愛の罪深さ

敬愛せしお嬢様へ

時任でございます。
窓硝子が凍てつくほどの寒さが続いております。
お嬢様におかれましては、きちんとたくさんお布団をかけておやすみ頂けておりますか?
どうか夢の中までも、暖かくお過ごしくださいませ。

先日の雪は大変でございましたね。
ご別宅への道程、大冒険だった方もいらっしゃいますよね。
爺やたちもたいそう心配しておりました。

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学び

時任でございます。
先日まで暑い暑いと言っていた気が致しますのに、舞台の幕が変わったかのように凍える日々が続いております。お身体の調子崩したりなさっておられませんか?

悪い風邪が流行る時期でございますから、くれぐれもご自愛いただき、ご飯も睡眠もしっかりとってくださいませ。

さて、そんなある冬の夜。
大旦那様の仰せのもと、当家におけるブルームーンのような、他のお屋敷の「別館」へと足を運んでまいりました。

横浜の地にございます、とあるスタンダートカクテルの元祖としても名高いその地は、港に程近い場所にあり、どこからか聞こえてくる聖歌隊の歌声に耳を傾けながら街路をしばらく歩くと、件の別館が見えてまいりました。

思いのほか小さなカウンターに陣取り一息つきまして、まずはジンフィズを頂戴致しました。

味のバランス、ステアとシェイクの技法を共に問われる、もっとも基本にして難しいカクテルでございますが、非常にバランス良く仕上がっておりまして感服致しました。

しばしジャズの演奏に耳を傾けながら、ゆっくりとした時間の流れを楽しんでおりました。
ジャズの演奏をなさっている方も他の来訪者の方々も、地元の年配の方が多く、永くにわたって愛されている場所なのだなぁと、強く感じてございます。

さて、次に頂きましたのは「ジャック・ター」。
強めのラム酒に、桃などを用いたウィスキー系のフルーツリキュール・サザンカンフォートを合わせ、ライムで酸味を持たせたカクテルでございます。

完璧でした。
リキュールの甘味とライムの酸味のバランス。ラムの香り。アルコール高めにも関わらず、喉を心地よく潤してくれる氷の状態と配分具合。

ああ。いますぐ自分でカクテルを作りたい。
アルコールの酔いよりも、刺激されたバーテンダーの本能に突き動かされながら、甘美な一杯を干し。
ついでに仲良くなった常連のおじいさんに二種類ほどカクテルを味見させていただき。

少々フラフラになりながらも、深く感謝を申し上げて別館をあとにいたしました。

実体験として学ぶことができた伝統の味、学べたこと。
早くブルームーンにて、お嬢様にお届けするカクテルに生かしたいものでございます。

ぜひ年が明けましたら、別館にもお戻り下さいませ。

ドッグランとハンドパン

敬愛せしお嬢様へ

時任でございます。
急に冷え込む日々が続いております。外套のご用意はお済みでございましょうか?
とは言え、まだ晴れた日のお昼はお散歩向けの暖かさを残しておりました。
冬の景色も悪くはありませんが、暖かなうちに一枚描こうと思い立ち、近くの公園へと出向いて参りました。

紅葉の兆しはあるものの、まだまだ色付いてはおらず、緑が優しい色彩のグラデーションを描いておりました。
散歩路には犬のお散歩をなさっている方も多く、広い公園を探検して何かを見つけては、一目散に主人の元へ駆け戻っていく犬たちを良く見かけました。
…いや、犬って足早いですね。うちの猫の20倍ぐらい早い気が致します。うちの子が一般の猫の1/10ぐらいの速度しかないだけですが。

この日はお天気も手伝ってか、絵画や写真や音楽を楽しんでいる方も多く、森のベンチでビールのボトルを傾けながらヴィオラを弾いていた方など、大層絵になっていて、思わずその方をモデルに絵筆を取りそうになってしまいました。

また、森の入り口では閉じた鍋に窪みを付けたような不思議な楽器を演奏なさる方を見掛けました。オリジナルで作られたのかと思っておりましたら、同日に駅前でも同じ楽器を奏でる人を見かけたので、そうでもないようです。

調べてみましたら『ハンドパン』という楽器のようでございます。
実に良い音が響きますので、もしお外で見掛けることなどございましたら、ぜひ耳を傾けてみてくださいませ。

お散歩もたまにはいろいろな発見があって良いものでございます。
お嬢様ももしお散歩で何か面白いものを見つけたら、使用人たちに教えてやって下さいませ。

サングリア

敬愛せしお嬢様へ
雨の日々を境に、急激に冬の気候となってまいりました。
お嬢様におかれましては、お体の調子など崩してはおられませんでしょうか?
健康はバランスのとれた食事からと申します。
昨今の巷では過剰なダイエットが横行しておりますが、どうか惑わされることなく、しっかりと適量のお食事をお摂りくださいませ。

さて、美味しいお食事のお供には、美味しい飲み物が欠かせません。
当家サロンであれば紅茶。朝食には新鮮なスクイズフルーツか薫り立つコーヒー。ディナーであれば厳選したワイン。テーブルに合わせた様々なお飲み物がございましょう。

