夏のプリザーブアレンジ

敬愛せしお嬢様へ
晴れの日は日差しが厳しく、さりとて雨の日は足元が怪しく
何かとお出掛け叶わぬ季節になってまいりました。

適度に運動していただくのは大前提ではございますが、
屋内で過ごさざるを得ないことが多くなれば
それをどう楽しむかと言うことが大切でございます。

読書や映画鑑賞などこの機に進められるのもよろしいかと存じます。
ご覧になられる映画や書籍のおすすめは、それを得意とする使用人たちに譲らせて頂きまして
私は私の得意分野たる、優雅なお時間にお添えするお食事について
ささやかなお勧めをお伝えしたいと存じます。

この季節のお飲み物は、いろいろお薦めはあれど
緑茶が良い時期でございますね。
あえて濃いめに入れましたものを、氷をたっぷり入れたグラスに注いで
爽やかな香りもしっかり立ったアイス緑茶など、お喉もご気分もすっきりと冴えまして宜しゅうございます。

そうなると合わせますおやつも和のものをお持ちしとうございますね。
羊羹、葛切り、水饅頭や練切り
夏らしい見た目も涼やかなお品がこの季節は特に揃っております。

お友達がいらっしゃった時や、さらにご気分を変えたい時などに
私もよく試すのですが
和菓子に洋のプリザーブを添えてみるのも一興でございます。

羊羹に生クリーム、水饅頭にクロテッド、葛切りに柑橘ジャムやチョコレート。
意外な取り合わせが思いのほか合いまして、なかなか面白うございます。

夏の日のひととき
ぜひ創意工夫を持って優雅にお過ごしくださいませ。

 

 

 

あ。私はよく冷やしたビールを頂きます。

きゅうり

敬愛せしお嬢様へ

気候が不安定ながら、日々真夏の欠片を感じる、そんな春と夏の狭間でございますが
いかがお過ごしでございますか?

時任は時勢も変わり、様子を見ながらも休日のお散歩も叶うようになり
時折、カップ探しや良いバー探しなどにも出掛けさせて頂いております。

バー探しではありませんが、先日無性にスコーンを頂きたくなり、
とあるシンプルながら評判の良い喫茶店へとお邪魔して参りました。

華美さはないものの落ち着いた趣味の良い内装の中、
念願のスコーンとクリームに季節のジャムを頂き、ファインダージリンと共にのんびりと過ごしておりましたが、
朝食を抜いておりましたものでいささかスコーンだけでは足りず、
朝食兼昼食を頂こうかとお品書きと睨めっこしておりましたところ
「キューカンバーサンド」の一文を発見いたしました。

キューカンバーサンド‥
当家のアンナマリアにもよく含まれておりますが、英国では非常にポピュラーな軽食でございます。
ただ、これ単体でメニューを成している例は珍しく、いかにも古式ゆかしい英国風喫茶にふさわしいと感じ入りまして、こちらをオーダーさせて頂きました。

ティーカップを傾けて待つことしばし
お給仕役にお持ち頂いた「キューカンバーサンド」は思いのほか大皿で
なかなか大きなサイズのサンドイッチが並んでおりました。
なんと8切れ。
そして、オールきゅうり。
ほのかにソースとスパイスだけを効かせていて、とても美味しいのですが
他に余分な素材はなく真面目にオールきゅうり。

そして、サラダ付き。

サラダの意味を考えつつ、ほのかに甘味すら感じる美味しいきゅうりをたっぷりと頂きました。
米国人が英国人を罵るスラングに、「locust(バッタ)」というのが在るそうですが
ちょっと意味がわかった気が致します。
いや、きゅうりの瑞々しさに、ソースとスパイスのバランスも抜群ですごく美味しかったです。
きっと、またオーダーします。

 

ただ
嗚呼、ただひとつ

 

 

付け合わせのサラダまできゅうりなのは何でなん‥‥。

カップハンティング

敬愛せしお嬢様へ
温かくなったり寒さが戻ったりと、春への階段を登っているなぁなどと思っている間に
気がつけば5月になっておりました。
茫洋と時を過ごしていてはまた、気がつけば年が変わっているなんて事態になりかねません。
現代の浦島太郎にならぬよう、日々を有益に過ごしてゆこうと心に誓った4月末日でございました。

そんな浦島でございますが
趣味と申しますか、休日の過ごし方の一つがティーカップ探しであることは以前軽く申し上げたことがあるやもしれません。
ショップはもちろんのこと、ユーズドショップやフリーマーケットなども巡り、
まさかと思うようなカップとの出会いを探し散歩する1日が私めの癒しの時でございます。

