釣りおバカ日誌

お嬢さま、お坊ちゃま、ご機嫌いかがでしょうか

金澤でございます。

今私はこの日誌を、とある静かな海の船着場で釣竿の穂先を気にしつつ

魚の当たりを待ちながら書いています。

昨夜の事・・・

日中のお屋敷での勤めを終えた私は、夕食を仲間のフットマンと済ませ

その後のひと時は自室で黒ビールを飲みながら映画鑑賞と洒落込みます。

観た映画は、『釣りバカ日誌』

面白い!楽しい!ほのぼのします!

観終わる頃にはすっかり酔っ払いフットマン化していた私はふと思う

「よし!釣りをしながら日誌を書こう」

またおバカな事を考えつく私・・

『釣りおバカ日誌』です。

明日は休日!久しぶりに釣りをしたい気持ちが沸々と!

ここは実行あるのみです。

では明日に備えて早めに寝よう

ZZZ・・・

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とそんな出来事が昨夜にあって今こうして釣り糸を垂れているわけです。

急に思い立ったので今日はそんなに道具の必要の無い手軽な釣りです。

狙いはシロギス!

コンパクトな釣竿とクーラーBOXを持って南の半島の先まで

電車とバスを乗り継ぎやってきました。

この地を訪れたのは3年ぶり、

懐かしさに浸りながら先ずは釣り座を決め、仕掛けを作り、

エサのジャリメをつけ、「エイッ!」と海に投げ入れます!

リールを巻いて糸ふけを取り、糸をピンとはります。

当たりがきたら竿先がピクピク動くってすんぽうです!

無事釣りをスタートさせたところでおもむろにクーラーBOXを開け

途中で買った缶ビールを取り出し、プシュ!っと

「海にカンパイ!」

うぐうぐ プハ~!! んまい!!

「これだよ!これ!五臓六腑に染み渡るぜ!」

そうしているうちにさっそく竿先がピクピクっと!

「お!きてる!きてる!」

はやる気持ちを抑えながら一定のリズムでリールを巻きます。

「きた!きた!本命のシロギス!」

『海の女王』と称されるシロギスは繊細で可憐な

パールホワイトのとっても美しい魚です!

ビニールバケツに水を汲みその中へ

再度エサをつけ2投目!

そしてビールをうぐうぐ

そしてすぐにピクピク!

「おお!いそがしいな!」ニヤニヤ

本命のシロギス!2尾目ゲット!バケツの中へ

エサをつけ3投目!

そしてビールをうぐうぐ

そしてすぐにピクピク!

「休んでる隙がないよ~」ニヤニヤ

またもや本命のシロギスゲット!バケツの中へ

しばらく、うぐうぐ!ピクピク!ニヤニヤ!が続きます!

今日は絶好調!!!

クーラーBOXを開け缶ビールをもう1本!

この場所は入り江になっていてとても静かです。

ヨットハーバーがありますが観光客も少なく穴場的スポット!

穏やかな時間が流れています。

しばらく当たりが遠のきボーっと考え事・・・

今日はひとりで来たけど今度はお屋敷の誰かを誘って来よう・・

『釣りバカ日誌』だとここに相棒のスーさんがいるんだよなぁ

目上の仲間・・・スーさん的存在・・・

お屋敷だと藤堂執事かな?

スーさんは『鈴木』でスーさんだから、

藤堂さんだと『とーさん』になるか!

とーさんとーさんと呼んでたらきっと親子と思われるにちがいない

嘉島執事だと?・・・

とっても不思議な親子に思われるかも・・・

ほろ酔いになった頭でおバカなことばかり考えていたその時

足元に置いていた釣竿が暴れ出し海に引きずり込まれそうになる!

慌てて竿をつかみグッと力を入れるとかなりの手応えです!

「でかい!これは大物だ!」

竿はいいとしてもこのシロギス狙いのチョイ投げ仕掛けじゃ難しい

無理をすれば直ぐにバレてしまいそうだ!

手応えやこの頭を振る独特の引きから黒鯛だろうと思われ・・・

「獲れるのか!俺はこいつを獲れるのか!」

ドラグを慌てて緩め長い戦いを覚悟する

無理をせず魚が進んだ方向に自らも移動

「ああ!そっちにいっちゃだめだ~ およよ!そっちもいか~ん」

船着場中を右往左往!

