お屋敷の秘密~おまけ~

 さて、最近お嬢様は私を見かけると、「久しぶりに顔を見た」でありますとか、「椎名に迎えられるのは一ヶ月ぶりだ」等と仰います。
果ては「倒れていたのかと思った」と心配までさせてしまう始末。
どうかお嬢様不幸者の椎名をお許しくださいませ。

椎名は元気に勤めております。
ただどうしても、ほかの執務があったりと中々お給仕できないのも事実でございます。
お屋敷に立てない理由。
その一つがフットマン候補生たちの教育でございます。
少しでも立派に育った人材をお嬢様の前に立たせて差し上げたいと、日々奮闘中でございます。教材を作ったり、資料を作ったり・・・

人にものを教えるのは本当大変であるとこのごろ痛感致します。

私どもの教える言葉ひとつで候補生の方向性や結果が変わってくるのかと思うと、身の引き締まる思いでございます。

 ところで、先日の日誌にも紹介しました『寝ている間に翌朝のお仕事の指示が枕元に置かれている』というお屋敷の秘密ですが(詳しくは日誌の『お屋敷の秘密』をご覧下さい。)、とあるフットマンが訪ねてきました。

「椎名執事、教育係の日には、枕元に何が置かれているのですか?」

枕元に置かれているもの。それは・・・

『飴と鞭』でございます。

 飴は日によって違います。フルーツの物やのど飴。
・・・以前、川崎大師名物の『トントコ飴』だった事もあります。
何かの意図があるような・・・しかし、ただの気まぐれのような気も致します。
これは、集中力の切れかけた候補生に与えたり、休憩時間に皆で舐めたり、声を出しすぎてイガイガとする私の喉を優しく癒してくれます。
適度な糖分は、ブドウ糖となって脳に取り込まれます。お勉強の効率も上がるわけでございます。(因みに私は常にブドウ糖の飴を常備しております。)

 もう一つは鞭。
これは・・・・
馬屋に同じ物がありましたので、おそらく乗馬をする際に使用する類の鞭でございましょう。
馬のお尻の皮は財布などにも使用されていますが、ご存じの通り大変丈夫でございます。
そのお尻を叩くための鞭な訳ですから、これで候補生を叩こうものなら当然・・・・・・・・・怖くて想像したくもありません。
もちろん!
私は断じて使用いたしません。

・・・・・・

先日の小山内の日誌を読んで察するに・・・
彼は実際その鞭を使用しているようでございますが・・・・

彼も根は優しいのですが、仕事に対しては人一倍厳しい男。
熱が入りすぎてフットマン候補生達が傷だらけにならない事を祈るばかりでございます。

 また近いうちに新たなフットマンたちがお嬢様の前に顔をお見せすることでしょう。
はじめは不慣れな所もあるかと存じます。しかし小山内も申しておりましたが皆、魅力的な者達です。
その時には是非宜しくお願い致します。

では、本日はこの辺で。