ガーデンジュレップ

敬愛せしお嬢様へ。
ようやく春らしくなってきたと思えば、いささか陽の強さが過ぎるように思えるこの頃でございます。

来月…5月の13日に久方ぶりにお屋敷本館にてオリジナルカクテルをご用意させて頂くことと相成りまして、徐々に準備を進めております。

お酒の調合のみならず、時任が好んで修めておりますハーブの技術を駆使して、春の新緑にちなんだジュレップをご用意させて頂こうと考えており。どうにかハーブの調合もまとまってまいりました。

添えましたこの写真が、今回のカクテルに使用するハーブたちでございます。
彼らが良き味や香りとなって、お嬢様に爽やかな緑の庭園のごとき世界をお届けできますよう、調合に勤めまいります。
カクテル『新緑のガーデンジュレップ』、どうか楽しみにお待ちくださいませ。

…え?ハーブを調合する姿がとてもアンダーグラウンドっぽい?
自覚してます。だから通報だけはやめてくださいませ。後生ですから。

秘伝のホットウィスキー

敬愛せしお嬢様へ
暦は春を刻めども、まだまだ寝床の暖かさが恋しい冬の日々、いかがお過ごしでしょうか。

冷えます日には、室内に辿り着いたときに手にする暖かい飲み物が至福でございますね。
当館にお戻り頂いたときには、いつでも暖かな紅茶がございますが、
お別宅に戻られたときのひとときや寒い夜のために、ウィスキーを使った秘伝のレシピをお届け致します。

まず一杯分のレシピですが、以下のようになります。
 ウィスキー30ml
 熱湯90ml
 はちみつ スプーン2杯
 レモン 1/8個を入れて潰す。
 オレンジなど好きな果物 1/8個を入れて潰す。

このときウィスキーは、慣れてない方であればバーボンウィスキーが良うございます。
逆にウィスキーを愛する方であれば、アイラなど様々なスコッチウィスキーの個性を合わせてみるのも愉快かと存じます。

また、先ほどのレシピを×4倍ぐらいにしていただき、ミルクパンなどで暖めて皆でお召し上がり頂く方がお勧めでございます。
より全体が熱せられ暖かくなりますし、味も良く染みてくれます。

「好きな果物」はだいたい何でも美味しくなります。
スタンダートにオレンジ。イチゴやブルーベリーなどのベリー系。ぶどう。桃。バナナ。グァバ。キウイ。さくらんぼ。それぞれ個性があって美味しゅうございます。
ただ、ライムとパイナップルは、個人的には今一つ合いませんでした。

裏バージョンというほどではございませんが、ウィスキーをブランデーやラムに変えてもよいお味でございます。
秘伝のお酒レシピで。冬の残り香を乗り越えていただけたら幸いでございます。

☆ミルクパンなどで暖めるときは、すべての材料を混ぜてから火にかけてください。お酒だけを火にかけるのは危険です。
☆加熱は湯気が出る程度までにとどめ、加熱しすぎないようご注意ください。もし鍋の水面に着火した場合は、慌てず火を止めて冷まし、温度を下げればすぐに消えます。
☆周囲の火気や換気にご注意下さいませ。

道化の宴

敬愛せしお嬢様へ。

冬の寒さも暦の上ではあと僅ながら、冷える日々が続いてございます。
お嬢様におかれましてはご健勝であられましょうか。
こんな日々はお出掛けも辛うございますゆえ、社交の場も自ずと限られてしまいます。
狩り場や馬場にも出られない季節のためというのも、ゲームという文化が発達した要因と一つと言われおります。
今宵はひとつ。ご友人集われたときなどに、ごく簡単にお遊び頂けるゲームをご紹介致しましょう。

人狼ゲームという遊びがございます。
以前は当家でもご紹介差し上げたことがございますが、お集まり頂いた参加者の中に潜む「人狼」を、話し合いにより見つけ出すという、交渉術や駆け引きを楽しめるゲームでございまして、現在も根強い人気を誇っているようでございます。

