春の日差しが見えたかと思えばまた寒く
三寒四温の名の通り、なかなか春の香りは感じながらもコートを手放せない日々が続いております。

こうなるとお暇をいただいた日も、ついつい暖かい自室から出たくなくなってしまいますが

これではならぬと。
よき絵画の題材探しも兼ねて
街の散策に出て参りました。

時勢もありて、なかなかお出掛けの叶わぬ風潮もございますが、ひとり野外をそぞろ歩くのには支障もございますまい。


そんな思いを抱きひとっ走り、降り立ったのは御茶ノ水駅。
聖橋口に砂糖醤油で風味をつけた焼き煎餅やさんが露店を出していましたので、早くも食べ歩きの一歩目を記してしまいました。

様々なお店がテイクアウトを許してくれるところだけは、便利でございますね。


神田川を跨ぐ、風情ある聖橋を渡り、
湯島聖堂の樹々が新緑色になっているのを眺めながら歩を進めます。

冬のお散歩は肌寒いですが、日差しが優しいのは助かりますね。


湯島聖堂沿いに道を辿り、道路を渡って神田明神へ。

お正月は屋台で賑わう参道も、なにもない日は静かなものですね。

少し冷えていましたので、
参道入り口近くの馴染みの茶屋で、名物の甘酒を所望して体を暖めます。

もう茶屋内でも頂けるようなのですが、いまは自制してテイクアウトでお願い致しましょう。

甘酒とは不思議な飲み物ですね。
本当に度数の高いアルコールのように、冷えた体がすぐに暖まります。
お屋敷でももっと導入するべきでしょうか。

考えつつ参道を登り、神田明神境内へ
人がいないときの神田明神は、こんなに広いのですね。

まずは参拝を済ませ。
そしてとても近代的な文化交流館へ。

神社境内に、刻々と表示を変えていく大型ディスプレイが幾つも並んでいるのはちょっと不思議な光景でございますが、こちらは「インターネットの守護神」というとても近代的な神格もあられるそうで、ある意味納得でございます。

ここの名物である「神社応援(ジンジャーエール)」を購入しまして、心地よい生姜の風味を喉で感じましてから、境内をお散歩させていただきました。

昔、若者が力比べをした大石や、江戸最古の地神であられるスサノオミコトの江戸神社などがございます。

銭形平次の碑なども高名でございますが。
この碑のそばに小さく「八五郎の碑」があるのはご存じでしょうか?
おそばに寄る機会があったら探してみてくださいませ。


さて。神社裏手の小階段から街に戻り
まさかの、鰻屋さんのテイクアウトに遭遇して
よき香りに心奪われながらも、自制して歩を進めます。
…自制して、鰻串を買い求めるに留めました。

そのまま、神田明神下の街並みを眺めながらぐるりと回り。

清水坂に向かいますと、昔からのカレーの名店がスープカレーをカップで店頭販売しておりまして。
スパイスの香りに心奪われそうになりながら歩みを進め

そのまま、レトロな喫茶店を散見する通りを上って参りますと、この時の止まったような店内でゆっくり過ごしたい誘惑に駆られつつも、テイクアウトをしてくださっていた店舗で暖かなミルクティーを買うに留めました。

…スープカレーとミルクティーは微妙に合いませんね。

チャイにすればよかった。


そのまま暫し脚を進めますと、湯島天神が見えて参ります。
軽く参拝させていただき、良き天候のもと庭園へと足を進めます。

こちらの梅園が本日の主目的でございましたが、
さすがに人手がいささかございましたので、庭園内ではなく、やや外れに陣取りまして、絵画資料用に写真など撮って回らせていただきました。

来年は落ち着いて、梅の花の真下を歩きたいものでございますね。


庭園の来訪者目当てか、こちらには露店もいくつかお見かけしました。
あまりジャンクな食事は良くありませんから、ほどほどに致しましょう。

…牛串と広島風お好み焼きと、土手煮美味しゅうございました。


さて、湯島天神を裏手に抜けて上野方面に向かいましょう。

旧岩崎邸にもお伺いしたいところでしたが、いまは臨時休館中のようで外観のみ拝観いたしまして

そのまま上野恩賜公園にお邪魔いたしました。

不忍池の蓮や水鳥たちを眺めながらぐるりと一周。
穏やかな気候がとても心地よいひとときでございます。

弁天堂や千手観音堂を巡り、公園の茶屋で新芽が芽吹いているのを眺めながら一休みというのが理想でございましたが

やはり茶屋もやや人が多く居られましたため、
使用人の身としては遠慮させていただき、
レトロな売店のお婆様から缶コーヒーを購入し、公園のベンチにて新芽を眺めながら一息つくことに致しました。