周りにいた人達も私の慌てふためき様にこちらを見ている

大物とのやり取りと気づいたようだ

先ほどまでとても静かだったこの場所がちょっと賑やかに!

なんだこの私に浴びせられる視線のプレッシャーは・・

格闘すること7,8分

「上がってきた!おお!やっぱチヌだ!勝った!俺様は勝った!」

と思った瞬間・・・竿をしならせていた手応えが消えた・・・

最後の抵抗をみせたチヌは見事に釣り針から逃れ海に消えていった・・・

絶体絶命のチヌは針をへし曲げ消えていった・・・

・・・・・

ハッと我に返った私は先ず周りを見渡す。

元々居たクーラーBOXの位置からだいぶ離れていた

周りにいた人達はあえてこっちを見ないようにしているようだ

気まずい・・・

苦笑いを浮かべながら元の釣り座へもどり

おもむろにクーラーBOXを開け缶ビールを取り出す

プシュ!、「負けたぜ!お前の勝ちだ」うぐうぐ・・・

不思議と悔しい思いよりも爽やかな気分になっていた!

・・・・・・・

今あった出来事をこうしてノートに書き綴っています。

まあ仕掛けがキス用だったし魚の正体を確認できただけでも・・・

・・・・・・・

書いているうちに、やっぱりくやしい~!!!

動揺している証拠にお嬢様へ分かり易く書いてないし、

専門用語多用してるし、えっと『チヌ』とは黒鯛の事です。

・・・・・・・

釣りを再開してボーっと考える・・・

さっきの黒鯛も最後の最後まで諦めなかったから助かったんだ

何事においてもそうだな、諦めたらそこで終わり・・・

人生の教訓を教えられたような気がしました。

沖に係留してあるヨットを眺めていると、

ピクピク!

「お!キタキタ!」

シロギスゲット!

バケツの中へ・・・

??

いない?

あんなにたくさん釣ったシロギスが減ってる!

3尾しかいない!なんで?どして?

後ろを見ると野良猫がうろうろしています。

「う~む、怪しい」

ちょっと釣り座を離れ遠くから様子を見ます。

「現場を押さえてやる!」

とその時です!

上空からカラスが飛んできてシロギスを奪って行きました!

「ななな!!カラスか!やられた・・・」

黒鯛と格闘している隙にやられたんだな、くやしい~

クーラーBOXに直ぐに入れとけばよかった・・・

釣り座にもどり2尾になったシロギスを眺めていると

さっきの猫が近づいてきました。

「疑ってゴメンな、お詫びにシロギス一匹あげるね」

シロギスを差し出すと嬉しそうに食べ始めました!

「かわいい」

元の静けさを取り戻した海を眺めながら

ある曲を思い出し静かに歌ってみる・・・

来生たかおさんの『浅い夢』

この入り江の静かな海にとっても合っている感じがする・・・

その後、しばらく釣りを続けましたがそろそろタイムリミット

帰らなくては・・・

さてっ!と腰掛けていたクーラーBOXから立ち上がると

なんと直ぐ後ろに3匹の猫がちょこんと座ってこっちを見ています!

さっきの猫が友達を連れて来たようです!

「おまえらそんな目で私をみるんじゃない、見るなって・・・」

「・・・・・」

「負けたよ・・・ほら一匹づつだぞ」

「そしたら2匹しか残らないよ・・・」

2匹持って帰っても仕方ない・・・

キスの天ぷらは次回におあずけ・・・

結局全部の魚を猫にあげて、今日は帰るとします。

平日のこの穏やかな午後に缶ビール片手に釣りをしながら

ノートに何か書いている私は周りからどう見られていたかな?
素敵な詩を書いている詩人か?

素敵なスケッチを描いている画家か?

いやいや、こんな駄文を書いている『あやしいフットマン』でした。

さてゴミを拾って周りを綺麗にしてから帰ります。

お騒がせしました、じゃあまたね!

とっても良い時間を過ごせました。

さて問題はお屋敷を出てくる時、柾木執事に今晩はキスの天ぷらを

ご馳走すると豪語してしまったこと・・・

たくさん釣れたけどカラスと猫にあげてきたと言っても絶対信用して

くれないだろう・・・

柾「釣れなかったんですね、やっぱり釣れなかったんですね」

っていじめられるに違いない・・・

ん~どうするか。。

小網代の船着場にて。。

釣りは良いですよ~

お嬢様、お坊ちゃま、いかがですか!