日誌

お嬢様、奥様、お坊ちゃま、旦那様、ご機嫌麗しゅうございます。
久保でございます。

朝夕の風がひんやりしてまいりましたね。

陽ざしの色も、どこか熟考を重ねたあとのようにやわらかく、木々もため息をつくように色づきはじめております。

秋は、まるで一年が少し立ち止まって、自分の影を見つめ直しているかのような、もう少しで今年が終わるなぁ、ついつい来年について考えてしまうそんな季節でございます。

そんな季節にあわせて、今年もまたブラジルの伝統菓子「ぷぢんケーキ」をお届けいたします。
練乳をたっぷりと使った濃厚なプリンが静かに上層を楽しく

その下では、ほろ苦いココアスポンジが落ち着いた余韻を支えております。

ドイツの哲学者ヘーゲルは「対立するものは、より高い次元で統合される」と説きましたが、
このお菓子もまた、甘さと苦さという異なる性質が互いを打ち消すことなく、
むしろ引き立てあいながら一つの世界を形づくっております。
昨年と今年という異なる時間が、同じ味わいを介してつながるのです。

変化と持続がひとつの皿に並んでいるのかもしれませんね。

ちなみに、今年も表記はあえて「ぷぢん」とひらがなにさせていただきました。

小さくてまるい文字の並びが、このお菓子のころんとした可愛さに似ている気がしたからでございます。
難解な哲学の話をしておきながら、名前だけは可愛く、そんな小さな矛盾もまた、この菓子にぴったりかもしれません。

もっとも、考案者としては「甘さと苦さを調和させる」という高尚な理念を掲げつつ、
試作中は最終的に練乳の量とにらめっこをするという、たいへん哲学的とは言いがたい戦いを繰り広げておりましたが…

考えていたら、私という存在と、この静かなティーサロンの秩序との間にも、なんだか矛盾が生まれている気がしてまいりました…。

きっと気のせいでございましょう!

秋でございますから、やはり考え事が増えますね…

そんな秋の始まりに、どうぞ今年もこの楽しい調和の甘美をごゆっくりお楽しみくださいませ。