…え?ここはお団子も美味しいんですか。そうですか。ひとつ頂きます。
…ほう。みたらしが鉄板だけれども、手作りの餡ころも絶品ですと。では、ふたつ頂きましょう。

コロコロとお婆様に団子のように転がされて、一息どころか間食タイムになりました。
緑茶の香りがよく合います。
あ、緑茶はサービスで頂きました。


ようように日も傾きまして、夕暮れの気配。
このまま御徒町方面に向かいアメ横市を廻ってみるも、神保町に足を伸ばして書物を漁るのも魅力的ですが、その辺りはもう少し世の中が落ち着いてからのお楽しみでございましょうかね。

ガード下でちょっと小腹を満たして帰れないのはなんだか寂しい限りでございますが、

何故だかとってもお腹がいっぱいなので、
気にせず帰ることに致しましょう。
上野駅前の伝統的な商店街が、早めの店じまいを進めているのを横目に、帰途につくことに致しました。
…おや?名店のシチューがレトルトでテイクアウトできるのですか、そうですか……。



お嬢様。
なかなか羽を伸ばすのも難しいご時世ではございますが、
たまには、適度に気を付けながら
気ままに散歩を楽しむのも良いものでございますよ。

ぜひ気晴らしに、気の向くままにお出掛けくださいませ。




Filed under: 時任 — 22:00

春待ちのブランデーショコラータ

敬愛せしお嬢様へ
早くも暦は2月となり、月日の経つ早さに毎度驚いてばかりでございます。
お外の寒さも厳しくなって参りましたゆえ
大旦那様の御指示のもと、2月のマンスリードリンクとして「ホットショコラータ」をご用意致しました。

当家としてもホットショコラータのご用意は始めてで、お味の調整たる大役は緊張致しましたが、
皆も協力を得てどうにか完成に漕ぎ着けることができました。

甘さ控えめのチョコレートを選びまして、コクを出すために濃厚に入れたエスプレッソを合わせ、
ラズベリー・クランベリーなどのフルーツを煮詰めて、隠し味はほのかな甘味のマスカット果汁とアニスでございます。
ホイップクリームを表面に溶かして口当たりを整え、アルコール入りはブランデーを浮かべて香り付けを行いました。

ぜひお召し頂ければ幸いでございます。


甘いものがさほど得意ではない時任でございますが。
チョコレートとは多少の縁がありまして。
遥か過去、少々体調を崩し、体が食べ物を受け付けなくなり、自宅に居ながら食料が採れないセルフ遭難状態に陥りましたとき

ふと、登山家の友人から聞き齧った「いざというときはチョコレートが一番生存率が高い食べ物なんだ。」という言葉を思いだし。

もそもそとチョコレートを探しだして口にしてみたところ。体が受け付けてくれて。そこから一気に体調が好転した経験がございます。


体調もさることながら。
あやうくセルフ遭難して瀕死になり折れかけていた心にその甘さはあまりにも優しく。

「チョコレートの甘さは、幸せを感じたときの心の動きと同じものだ。」

という某パティシエの言葉が実感としてよく理解できたのを覚えております。



もちろんお嬢様は決して遭難などしてはなりませんが。

この一欠片の幸せを、暖かさを。
お嬢様の寛ぎのひとときに添えることができたら。
そんな願いを込めて、レシピを編み上げました。


春の暖かさ、優しさを想う
「春待ちのブランデーショコラータ」
ぜひ、お召し上がりくださいませ。
Filed under: 時任 — 22:00

明日からまた

敬愛せしお嬢様へ

新年明けましておめでとうございます。
どのようなお正月をお過ごしでしたか?
少しでもお心やお体を休めて頂けたなら幸いでございます。

当家使用人たちにも休暇を賜りましてありがとうございます。
使用人一同。
体調を整え、英気を養いまして、明日よりまたお嬢様に全力でお仕えさせて頂く所存でございます。