「道化師のゲーム」はその簡易版と言えます。
ご用意いただくのは、トランプ一組だけ。
ルールはゲームを遊ぶご人数により若干異なりますが、
一番分かりやすい六名様を想定してご説明差し上げましょう。

・トランプのうち、スペードのカードだけ(A~Kの13枚)とジョーカーを2枚用意します。
・裏にしたスペードのカード13枚からランダムに4枚のカードを引き、そこに2枚のジョーカーを加えた6枚を裏のまま混ぜ、参加者に一枚ずつ配ります。(当然のことながら、裏のまま誰にも見られないように配りましょう)

・全員一斉に自分のカードを確認します。
このとき、自分のカードがジョーカーであった方は「道化師」です。
・一度全員目をつぶります。
「道化師目を開けて」という合図と共に、ジョーカーを引いた二人だけは目を開けてお互いを確認します。
・十分な時間をおいてから「全員目を開けて」というかけ声に合わせて、全員目を開けましょう。ここからゲーム開始です。

・自由に言葉を交わしながら、誰が道化師なのかを探っていきます。
道化師になった二人は逆に、自分が道化師だと決してバレないように振る舞います。
・話し合いに時間制限はありません。
・全員いつでも「この人が道化師だ」と思ったらその人を指差すことができます。また、いつでもそれを「やっぱりやめた」と取り下げることができます。

・3人に指差された人は「処刑された」ことになります。
・処刑された人は、自分のカードを全員に見せてゲームから一時抜けとなります。つまり処刑されたら「道化師」かどうか全員にわかります。
・処刑された人は、その回が終わるまで発言できません。

・道化師2人を処刑できたら、道化師ではない人たちの勝利となります。
しかし、その前に道化師ではない人を2人間違えて処刑してしまったら、道化師たちの勝利となります。

基本的なルールは以上でございます。
目線や仕草を読み取り、他者の発言の裏を読み、道化師を見つけ出す展開は大変面白うございますし、社交界デビューに向けての訓練としても最適でございます。

では、ささやかながらこのゲームにおいての有効な戦略もご紹介致しましょう。
戦略の鍵は「ジョーカー」よりもむしろ「ジョーカー以外のカード」にございます。

☆戦略① カードの数字を聞く
「あなたのカードは何?」といきなり聞くのはよい戦略のひとつです。
配られたカードはスペードのA~Kのどれかな筈ですから、ただそれを答えれば良いだけですし、答えない理由はございません…「道化師」以外は。
そして道化師はこの質問をされたとき、とっさに嘘をつかなければなりません。
この質問への返事に迷いがないか。不自然さがないか。じっくり観察いたしましょう。

また、時間をおいてから不意を突き、もう一度同じ質問をするのも有効です。
先程と同じ数字を答えているか確認いたしましょう。
合っているのにわざと「ええっ?先程と数字が違いませんか?」と揺さぶって焦らせてみるのも有効です。

☆戦略② カードの重複を利用する
カードの数字を聞かれたとき、道化師は必ず嘘を答えざるを得ません。
そしてジョーカー以外のカードは13種類しかありませんから、嘘で答えたカードを、他のプレイヤーが持っている可能性は低くはないのです。

プレイヤーA「あなたのカードは?」
道化師「スペードの9です。」
プレイヤーB「えっ?私もスペードの9なのだけど…」

となるわけです。
もっとも、道化師が混乱を誘うために他のプレイヤーに「あれ?同じカードですね」と嘘を仕掛けている場合もございますので、ご用心ください。

☆戦略③ 釣ってみる
このゲームは「道化師だ」と思った人をいつでも指差すことができます。
そして、3人に指差されてしまうと、その人は処刑されてしまいます。

さて。あえて疑わしくもない誰かを、さも疑ってるように演じながら指差してみましょう。
「道化師」以外の人が間違って処刑されてしまえば、道化師は勝ちに近づきますので、指差された人が道化師ではないなら、「道化師」は同じ人を指差して処刑に追い込もうとするはずです。