今年の頭にフラワーオブマンスのカップを発見し、全ての月を揃えることができたのは我ながら殊勲であったと自賛しております。

それ以前でございますと、ユーズドショップで一目惚れした大倉陶園の「テディベア」
これは残念なことにもう破損してしまったようですが、いつの日にかまた見つけ出したく
執念を燃やして探し回っております。

忘れられぬのは、かなり昔となりますが
某フリーマーケットにおいて3つワンセット数百円の値札をつけられて縦積みにされて売られていたロイヤルアルバートたちのカップでございましょうか
販売なさっていた方は全く他意なく、お家の倉庫で埃をかぶっていたものをまとめて持ってきたと仰せでしたが
思わず良きカップであることを一生懸命説明してしまい、
買い手側が値を吊り上げて、売り手側が「いいからいいから」と値を下げようとする
奇妙な商談が展開された思い出がございます。

さて、そんなカップたちでございますが
世間的にお出掛けやイベントの開催が叶うようになりまして
皆様お出掛けが増えておられる昨今、
今までインドア生活中心を余儀なくされていた頃からの変化に伴い、
ユーズドショップなどに良きカップがまた出回るのでは無いかと、密かに期待している時任でございます。

良きカップをハンティング致しましたら、すぐにご報告いたします。
ぜひご愛用くださいませ。

狭間にあるもの

敬愛せしお嬢様へ

窓からお庭を眺めると、寒さの残る中にも早咲きの花や淡い緑が垣間見える季節でございます。
朝はまだ冷えますゆえ、お目覚めの紅茶などでお体温めてくださいませ。

紅茶と申しませば、先日影山と共に珍しくエクストラティーのご用意を務めさせていただきました。
シェイクにて仕上げます、カクテルとエクストラティーの中間のような品でございましたが
お楽しみ頂けたなら幸いでございます。

逆に、紅茶やお茶に寄ったカクテルというのも世にはたくさんございまして
アマレットと紅茶で作る「イタリアンアイスティー」や、桃と烏龍茶で作る「レゲエパンチ」などもお手軽でおいしくおすすめでございます。

オリジナルカクテルにおいても、時任は頻繁に茶葉やハーブを材料の一つとして使用いたします。
ジントニックにローズマリーや緑茶の茶葉を少し加えて風味づけをすると大層美味しゅうございますし、ラムやブランデーベースのカクテルをソーダの代わりにディンブラやニルギリなどのアイスティーで割ってもお味が良く合い、優しい風味のお酒を楽しめます。

機があれば、そんなカクテルと紅茶の融合に特化した「エクストラカクテル」を供してみるのも面白そうでございますね。
ぜひ楽しみにお待ちいただければ幸いでございます。

新年のご挨拶

敬愛せしお嬢様へ

新年おめでとうございます、お嬢様。

新しい年を迎えまして、気持ちも新たに勤めさせて頂こうと決意を固めながら
こたつで猫と共にみかん熱燗を作って楽しんでおります。
砂糖醤油でお餅を焼いて、お酒のお供にご用意し
猫たち用にささみのおやつを出してあげたら、もうこたつから一歩も動く気になりませんね。
しっかりお勤めしていく決意とはなんだったのでしょうか
まぁ、7日の開館まではのんびり過ごさせて頂くと致しましょう。

昨年は新たな使用人たちも多数加わり、また新たなお屋敷の時代が築かれつつある印象でございました。
今年は彼らも、日頃の給仕の技量を互いに磨きあっていくのも勿論ですが、
ギフトショップでのスィーツやお屋敷でのケーキやアイス、カクテルやエクストラティーなど
よりお嬢様の笑顔の糧となりますよう、挑戦していく者も多うございましょうから
ぜひ見守ってやってくださいませ。

もちろん新人たちに負けませんよう
ベテランたちも、時任も
これまで通り尽力すると共に、それぞれ新たな挑戦にも挑ませて頂き
よりお嬢様に楽しんで頂けるよう努めさせて頂きます。

使用人たちが待つお屋敷へと、
今年もどうかたくさんお戻りくださいませ。

冬の朝の護身訓練

敬愛せしお嬢様へ。

まるで舞台の幕が切り替わったかのように、すっかり真冬の気候になってまいりましたね。
こうなると何と言っても朝お目覚めの時にお布団から出るのが大変かと思います。

以前にもお嬢様にお薦めさせて頂いたことがございますが、
冬の朝には目覚めたらまずお布団の中でトレーニングするのが私の日課でございます。
軽く腹筋運動をして、寝返って背筋運動、そのまま腕立て伏せ。

さほど回数を重ねなくても、これで十分布団から出れる熱量は得られますので、朝の元気なお目覚めには大変合理的でおすすめでございます。

他に取り入れておりますのが、肘と膝、肩や腕の柔軟運動でございまして。
膝を抱え込むように左右数回ずつ胸元まで膝を上げて下ろす。
右肩に左の肘を近付けられるだけ近づけるつもりで抱えて、右手でそれを抱えて肩の筋を伸ばす。

