ハロウィンにふさわしいお茶とは

敬愛せしお嬢様へ
ようように秋らしい涼しさが感じられる日も増えてまいりましたね。
このちょうど良い季節がいつまで続いてくれるのかと
月を見上げながらもの思う夜でございます。

当家の装いもハロウィンへと移り変わってまいりました。
そう言いますれば、ハロウィンの祭典もいつから日本に根付いたのでございましょうか
時任が幼い頃には全く見かけない文化でございましたゆえ、
いつのまにか日本に根付いたのは比較的近代のことかと思うのですが。

バレンタインデーが日本に浸透したのは某お菓子屋さんの陰謀だったという説がございますが、ハロウィン文化ももしかして似たような経緯で日本に訪れたのかもしれませんね。

そんなハロウィンの起源には諸説ございますが
東西欧州や米国の幾つかの別なお祭りが融合してしまい、
さらに大衆に愛されるにつれて進化していったという説が有力でございます。

その変化の過程で、現在はカボチャであるハロウィンのシンボルも、ひと昔はウリだったとかナスだったとか、各地の伝承を見ると面白いものでございます。

さて、では最古の記述はどれなのか調べておりましたら。

見つけましたハロウィン起源とされる最も古い記録は、
アイルランドの森の奥、「魔女」と称されていた当時の呪術師・医師のような役割の女性たちが、病魔や不運を追い払うために「ういきょう」という植物を持って踊るお祭りが起源という説がございました。

森の奥でうぃきょうを持って踊る魔女の群れ。

とてもシュールでございます。
ブレアウィッチプロジェクトの真のラストシーンとかに出来そうです。

 

さて、そんな「うぃきょう」とは何者かですが
セリの一種であり、香辛料や薬草として現在でもよく使われております。
英名は「フェンネル」。

おや?と思われたお嬢様はよく勉強しておられますね。
当家のハーブティー「オードリー」に含まれているハーブでございます。

つまり、ハロウィンに飲むにふさわしいハーブティーは、実はオードリーなのかもしれませんね。

ぜひご検討くださいませ。

忠犬の逸話

敬愛せしお嬢様へ
暦の上では夏を過ぎ、あとは秋の気候を待つばかりでございますが、いかがお過ごしでしょうか。

どうか今少し暑さをご辛抱頂き、水分のこまめな摂取など怠りなくお過ごしくださいませ。

さて、水分の摂取と申しますれば
時任はお役目が早めに終わった日などは、庶民の街を散策するのを好んでおりますが
散策し少し喉が渇きますと、直感に任せてここは!というお店にお邪魔する習慣がございます。

お邪魔する先は、お屋敷の参考にしようと瀟洒なバーなどが多くはありますが、直感の導くままにいかにも地元に支えられたような古風なお店にもお邪魔することは多うございます。

そんな一つに、とある忠犬の像がありし横丁の店舗がございます。
昔ながらの横丁でございまして、風情ある屋台風のお店や個性あるお店が軒を連ねております。

そんな一軒にて。
落ち着いた雰囲気の小さなカウンターに、積み重なった歴史を感じさせる良い店構えのこのお店は、当代で4代目となる長らく守られ続けている場所なのだそうです。

そんな店長さんや常連さんの個性やお話も愉快かつ含蓄深く。
今宵はそんな中の一つ「ハチ公のお話」を寝物語にお伝えしたく存じます。

旅立ってしまった主人をずっと待ち続けていた、高名なる忠犬ハチ公。
なんとこのお店の初代は、ハチ公本人というか本犬と親しかったそうで、そんな思い出話が残されておりました。

主人が居なくなってから、ハチ公がずっと主人を待ち続けていたのは事実だそうです。
とはいえ、銅像のようにじっと待ち続けていたわけではなく、当時は都会感の欠片もない下町商店街であった渋谷をウロウロと、一日中パトロールして近隣の方々に愛されていたようでございます。

横丁近辺の飲み屋街でございますと、夜ともなるとおでんや焼き鳥の屋台が立ち並び。
酔客たちと共に、その匂いに誘われたハチ公は、夜になるとこの小路に腰を落ち着けて、夜を楽しむ酔客たちをじっと眺めていたそうでございます。

