Icarus

両手両足ぶんでこと足りるくらいの朝を迎えると、もう新しい年なのですね。

どれほどドラマティックな初夢を見られるか期待している能見でございます。

お嬢様、お元気でいらっしゃいますでしょうか。

 

本年もあと残すところ僅か、ポインセチアが美しく映える季節でございます。

シナモンとジンジャーの紅茶の香りが執務室をあたたかく満たしていきます。

本邸での執務を終えて、一日を振り返りながら日記をしたためておりますと、

お屋敷の厨房から何やらシェイカーと氷がぶつかる音が鳴り響いております。

 

毎年の恒例行事となりました能見&八幡のオリジナルカクテル「雨の御堂筋」。

私の生まれ故郷でございます浪花の古き良き風情を感じていただけますように、

西の地に存在しておりますソウルドリンク「ひやしあめ」を使用いたしました。

八幡とともに思案いたしました「雨の御堂筋」を例年通りにご用意いたします。

 

昨年までは私がカクテルレシピの開発を一貫して執り進めておったのですが、

本年は打って変わりまして、八幡がいちからオリジナルで思案しております。

英国の陶器ブランド「ウェッジウッド」が東洋の世界を表現するかのごとく、

私には見えなかった浪花の魅力をグラスの中で表現してくれることでしょう。

 

これぞ、今まで積み上げてまいりました共同制作の楽しさ、でございますね。

どのようなご感想を賜ることができるのか、今から心躍る思いでございます。

 

少し早いご挨拶となりますが、お嬢様。本年は誠にありがとうございました。

現状維持は衰退という言葉を胸に様々な挑戦をしてきたと自負しております。

ときには手を伸ばしすぎて、蝋の翼が溶けそうになったこともございました。

それでも幾度も飛び立つことができたのは、紛れもなくお嬢様のおかげです。

 

この感謝の気持ちを胸に、来年もあなたのお傍でお仕えさせていただきます。

次は、私がお嬢様の背中をそっと支えることができますように。

 

よいお年をお迎えくださいませ。

 

能見