……お正月ボケや飲み過ぎでグロッキーな使用人など一名たりとも居りませんとも。ええ、居ませんってば。


本年がまた、一段とお嬢様にとって善き年でありますように。
微力ながらその一助となれますよう、勤めさせていただきます。

本年もよろしくお願い申し上げます。
Filed under: 時任 — 22:00

ホット オレンジジャスミン ハイボール

敬愛せしお嬢様へ。

季節はいつも駆け足でございます。
ちょっと肌寒くなってきたと秋用にジャケットを購入してみれば、瞬く間に世間は凍りつくような冬になり、コートが手放せない季節になってしまいました。

この秋用ジャケットは来年までしまっておきましょう。
と申しますか、来年も思い出してこのジャケットを引っ張り出した頃には冬になっていそうな気が致します。


美しい紅葉ももう散ってしまうのでしょうか。
ようやく銀杏が色付き始めた頃に、暇を寄り集めてスケッチに出掛けて描き始めた紅葉の絵もまだ描き終わっていないのですが。

なにかと忙しい季節の流れに毎年驚きながらも
お嬢様が暖かくお過ごしいただけているか心配になる

そんな季節でございます。


なので、暖かくお過ごしいただけますよう。
ちょっとしたホットドリンクのオリジナルレシピをお届け致します。


ご用意いただくのはジャスミンティー。
そしてオレンジでございます。
400mlほどお作りになるなら一個で充分でございます。
甘味があると風味が生きやすいので、お好みでお砂糖もご用意ください。

まず、お鍋でジャスミンティーを作るお湯を沸かします。
余分なお湯がでないよう、少なめに沸かすのがコツでございます。

お湯が沸きましたら火を止め、ジャスミンティーの茶葉を投入いたしましょう。
オレンジと別途引き上げられるよう、ストレーナーかネットなど掛けるのがお勧めでございます。

そして、櫛切りにしたオレンジも投入致します。
櫛切りにしたオレンジは、皮をナイフで剥き、皮内側の白い部分を極力削ぎ落としてから、皮も湯に投入いたしましょう。
実の部分はごく軽く潰してから投入するのが一番宜しゅうございます。

そして蒸らすこと暫し。
お火傷しないように気をつけながら、耐熱のサーバーやポットに移して、お気に入りのカップと共に寛ぎの間へと移動しましょう。
茶葉はお好みの時間で引き上げても良うございますし、あえて変わって行く風味を楽しんでも良うございます。

そのまま飲んで爽やかなオレンジジャスミンティーを楽しんでも良し。
シロップを入れてみてもまた美味でございます。

ナイトキャップのお酒として楽しむなら、ウィスキーやコアントローをお好みで垂らしてくださいませ。
スプーンなどでオレンジを潰しながら飲んでいただいても、なかなか美味しゅうございます。

冬の夜にお体を暖めるホットドリンク。
ご別宅のティータイムにぜひお試しください。


あ。


ミカンを使っても美味しいです。
その場合は皮は入れないでくださいませ。
Filed under: 時任 — 22:00

小さなクリスマスローズ

敬愛せしお嬢様へ

早くも冬の気配が少しずつ増している日々、いかがお過ごしであられましょう。
側仕えに命じ、暖かなお召し物を早めに揃えさせるのがよろしゅうございます。
お体冷やしませぬよう、ゆめゆめお気をつけくださいませ。


さて。


前回の日誌でも触れさせていただきましたが
時任は古着や古書店、ユーズトショップなどを巡るのが趣味のひとつでございます。
ちょっとした掘り出し物を発見する宝さがしのような楽しみもございますし、時折見かける意味不明のアイテムを検分するのも楽しゅうございます。

先日は高名なるカエルの人形「ケロヨン」様の等身大サイズが格安で販売されており、購入するか否か、珍しく半刻ほど悩みました。

汚れ具合や錆び具合からして、昭和も浅き頃の銘のあるカエルとお見受けしたのですが。

お屋敷のどこにも置き所がないという事実に気がつき、なくなく諦めた次第でございます。

…ブルームーンが蘇った曉には改めて購入し、入り口に飾るといたしましょう。


さて、先日もお休みをいただき、のんびりとお散歩てがらお店回りをして参りました。
時勢もございますので平日の午前中~お昼過ぎの余人が居ない時を狙って出掛けております。