そうすると酔客たちがハチ公に焼き鳥やらおでんやらをなげあたえるものですから、ハチ公は特に焼き鳥が大好物になっていったようで、晩年、ハチ公が息を引き取った後に体内から何本もの焼き鳥の串が発見されたなんて話があるぐらいでございます。

もっとも店主さんや常連客の皆さんは、いつも通りに寝転がって焼き鳥を貰ってる野良犬が、主人の帰りを待ち続けてる忠犬だなんて知りもしなかったものですから、
ハチ公の忠義が当時の新聞に載り、人々にもてはやされ、ついには渋谷駅前に銅像が立ってしまった日には随分と驚いたそうでございます。

「あいつぁ、ただの焼き鳥好きの人懐っこい犬ですよ。」
そう言って笑っていたという店長さんの言葉が、生きた歴史を感じさせて大変印象深くございました。

帰らぬ主人を待ち続けていたハチ公も。
悲しい日々ではなく、最後の時まで町でそれなりに楽しく暮らしながら待っていたというならば

飼い主氏も少しは胸を撫で下ろして、ハチ公を迎えることが出来たのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

なお、うちの猫は、帰った時に爆睡していると
起きた時に慌てて「ずっと起きて待ってましたよ」という顔をして誤魔化しにきます。

再挑戦・究極のマティーニ

敬愛せしお嬢様へ

当家でカクテルを学ばんとする若人たちもありがたきことに代々増えまして、
彼らが新しい発想の良き品々をお嬢様も元にお届けすることも多く、
時任は彼らの背を見守りながら、たまに好きにカクテルを作らせて頂く日々でございます。

余裕が出て参りますと、カクテルという文化への探究心もまた溢れるもので
時折、お外のお屋敷に勉強に伺いましたり、別邸でボトルを並べて研究したりと、そんな機会も増えてまいりました。

その一端として、幾度か挑戦したことがあり、また挑んでみたいと思っておりました「究極のマティーニ」というものを試してみました。

「究極のマティーニ」と呼ぶべき条件が如何なるものかは、バーテンダー個々に異なるとは思います。
極限までドライに仕上げた、チャーチル卿のマティーニを究極と呼ぶ者もおりますし、
製法を問わず、そのステア技術のみで究極と言われる味を目指すものも少なくありません。

その中から今回は、戦後昭和の日本のバーで生まれた「究極のマティーニ」を作ってみることに致しました。

この製法の考案者は、当時のバーテンダー大泉洋さん。
かの名俳優さんと同名ですが残念ながら別人でございます。

まず冷凍庫でジンをボトルごとよく冷やします。
ジンは敢えて最も古典的なオランダのジンを使用いたしました。
合わせるベルモットワインは冷蔵庫でよく冷やし、どちらも数日しっかり冷やしました上で、
ミキシンググラスに注いで氷を入れずに静かに混ぜ合わせます。
(大泉氏は大量生産のため、ボトルに材料を詰めて振っていたそうですが)

混ぜ合わせた液体を再び冷凍庫に入れ、また2日ほど冷やします。
そして2日後に取り出した液体をグラスに注ぎ、頂くという製法です。
単純ですが何とも気の長いレシピでございます。

試飲してみたところ、やはりよく冷やしたジンのとろみと甘味に、ジュニパーベリーの爽快さと、ベルモットの瀟洒な香りが濃厚に混じり合って、実に良いお味でございました。

何かの折に、お嬢様の元へもお届けできたらと思います。
非常にアルコールが強いので、おやすみ前にお飲み頂くのがお勧めではございますが。

 

数日の仕込みが肝でございますが、
お屋敷で仕込んだら皆の試飲と称したつまみ飲みでほぼ無くなりそうでございます。

電気執事の夢を見る

敬愛せしお嬢様へ
雨の日にしても晴れの日にしても、傘が手放せぬ季節でございます。
この傘というものは、常に片手が塞がれてしまい、どうにも荷物となってしまうのが難でございますね。

文明が発達し、あらゆるものが小型化・携帯化している昨今、傘もどうにかハンズフリーに出来ないものかと思うところでございます。
そう申しますれば遡ること20年ほど前、とある米国の作家が「20年後の日本社会」を想像した未来絵図を描き、その構想の中に今日のスマートフォンそのものが描かれていた事がまるで予言のようだと話題になったことがございましたが、その構想の中で「2020年代には日本の傘は頭に被る形式に戻っているだろう」と予言されていたのが少し面白うございました。