さて、この指差しはいつでも「やっぱりやめた」と下ろすことができますので、誰かが同じ人を指そうとしたらすぐに指を下ろしてしまいましょう。
そして、疑ってもいないのに指差しに加わってきたのが誰かを確認しましょう。…その人が「道化師」である可能性は高いですよ。

などなど。トランプだけで簡単に遊べますが、奥の深い道化師のゲーム。
ちょっとしたお時間潰しや社交のひとときにいかがでございましょうか。
ただし、本気のケンカにならないよう、くれぐれもお気をつけくださいませ。

愛の罪深さ

敬愛せしお嬢様へ

時任でございます。
窓硝子が凍てつくほどの寒さが続いております。
お嬢様におかれましては、きちんとたくさんお布団をかけておやすみ頂けておりますか?
どうか夢の中までも、暖かくお過ごしくださいませ。

先日の雪は大変でございましたね。
ご別宅への道程、大冒険だった方もいらっしゃいますよね。
爺やたちもたいそう心配しておりました。

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学び

時任でございます。
先日まで暑い暑いと言っていた気が致しますのに、舞台の幕が変わったかのように凍える日々が続いております。お身体の調子崩したりなさっておられませんか?

悪い風邪が流行る時期でございますから、くれぐれもご自愛いただき、ご飯も睡眠もしっかりとってくださいませ。

さて、そんなある冬の夜。
大旦那様の仰せのもと、当家におけるブルームーンのような、他のお屋敷の「別館」へと足を運んでまいりました。

横浜の地にございます、とあるスタンダートカクテルの元祖としても名高いその地は、港に程近い場所にあり、どこからか聞こえてくる聖歌隊の歌声に耳を傾けながら街路をしばらく歩くと、件の別館が見えてまいりました。

思いのほか小さなカウンターに陣取り一息つきまして、まずはジンフィズを頂戴致しました。

味のバランス、ステアとシェイクの技法を共に問われる、もっとも基本にして難しいカクテルでございますが、非常にバランス良く仕上がっておりまして感服致しました。

しばしジャズの演奏に耳を傾けながら、ゆっくりとした時間の流れを楽しんでおりました。
ジャズの演奏をなさっている方も他の来訪者の方々も、地元の年配の方が多く、永くにわたって愛されている場所なのだなぁと、強く感じてございます。

さて、次に頂きましたのは「ジャック・ター」。
強めのラム酒に、桃などを用いたウィスキー系のフルーツリキュール・サザンカンフォートを合わせ、ライムで酸味を持たせたカクテルでございます。

完璧でした。
リキュールの甘味とライムの酸味のバランス。ラムの香り。アルコール高めにも関わらず、喉を心地よく潤してくれる氷の状態と配分具合。

ああ。いますぐ自分でカクテルを作りたい。
アルコールの酔いよりも、刺激されたバーテンダーの本能に突き動かされながら、甘美な一杯を干し。
ついでに仲良くなった常連のおじいさんに二種類ほどカクテルを味見させていただき。

少々フラフラになりながらも、深く感謝を申し上げて別館をあとにいたしました。

実体験として学ぶことができた伝統の味、学べたこと。
早くブルームーンにて、お嬢様にお届けするカクテルに生かしたいものでございます。

ぜひ年が明けましたら、別館にもお戻り下さいませ。

ドッグランとハンドパン

敬愛せしお嬢様へ

時任でございます。
急に冷え込む日々が続いております。外套のご用意はお済みでございましょうか?
とは言え、まだ晴れた日のお昼はお散歩向けの暖かさを残しておりました。
冬の景色も悪くはありませんが、暖かなうちに一枚描こうと思い立ち、近くの公園へと出向いて参りました。