時勢と申しませば、かの病禍にて訪れた自粛生活は色々と波及しているようで、
古着屋さんには店員さんが置き場に困るほどの品が溢れており、いまが買い時のようでございますが
古書店様は本が売れ過ぎて在庫に困っておられました。経済の縮図はこんなところでも散見できるものでございますね。


この日の私のお目当ては…ティーカップ。
ユーズドにも、いえ、ユーズドだからこそ、もはや手に入ることはないと諦めていたカップも案外見つかったりするものでございます。

残念ながら、この日はそんな掘り出し物には恵まれませんでしたが、エインズレイのコテージガーデンにて見たことのないカラーバリエーションを見かけて30秒ほど悩みました。

強いて言うなら茶色と言うべきですが
色が深く渋く、茶道の茶器にでもありそうな色。

「このコテージガーデン、公式には何色なのですか?」
「…何色なんでしょうね?」

店員さんに疑問形で返されました。
凄く渋くて気になりますが、見送ることにしましょう。

渋いと言えば、ノリタケ「岩手山の呼子鳥」も見かけました。
和の落ち着いたデザインで、リリスやいいあんばいなどお飲み頂くにも良さそうなカップでございましたが、15秒考えた結果、やはり渋すぎるので見送りでございます。

今回、特に留意して探しておりましたのはロイヤルアルバート。
フラワーオブマンスを揃えておきたく、探し回っておりました。

探しておりましたら

ありました。

美しいクリスマスローズの絵柄。

ケースから出していただき、歓喜に震える手で傷などないか検分しておりましたが。


…ん?
……なんか、小さいですね。


コーヒー用でした。

他のものと並べると一目瞭然なのですが、確実にわんさいず小さいのですね。

諦めず、いつの日にかお嬢様がたにもお喜びいただけるようなカップを見つけてきたいと思います。
Filed under: 時任 — 22:00

何でこれを買ったんだろう

敬愛せしお嬢様へ。

ようやく秋の気配が見えて参りました。
例年でございますとまた、駆け足で秋が過ぎ去り、瞬く間に冬の寒さに閉ざされそうな気が致しますが。

なんにせよ気温は徐々に下がってくるかと思われます。
どうかお体の調子を崩されませんよう、お召し物は一枚余分にお持ちくださいませ。


お召し物と言えば。

お嬢様も社会勉強に出られて、お買い物で悩まれることもございますでしょうか。
逆に、時にはつい勢いで購入してしまったと言う、いわゆる「衝動買い」というものもご経験済みかもしれませんね。

私事で恐縮ながら、時任は買い物を悩みません。
買うなら買う、買わないなら買わないでだいたい10秒ぐらいで決定します。

時間が掛からないのは良いことですが、
物事は反面があるもので、充分な検証を重ねず購入した結果「何でこれを買ったんだろう」とあとで自身で首を傾げる「衝動買い」も少なからずございます。

これは多方面にわたりますが、もっとも多き分野のひとつは、意外に感じられるかもしれませんが「服」でございます。

趣味のひとつに「古着屋巡り」がございまして。
ついつい変わった服、気になった服を見つけると迷わず買ってしまう癖がございます。

結果として

時任のクローゼットには「これをいつ着るのだ?」と頭を悩ませる謎の服が何着もある次第でございます。

ですが、そんな行く先のない服たちも。
当家ハロウィンにおいてはたまに役立ちます。

昨年の衣装も本年の衣装も実は、用途に困っていた衝動買いの服を引っ張り出してきたものでございます。


あと何着あるんだろう。


……テーマにもよりますが、あと数年はハロウィン衣装には困らなそうでございます。

Filed under: 時任 — 22:00

共に杯を掲げる日を待ちながら

夏はいつまで続くのかと、太陽を恨みがましく見上げるのと同じように。

この病禍はいつまで続くのだろうかと、

友人たちや仲間たちが拓いた小さな城のようなバーや、敬意を以て通い、多くのインスピレーションを得てきた素晴らしいバーが次々と門を閉ざしてゆくのを、まるで訃報を聞くような思いで受け止めつつ、思いを巡らせております。


もちろん、世の病禍の広がりを防ぎ、いつか終息を迎えるために、不必要な会食等は避けるべきでございます。
一方で、経済を動かし自粛期間に耐え抜いた庶民たちに救いの手を差し伸べていただく必要もあり。