思えば江戸時代の傘や日傘は、頭に被るタイプの傘や頭巾と豊富かつコンパクトで、随分と合理的でございますね。
折り畳めるタイプでも開発すれば、意外と売れるのではないでしょうか。

逆に近代で開発されつつある未来世代の傘は、ドローンタイプだそうでございます。
20年も先には身の回りの品々があれもこれもドローンとAIに組み込まれてゆく予想が有力でございまして、傘も片手を塞ぐ事なく頭上に浮遊し、持ち主を追尾して移動し、そもそも持ち歩かずとも呼び出せば自宅から飛んでくるという便利極まりない構想が成されております。

まぁ、そこに至るまでに充電の問題や安全性の問題、万人が使用しても安定したネットワークの確保など課題は多いようでございますが。

傘のみならず、車両や掃除機、洗濯機、調理器具、果ては洋服のクローゼットや靴箱に至るまで、AI・ドローン化の構想はあるそうでございます。
ご帰宅なさったら洗濯機ドローンが服を受け取って洗濯、クローゼットドローンがそれを格納し、ドレスルームドローンと連動して、当日のご予定に合わせたお召し物をコーディネートして朝ご用意しておく。そんな未来が垣間見えますね。

さて

使用人失業の危機でございます。

思えば、痒い所に手が届くかのように、主人の不便や面倒を解決するのが使用人の役割。
その意味で言えばドローンという存在は使用人の究極形とも言えます。
そのドローンの発展普及は喜ばしいことといえど、使用人にとっては存在価値喪失の危機かもしれません。

されど

今日においても既に「機械で出来ることを敢えて人間にやらせる」事に高級感を見出している事柄は多くございます。
そうでなくても元より、中世のお屋敷においては「どう見ても必要のない仕事」にまで使用人を雇い配置する事で、名家の裕福さと権威を示していた傾向がございました。

給仕ドローンやAIコンシェルジュが当たり前の時代がやってきたとしても
あえて其処に人を使うことが高級の条件となっていく。そんな未来が来る気が致します。

お嬢様も
AIドローンのアフタヌーンスタンドに乗ったアンナマリアが飛んでくるよりは
忠実なフットマンがアンナマリアをお持ちし給仕させて頂いた方が、お寛ぎ頂けるでしょう?

うむ。どうやらお屋敷の未来は20年後も安泰のようでございます。
しっかりと今も未来もお支えさせて頂き、何十年でも使用人たちがお屋敷を支えさせて頂きますゆえご安心くださいませ。

 

 

 

だけど

 

 

 

空飛ぶアンナマリア

ちょっと見てみたいですね。

 

夏のプリザーブアレンジ

敬愛せしお嬢様へ
晴れの日は日差しが厳しく、さりとて雨の日は足元が怪しく
何かとお出掛け叶わぬ季節になってまいりました。

適度に運動していただくのは大前提ではございますが、
屋内で過ごさざるを得ないことが多くなれば
それをどう楽しむかと言うことが大切でございます。

読書や映画鑑賞などこの機に進められるのもよろしいかと存じます。
ご覧になられる映画や書籍のおすすめは、それを得意とする使用人たちに譲らせて頂きまして
私は私の得意分野たる、優雅なお時間にお添えするお食事について
ささやかなお勧めをお伝えしたいと存じます。

この季節のお飲み物は、いろいろお薦めはあれど
緑茶が良い時期でございますね。
あえて濃いめに入れましたものを、氷をたっぷり入れたグラスに注いで
爽やかな香りもしっかり立ったアイス緑茶など、お喉もご気分もすっきりと冴えまして宜しゅうございます。

そうなると合わせますおやつも和のものをお持ちしとうございますね。
羊羹、葛切り、水饅頭や練切り
夏らしい見た目も涼やかなお品がこの季節は特に揃っております。

お友達がいらっしゃった時や、さらにご気分を変えたい時などに
私もよく試すのですが
和菓子に洋のプリザーブを添えてみるのも一興でございます。

羊羹に生クリーム、水饅頭にクロテッド、葛切りに柑橘ジャムやチョコレート。
意外な取り合わせが思いのほか合いまして、なかなか面白うございます。

夏の日のひととき
ぜひ創意工夫を持って優雅にお過ごしくださいませ。

 

 

 

あ。私はよく冷やしたビールを頂きます。

きゅうり

敬愛せしお嬢様へ

気候が不安定ながら、日々真夏の欠片を感じる、そんな春と夏の狭間でございますが
いかがお過ごしでございますか?

