部屋と後輩と私

ご機嫌麗しゅうございます。
隈川でございます。

…はぁ。
あ、失礼致しました。
溜息なんて。

いえ、秋の雰囲気に当てられたわけではないのです。
少し考え事を。

私がこの屋敷に身を置くようになってから、先月で4年が経ちました。
その間に後輩も沢山増えました。

中でも1年と少し前から給仕を共にしている杉村などは後輩ながら非常にしっかりしていて見ているとこちらが感心してしまいます。

実は考え事というのは、その杉村についてでして。

最近使用人仲間たちと会話をしているとしょっちゅう耳にするのが「この間、杉村さんと食事に行ったときに~」「杉村さんと遊びにいったとき~」「杉村さんが~」「杉村が」「杉村さんの~」「杉村さんと~」…etc

…ちょっと杉村さん。

私、誘われてませんけど!!!!?

わかりやすく申します。
私も!!!
誘って!!!
ください!!!
お願いします!!!
なんでもしますから!!!
好き嫌いもありませんから!!!

はぁ…とりあえずこの切なさを黒崎あたりに聞いてもらうことに致しましょう。どうせ黒崎なんかも誘われずに寂しく部屋でひとりご飯を食べているでしょうからね。

…おや。黒崎の部屋から笑い声が…。

黒崎『ハハハ、本当杉村は面白いな』
杉村『ハハハ、黒崎さんこそ!いやぁ、お鍋美味しいね!』

う、う、う…裏切り者ーーーーーー!!!!!

続く(?)

隈川

フットマンアイスレポート

ご機嫌麗しゅうございます、お嬢様。
隈川でございます。

ティーサロンには毎月使用人たちが、それぞれに趣向を凝らして考案する「フットマンアイス」というサイドデザートがございます。

そんなアイスを試食している場面にさり気なく居合わせて、しれっと味見をさせて頂くことが私の毎月の楽しみなのです。

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歩く男

ご機嫌麗しゅうございます、お嬢様。
隈川でございます。

お嬢様は芸術品はお好きでしょうか。
私は趣味程度にではございますが芸術品の展示会に足を運ぶことを好んでおります。

忙しさに翻弄され、最近ではなかなか機会を作れておりませんでしたが、今気になっている展示会がございます。

ジャコメッティ展。
スイス出身のフランス彫刻家、アルベルトジャコメッティの展示でございます。

学生時代、友人にジャコメッティの彫刻『歩く男』の写真を見せてもらったときのインパクトを鮮明に覚えております。

余計なものを削ぎ落とし、物事の本質を探す。これは簡単なように聞こえますが通常できることではございません。これは是非実物を拝観したいと以前より思っておりました。

お嬢様、もし宜しけれはジャコメッティ展、ご一緒にいかがでしょうか。

え?
歩く男(フットマン)なら毎日見てる…なるほど、確かに仰る通りで。

隈川

夜の使用人食堂

ご機嫌麗しゅうございます、お嬢様。
隈川でございます。

近頃、いけないと分かっていながらもつい夜更かしをしてしまうのです。

お嬢様を見送った後に一人で食べる夕食はなんとなく味気なく、夜は食堂で誰かしらと食事をするようにしております。

大体黒崎や新山が淡々と悪態を付き合いながら食事をしているので、そこに混ぜて頂きます。

彼らは不思議です。
二人ともクールなイメージがございますが、話を聞いているとつい笑いが溢れてしまう。一緒にいて居心地が良いというのは使用人としてとても大切な資質のように思います。

見習いたいな、などと考えながら見ていると今度は急に子供みたいにくだらないことをし始めたり本当に不思議です。

ある程度食事が進んだ頃に、執務を終えた伊織や水瀬がやって来て、もうひと盛り上がり。

なかなか夜更かしを止めるのは難しいようです。

隈川

オルソ

ご機嫌麗しゅうございます、お嬢様。
隈川でございます。

お嬢様。
実は今月の1日から私の考えたフットマンブレンドティーがこっそりお品書きに載っております。大変恐縮でございます。

紅茶の名は『オルソ』と申します。
りんごの香りをつけたアッサムをベースにキームンを加え、ハーブにカモミールとハニーブッシュをミキシング致しました。

オーソドックスなハーブティーですがミルクなどと合わせても宜しいかと存じます。

カモミールの花言葉には『逆境に耐える』『あなたを癒す』などがございます。

お嬢様が過ごす日々の中で、悩むことや疲れること、理不尽に耐え言葉に出来ないような気持ちを抱えることもあるかと存じます。

そんな逆境の中でも、リラックス効果の高いカモミールの入った紅茶を召し上がって、小さくても構いません、花のような微笑みを咲かせて下さったらばと願いを込めた紅茶でございます。

オルソという言葉は
イタリア語ならばorso。
『熊』という意味です。
そして、『耐える』という意味も持つと聞きます。

ギリシャ語ならばortho。
『歪みを正す』といった意味合い。

どんなに気持ちが折れそうなときでも、我々使用人は紅茶とともに貴方様のお側におります。貴方様の心が歪んでしまうことのないように、傍に寄り添います。

どうかご無理だけはなさらないで下さいませ、お嬢様。

機会がありましたらば『オルソ』
リラックスのお伴に是非一度お試し下さいませ。

隈川