それを再び

私の「それ」は、木で出来た箱に入っていた
いつでも簡単に取り出せて
当たり前の様に扱っていた

あの頃はただ
そのことの意味も考えず
その大切さに気付く事もなく

いつしか「それ」は取り出せなくなっていた

箱の蓋が閉まっていたのだ
しっかり鍵が掛けられて
堅く閉ざして開かない

そして私は気付く
「それ」は宝物
箱は宝箱だったのだ

心の底を突き動かす宝物
無くて初めて気付く不安

だけど、箱の鍵が見当たらない
内か外
きっと傍にあるはずなのに

今はただ
記憶の影を追うばかり

鍵はきっと傍にある
見えなくても
手探りでも

きっとここに。