全くもって今の世はアンビバレンツの渦中にあるようでございます。


私ごとき一使用人にできますことは
一人の民として出来うる限り感染の危機を避けながらも、一人の民として出来る範囲で、危機を避けた上で経済を回すことであり、

具体的には他にお客様がおられないバーで、主の愚痴を聞きながら、やや高いお酒を美味しく頂くぐらいでございます。


つまり。

今宵の深酒は社会のため。
決して私心はございません。

たとえ迂闊にも、クリームチーズとトラピスト系黒ビールの美しすぎるマリアージュに心奪われて、お代わりが止まらなくなってしまっていても。

ええ。あくまで社会への奉仕に過ぎませんとも。
あ、なのでお代わりお願いします。あ、クリームチーズとクラッカーもね。









小さかろうが大きかろうが、
挑んだ夢に貴賤はございません。

願わくば僅かでも
彼らの救いが多く在りますように。
Filed under: 時任 — 22:00

夏に抗う小さな足掻き

敬愛せしお嬢様へ。
暦も8月に入り、この駄文がお目に触れる頃には
大概に梅雨も明けていることでしょうか。

そうなると青空と輝く太陽。
漸く「夏」と呼ぶにふさわしい気候がやって参ります。

しかしこの「夏」の気候が私的に大層苦手でございます。

まず日光。
生来もともと日光は得意な方ではありません。
眩しいのが嫌いで、長時間日光に当たると気分が悪くなり、日に当たるだけで肌にチリチリと痛みを感じ、日射病などにも弱く。
幼き頃から地下で生きていくよう定められていたかの如くでございます。

なにより、日焼けが厄介です。
ビックリするぐらい日焼けします。
うっかりすると人種が変わります。
しかも、ほんの僅かな日光で焼けてしまいます。
徹底的に日光を避け、日焼け止めを用い、日光下では常に日除けをしていても、毎年一般の子ぐらい焼けてしまいますので、努力を怠ったらどうなるか知れたものでございます。


そして暑さ。
いえ、暑さには強い方でございます。
ですが。
汗が厄介でございます。
日焼け止めとセットになると、私の眼球を執拗に攻撃する凶器へと変貌いたします。


これらに抗うべく。
夏季はとにかく可能な限り地下から動かぬつもりでございますが。
生活上、そうもいかぬことも多うございます。

そこで。毎年奇策を練っては夏に抗っております。

ペットボトルを凍らせて所持しておく。
これは社会において発見された非常によき方法でございます。
これを転用すべく考えまして、
サイズを考慮いたし小さなポケットサイズのパックドリンクをいくつも凍らせて、ポケットに忍ばせておきました。
なかなか快適でございます。

心臓部に当たるように、胸にポケットのある肌着を使用したり、首後ろや太股など冷却効果の高いところに当てておけないか苦慮してみましたが、
これは明らかにシルエットがおかしくなるので断念いたしました。

代わりに今注目しておりますのが、
冷却力・保冷力が非常に高いタオルというものを入手いたしまして、これの活用を考えております。

冷やしたタオルというものは、暑い日に心地よいものでございますが、すぐぬるくなってしまいます。
しかしこのタオルは、お手にとって振り回していただくなど風に当てますと、協力な冷却力・保冷力により冷蔵したように冷たくなるのです。

タオルをどこで振り回すかが難点でございますが、私事で出掛ける際などは重宝しております。

しかしお屋敷の勤めに応用するには困ります。
唐突にタオルを振り回し始めたら大惨事でございます。
タオルは衣服の下に仕込むのは容易なれど、出し入れを頻繁にするのも難しゅうございます。

そこでさらに一計を案じ。
タオルにハッカオイルを染み込ませて、衣服の下に仕込んでみました。


死にかけました。


お嬢様、暑い日にハッカオイルで涼をとるなんてよく聞きますが、あれは危険でございます。
「寒いような感覚を強烈に与えている」だけでございますので、効く人には効きますが駄目な方には「暑いのに冷たい」というダブルアウトな感覚に襲われることになります。
真夏と真冬の駄目なところだけ総取りでございます。