これを左右数度繰り返すと、体の普段使わない部分がほぐれて大変お体にも良うございます。

最初はあまり無理なさらず、程々の力で行いませんと逆にお体を痛めますのでご注意くださいませ。

さて、この肘や膝を運動させておくと、普段使わぬままでいるより圧倒的に体の稼動性が異なります。
疲労しやすさや肩こりなどの改善にも効果的でございますし、
また、剣呑なお話になってしまいますが、年末年始が近く街に酔いどれが増えてまいりますと、不埒な輩も増えてまいります。

いざという時の護身術というものは貴人として心得ておいでとは存じますが、筋力や体躯に頼らず効率よく相手にダメージを与えるには肘や膝を使った不意打ちが一番有効でございます。

万一不埒者に暴行を受け、逃れ辛いようなら、肘でも膝でも体重を乗せて相手に叩きつけ、そのまま一気に逃げる。
そして然るべきところにすぐ助けを求める。
これが万一の時には一番効率良い自衛法でございます。

心地よいお目覚めのために。
また、万が一の時の護身訓練に。

お布団の魔力に囚われた時は、肘膝の柔軟体操をお試しになってみてくださいませ。

トーナメント

敬愛せしお嬢様へ

瞬く間に秋から冬へと気候が移りゆき、コートはもちろんのことマフラーや手袋のお仕立ても急ぐべき寒さにございます。

お気に入りのものが見つかれば良うございますが、叶わぬようであればいっそお抱えデザイナーたちに命じましてお嬢様用のデザインを作らせた方が早いのかもしれません。
どうかご検討くださいませ。

さて、暦の進みも早いもので、このお手紙が御許に届く頃には年越しも見えてきてる頃でございましょう。
お休みの時期は本家に戻られますか?あるいはご別宅でゆっくり過ごされますか?
いずれにしても、お正月休みというのはお暇を持て余すものでございますから
珍しく時任もおすすめの映画などお伝えしてみることに致しましょう。

他の皆のように映画への造詣がございませんもので、ややライトなものではございますが
20年ほど以前の古き娯楽映画「ロック・ユー!」を此度はお薦めいたします。
中世英国の騎士たちの物語でございまして、当時の騎士たちや貴族たち、平民たちの暮らしも垣間見える楽しい作品でございますが、
一風変わったことに、騎士の物語と言ってもこの映画は戦争映画でもなければドラゴンを倒すお話でもございません。

この映画はスポーツ青春物語でございます。

既に「??」マークがお心に浮かんでいるかと存じますがお聞きください。
中世騎士たちも24時間365日戦争をしていたわけでもドラゴンを狩っていたわけでもございません。そも中世とて平和な時期の方が長かったわけでございまして。
そんな中でも騎士たちは互いの武芸を鍛え、それを競い讃えあうために「トーナメント」という競技を盛んに行っておりました。

英国各地の貴族階級・騎士階級を持つものたちが一堂に集い、試合として武芸を競い合う、
各貴族の名誉を賭けた一大イベントだったようでございます。

小剣や大剣での勝負や、弓や乗馬の技量など様々な種目があったようでございますが、
どれよりも花形と言えるのは、騎兵槍という3メートル前後の長大な槍を持って馬に乗り、
互いに向き合って愛馬を駆けさせ、槍を見事に相手の騎士に命中させようと競う、
そんな勇猛な競技でございました。

と言ってももちろん槍の穂先は刺さらないよう潰され、槍の素材も金属ではなく柔らかい木製とされ、相手の体に命中すると槍が砕けて衝撃を緩めるような仕様ではございましたが
それでも訓練された戦馬同士が駆け、金属の全身鎧を着た騎士が吹き飛ぶようなこの派手な競技は、娯楽が少なかった当時の英国にとってはそれこそ今日のワールドカップのように大人気の催しでもございました。

名誉に憧れ、そんな「トーナメント」へと挑戦した1人の若者。
彼を支える個性溢れすぎる仲間たちや、貴婦人との恋、火花散らす宿命のライバル、生き別れていた肉親との再会など、ちょっとした少年漫画かのような王道の熱い物語がお楽しみ頂けます。

ぜひご覧になってみてくださいませ。

余談ですが、時任個人としてはこの映画に出て参ります「紋章官」という役割の者たちが興味深うございました。
以前から貴族に関する知識の専門家として「紋章官」という存在がある事は知っておりましたが、具体的に何をする人なのか良く解らないままでおりましたので、この映画内にて活躍しておりますのでそちらもご注目くださいませ。

 

どうか、良きお休みをお過ごしいただけますように。

 

 

‥私ども使用人の方は、お休みがあるのかどうか、まだちょっと疑わしいところですが。