冬も、まだまだ楽しめます。

司馬でございます。

皆様、お健やかでいらっしゃいますか?

二月となりまして、梅の花が咲くのも待ち遠しくなってまいりました。

とはいえ、しばらく冬の盛りは続くようでございます。

寒い時期には、やはり鍋料理がよろしゅうございますね。

“二番煎じ”という落語がございます。

家事の多い江戸の冬。

夜回りをすることになった町の旦那衆でございますが、やはり厳しい寒さには辟易して、寄り合い所で人目を忍びつつ、猪鍋を囲んで一杯やりながら暖をとります。

名人の手により、その様子が見事に描写されますと、ついつい私も食欲を刺激されて、親しい仲間たちと、ざく切りの葱をたっぷり入れた味噌仕立てのボタン鍋に箸を伸ばしてみたくなります。

江戸の情緒が巧みに織り込まれた傑作の一つではないかと存じます。

とはいえ、この時節では、大人数で鍋を囲む楽しみも、おあずけでございますね。

では、時代劇小説の大家である池波正太郎氏の作品や随筆でよく登場する“小鍋立て”という趣向はいかがでしょうか?

一人から二人用の小さな鍋に、入れる具はあまり多くせず、せいぜい三つか、四つ。

煮えるそばから口に運ぶというもので、有名なところでは、大根の千切りとアサリのむき身を合わせたお品がございます。

アサリの風味が移った熱々の大根に、山椒をふりかけ、ふうふうと吹きながら食しますと、冬の寒さもなかなか良いものだと思わされます。

私見ではございますが、冬の寒さは、食材を美味しくさせる効果があるような気がいたします。

では、皆様方。

春の訪れまでもう少し。

お体を冷やさないようご自愛しつつ、まだまだ続く冬の楽しみを満喫なさってくださいませ。