あと、ハッカオイルの濃度にはくれぐれもご注意くださいませ。


いろいろと奇策を練ってみたものの、
涼しい地下から動かないのが一番のようでございます。
お嬢様がたも、灼熱の地上で我慢なさらず、
一刻も早くサロンにて涼しいティータイムをお楽しみくださいませ。









あ。


シェフにご協力いただき、超低温冷凍庫でスピリッツを凍らせて所持する奇策はかなりひんやり致しました。









執事服が凍りましたけどね。
Filed under: 時任 — 22:00

人の暮らしというものは

敬愛せしお嬢様へ

なかなか来ないくせに、一度来ると今度は居座って帰らない。
梅雨というのは、まるで厄介なお客様のようでございます。

世を脅かす流行り病にも、もちろん重々にお気をつけ頂きとうございますが、湿度や温度差に体調を崩しやすい季節でございますゆえ日常に於きましてもどうかご自愛くださいませ。

さて。
ご自愛ご自愛と私どもよく申し上げますが、
具体的に何をすれば良いのかと仰せかもしれません。

お体を冷やさない、手洗いうがい、バランス良きお食事。もちろん色々とございます。
そして何より、しっかり睡眠をとっていただくこと。これが肝要かと存じます。


降って湧いたような、流行り病による自粛期間。
いつかまたお仕えを再開する日に向けてと、ひたすらにトレーニングと学習に時間を向けておりましたが。
それに加え。我ながら呆れるぐらい寝ておりました。

朝は起きるのです。起こされます。起きて朝食を採り、運動して入浴しないと落ち着きません。
そして力尽きるまで体を鍛え、学問を学び、家事を行い。
短時間で力を使い果たしたあたりで、お布団に誘われ「いいから寝ろ」と寝かしつけられ、パタリと眠ります。

お昼ぐらいに起こされて、昼食を作り、軽く水を浴び、運動して勉強して。そしてまた寝かしつけられます。

空が茜色になる頃。また起こされて。
食材を確認し、必要なら散歩てがら買い物に行き。
夕食はちょっと時間をかけて作り。
食事・読書・運動・入浴と終えるとまた寝かしつけられます。


……一日の2/3ぐらい寝ていた気が致します。
人としてどうなんでしょうか。


さて
「起こされる」「寝かしつけられる」と
第三者によって生活を管理されているかのような記述が多々見られますが、
これは何者かというと、うちの猫たちです。

起こされます。これは今でも朝は起こしに来ます。
下手な目覚ましより正確です。

そして私が疲れていると、布団に行けと訴えます。
ぺしぺし叩かれます。引っ張られます。押されます。あげくに噛まれます。
お布団の上に横になると、頭を抑え込まれて寝られます。
今もやられます。
大変暑いですが、お構いなしのようです。


思えば、あの季節。
人ではなく猫のペースで生活していたのかもしれません。
起きたら、配分など考えず全力で体力を使いきり、
そして寝る。この繰り返し。


お仕えすることが叶わぬことや、何一つ進められないことに対するストレスは多々ございましたが
健康面に関しては、呆れるレベルにまで頑健になりました。

お嬢様。

人の暮らしと猫の暮らし。双方を知る私が申し上げます。

睡眠は大切です。
心身になにがしの故障を感じたときは、何より良く寝るに限ります。
世間には人としての暮らしが戻って参りましたが
もし満足な睡眠を脅かされる生活があるならば、それは我慢なさらず改善すべきです。

高潔な意思や使命のために我慢なさることも多うございましょうが。

それはゆっくりと確実に、ご自身という財産を削っておられることもお考えください。
そして、ご自身という財産が失われたとき、誰が悲しむのかも。


……笑いをとるつもりが、なぜかシリアスなお話になりました。


ところで。
なにかと良く寝て。
そして人をなにかと寝させようとする猫たちですが。

エジプトや北欧などの神話において、猫は「夜の守護者」「眠りの守護者」と位置付けられております。

人の眠りを守り、眠りのなかで人を癒し
悪い夢を近づけず、眠っている間に悪しき者を追い払うのだそうです。


今日も頭に乗ってきて、ゴロゴロ言いながら人を寝させようとする猫と。
足の横に張り付いて、くるんと丸くなって、物言いたげにじっと見てくる猫に。

そうか。今も守ってくれているのかと、感謝を感じなくもありません。


暑いけど。
Filed under: 時任 — 22:00