今宵はお嬢様の食卓に新たなご提案をお届けできればと思い、当家パーティにおいてよくご用意させて頂いております『サングリア』の簡単な作り方をお伝え致します。

サングリアの良いところは、お飲みきれなかったワインやお口に合わなかったワインを原料として、無駄にせず美味しいお飲物へと変えられるところでしょうか。

季節やお好みによって様々な材料を合わせてお楽しみ頂けますが、
今宵はごく簡単なものをお二つご紹介することに致しましょう。

まずは赤ワイン。
お好きな赤ワイン2リットルに対し、オレンジ4つを16カットほどに刻んでそのままワインの中に入れます。(皮ごとで大丈夫です)
そして、オレンジジュース500ml、ガムシロップ200ml、コアントロー200ml、ブランデー100mlを加えます。
お好みでシナモンやミントを加えて、冷蔵庫でよく冷やしてお召し上がりください。

そして白ワイン。
お好きな白ワイン2リットルに対し、リンゴを4つ薄切りに刻んで、そのままワインの中に入れます。(皮は剥き、芯も取り除いてください)
そして、リンゴジュース500ml、ガムシロップ200ml、アップルリキュール200ml、ポートワインの白100mlを加えます。
お好みでレモングラスやミントを加えて、冷蔵庫でよく冷やしてお召し上がりください。

と、このように。
ワイン+お好みの果物+同系統のジュース+同系統のリキュールをあわせ、
お後はお好みでシロップやブランデーなどを加えて頂くだけで、案外簡単に出来上がります。

ただし、お嬢様。
これらの調合は、お飲みになる直前に行って下さいませ。
酒税法により、20%以下のアルコールに別の材料を混合した飲料の作り置きは禁じられております。
必ず、パーティの直前などに調合なさいますように。

確かに、しっかり密封して12時間~3日間ほど冷暗所で置いておきますと、更に味が染みて美味しくなったり致しますが、絶対やっちゃいけません。

すぐ飲むつもりだったのにうっかり、疲れて12時間ぐらいお昼寝してしまったり、ついつい2日ほど飲むのを忘れてしまったりしては絶対にいけません。

ダメですよ。
絶対ダメですからね。

それでは、お嬢様の食卓が更に季節の美味しさに溢れることを願いながら、筆を置かせて頂きます。

おやすみなさいませ、お嬢様。

フローズンカシス

敬愛せしお嬢様へ。

今年の夏は日差しは少ないようなれど、湿気の強い蒸すような気候が続いてございますね。
喉を痛めやすい気候でございますゆえ、良き紅茶をお召し上がりいただき、お労りくださいませ。

このようなお天気の日には爽快なデザートが宜しいかと、先日よりお屋敷にて「カシスとクランベリーのシャーベット」をご用意しております。
『フローズンカシス』と申しますカクテルのお味をイメージしておりまして、厳選したリキュールを用い爽やかに仕上げております。

お口をすっきりとさせる爽やかなお味でございますので、デザートとしてお召し上がられるのは勿論、ディナーにおきましてはお魚とお肉の間にグラニテ代わりにお召し上がりになるのも良いかと、お勧め致します。

また、別館ブルームーンにおきましても「フローズンカシス」をご用意しておりますが、こちらもまたルセットを変えました一風変わったフローズンカシスでございます。
どちらかお気に召していただけたら、ぜひもう一方もお召し上がり頂けたら幸いでございます。

ほんのひとときの涼を、お嬢様にお届けできますよう。

時任。

寛ぎながら戯れ言

敬愛せしお嬢様へ

時任でございます。
本当に春はどこへ行ってしまったのでしょうか。
昼夜の温度差激しい日々が続いておりますゆえ、お嬢様におかれましては身体にお気をつけ頂き、如何に暑く感じられる日でございましてもまだまだ上着はお忘れなきようにお願い申し上げます。

さて、今宵も拙き言葉を紡いで参りますが、子守唄がわりと思って頂ければ幸いでございます。

誰しもなぜか心安らぐ場所というのはございますね。

それが子供の遊ぶ公園であったり、古びた香りの和室であったり、木漏れ日のある森の中だったり…それは人それぞれですね。

お人によっては、うず高く本の積まれた書庫だったり、機械油香る車のガレージだったり、愚者のカードのごとき高い塔のてっぺんだったりするでしょう。

時任にとってのそれは、夜の街でございます。
幼い頃から夜に縁深かったこともございましょうが、夜の雑踏の中に身を浸しておりますと、どんなに心身がえぐれていても泡と溶けるように痛みが消えていくように思えます。

別段、夜遊びが好きなわけでも、騒ぐのが好きなわけでもございません。
衝撃の告白をいたしますと、酒を飲むことそのものも好きなわけではございません。作るのは好きですが。
ただ、夜の街という空間に、静かに身を浸しているのが好きなのです。

お嬢様がたも、自分だけの安らぐ場所というものは、大事になさいませ。
ナポレオンは必要最低限の休息しかとらなかったと言われますが、人に休息は大事でございます。

叶うなら、お屋敷がお嬢様にとって安らげる場所であればと願いますし、そうあるように尽力して参ります。
その活力を養うためにも、今は暫し、夜に身を隠すことをお許しくださいませ。

古いジュークボックスの音色に人々のざわめき。飴色のカウンタによく似合う無骨なロックグラスにはロンサカパを満たしてちびちびと舐めて。
ああ、落ちつきますね。

…あ。猫を膝に文字と戯れているこの時間も好きですよ。
だから私の膝で爪を研がないでください。
あと勝
手にリターンキーを押すのもや
めなさい。
あ、こ
ら、やめ

なさい

って。

ょ。

…ああもう。
おやつあげますからもう寝ましょう。
明日も頑張りましょうね。
あなたのお陰で、私は明日も頑張れますよ。