仰げば尊し

仰げば尊し わが師の恩
教えの庭にも はや幾年

私どもの年代では、卒業式といえばこの『仰げば尊し』でした。
最近は『旅立ちの日に』あたりが定番なのでしょうか。
いずれにせよ、今までのことを振り返り、しんみりとしてしまう歌ではあります。

皆様、私こと吉川はこの度、大旦那様のお許しを得て、文化施設のフィルム在庫を更に充実させるべく、遠方へ旅立つことと相成りました。
配信サービス全盛の昨今、映像のデータ化が進んでおりますが、それでも文化的価値、レガシーとしてフィルムは残していかなければなりません。

干支が一回りするほどの期間をお屋敷で過ごさせていただき、多くの使用人と出会い、また多くのお嬢様、奥様、お坊ちゃま、旦那様と出会い、楽しい日々を送らせていただきました。
右も左も分からなかった私をここまで導いてくださった皆様には、何と申し上げてよいのやら、感謝の念に堪えません。
ありがとうございました。
私が旅立ちましても、お屋敷は存続いたします。
是非ともご帰宅いただき、今までの、そしてこれからの使用人たちを見守ってください。
偶には、吉川という使用人が居たことを思い出していただけましたら幸いです。

思えば いと疾し この年月
今こそ別れめ いざさらば