時任は時勢も変わり、様子を見ながらも休日のお散歩も叶うようになり
時折、カップ探しや良いバー探しなどにも出掛けさせて頂いております。

バー探しではありませんが、先日無性にスコーンを頂きたくなり、
とあるシンプルながら評判の良い喫茶店へとお邪魔して参りました。

華美さはないものの落ち着いた趣味の良い内装の中、
念願のスコーンとクリームに季節のジャムを頂き、ファインダージリンと共にのんびりと過ごしておりましたが、
朝食を抜いておりましたものでいささかスコーンだけでは足りず、
朝食兼昼食を頂こうかとお品書きと睨めっこしておりましたところ
「キューカンバーサンド」の一文を発見いたしました。

キューカンバーサンド‥
当家のアンナマリアにもよく含まれておりますが、英国では非常にポピュラーな軽食でございます。
ただ、これ単体でメニューを成している例は珍しく、いかにも古式ゆかしい英国風喫茶にふさわしいと感じ入りまして、こちらをオーダーさせて頂きました。

ティーカップを傾けて待つことしばし
お給仕役にお持ち頂いた「キューカンバーサンド」は思いのほか大皿で
なかなか大きなサイズのサンドイッチが並んでおりました。
なんと8切れ。
そして、オールきゅうり。
ほのかにソースとスパイスだけを効かせていて、とても美味しいのですが
他に余分な素材はなく真面目にオールきゅうり。

そして、サラダ付き。

サラダの意味を考えつつ、ほのかに甘味すら感じる美味しいきゅうりをたっぷりと頂きました。
米国人が英国人を罵るスラングに、「locust(バッタ)」というのが在るそうですが
ちょっと意味がわかった気が致します。
いや、きゅうりの瑞々しさに、ソースとスパイスのバランスも抜群ですごく美味しかったです。
きっと、またオーダーします。

 

ただ
嗚呼、ただひとつ

 

 

付け合わせのサラダまできゅうりなのは何でなん‥‥。

カップハンティング

敬愛せしお嬢様へ
温かくなったり寒さが戻ったりと、春への階段を登っているなぁなどと思っている間に
気がつけば5月になっておりました。
茫洋と時を過ごしていてはまた、気がつけば年が変わっているなんて事態になりかねません。
現代の浦島太郎にならぬよう、日々を有益に過ごしてゆこうと心に誓った4月末日でございました。

そんな浦島でございますが
趣味と申しますか、休日の過ごし方の一つがティーカップ探しであることは以前軽く申し上げたことがあるやもしれません。
ショップはもちろんのこと、ユーズドショップやフリーマーケットなども巡り、
まさかと思うようなカップとの出会いを探し散歩する1日が私めの癒しの時でございます。

今年の頭にフラワーオブマンスのカップを発見し、全ての月を揃えることができたのは我ながら殊勲であったと自賛しております。

それ以前でございますと、ユーズドショップで一目惚れした大倉陶園の「テディベア」
これは残念なことにもう破損してしまったようですが、いつの日にかまた見つけ出したく
執念を燃やして探し回っております。

忘れられぬのは、かなり昔となりますが
某フリーマーケットにおいて3つワンセット数百円の値札をつけられて縦積みにされて売られていたロイヤルアルバートたちのカップでございましょうか
販売なさっていた方は全く他意なく、お家の倉庫で埃をかぶっていたものをまとめて持ってきたと仰せでしたが
思わず良きカップであることを一生懸命説明してしまい、
買い手側が値を吊り上げて、売り手側が「いいからいいから」と値を下げようとする
奇妙な商談が展開された思い出がございます。

さて、そんなカップたちでございますが
世間的にお出掛けやイベントの開催が叶うようになりまして
皆様お出掛けが増えておられる昨今、
今までインドア生活中心を余儀なくされていた頃からの変化に伴い、
ユーズドショップなどに良きカップがまた出回るのでは無いかと、密かに期待している時任でございます。

良きカップをハンティング致しましたら、すぐにご報告いたします。
ぜひご愛用くださいませ。