紅葉の兆しはあるものの、まだまだ色付いてはおらず、緑が優しい色彩のグラデーションを描いておりました。
散歩路には犬のお散歩をなさっている方も多く、広い公園を探検して何かを見つけては、一目散に主人の元へ駆け戻っていく犬たちを良く見かけました。
…いや、犬って足早いですね。うちの猫の20倍ぐらい早い気が致します。うちの子が一般の猫の1/10ぐらいの速度しかないだけですが。

この日はお天気も手伝ってか、絵画や写真や音楽を楽しんでいる方も多く、森のベンチでビールのボトルを傾けながらヴィオラを弾いていた方など、大層絵になっていて、思わずその方をモデルに絵筆を取りそうになってしまいました。

また、森の入り口では閉じた鍋に窪みを付けたような不思議な楽器を演奏なさる方を見掛けました。オリジナルで作られたのかと思っておりましたら、同日に駅前でも同じ楽器を奏でる人を見かけたので、そうでもないようです。

調べてみましたら『ハンドパン』という楽器のようでございます。
実に良い音が響きますので、もしお外で見掛けることなどございましたら、ぜひ耳を傾けてみてくださいませ。

お散歩もたまにはいろいろな発見があって良いものでございます。
お嬢様ももしお散歩で何か面白いものを見つけたら、使用人たちに教えてやって下さいませ。

サングリア

敬愛せしお嬢様へ
雨の日々を境に、急激に冬の気候となってまいりました。
お嬢様におかれましては、お体の調子など崩してはおられませんでしょうか?
健康はバランスのとれた食事からと申します。
昨今の巷では過剰なダイエットが横行しておりますが、どうか惑わされることなく、しっかりと適量のお食事をお摂りくださいませ。

さて、美味しいお食事のお供には、美味しい飲み物が欠かせません。
当家サロンであれば紅茶。朝食には新鮮なスクイズフルーツか薫り立つコーヒー。ディナーであれば厳選したワイン。テーブルに合わせた様々なお飲み物がございましょう。

今宵はお嬢様の食卓に新たなご提案をお届けできればと思い、当家パーティにおいてよくご用意させて頂いております『サングリア』の簡単な作り方をお伝え致します。

サングリアの良いところは、お飲みきれなかったワインやお口に合わなかったワインを原料として、無駄にせず美味しいお飲物へと変えられるところでしょうか。

季節やお好みによって様々な材料を合わせてお楽しみ頂けますが、
今宵はごく簡単なものをお二つご紹介することに致しましょう。

まずは赤ワイン。
お好きな赤ワイン2リットルに対し、オレンジ4つを16カットほどに刻んでそのままワインの中に入れます。(皮ごとで大丈夫です)
そして、オレンジジュース500ml、ガムシロップ200ml、コアントロー200ml、ブランデー100mlを加えます。
お好みでシナモンやミントを加えて、冷蔵庫でよく冷やしてお召し上がりください。

そして白ワイン。
お好きな白ワイン2リットルに対し、リンゴを4つ薄切りに刻んで、そのままワインの中に入れます。(皮は剥き、芯も取り除いてください)
そして、リンゴジュース500ml、ガムシロップ200ml、アップルリキュール200ml、ポートワインの白100mlを加えます。
お好みでレモングラスやミントを加えて、冷蔵庫でよく冷やしてお召し上がりください。

と、このように。
ワイン+お好みの果物+同系統のジュース+同系統のリキュールをあわせ、
お後はお好みでシロップやブランデーなどを加えて頂くだけで、案外簡単に出来上がります。

ただし、お嬢様。
これらの調合は、お飲みになる直前に行って下さいませ。
酒税法により、20%以下のアルコールに別の材料を混合した飲料の作り置きは禁じられております。
必ず、パーティの直前などに調合なさいますように。

確かに、しっかり密封して12時間~3日間ほど冷暗所で置いておきますと、更に味が染みて美味しくなったり致しますが、絶対やっちゃいけません。

すぐ飲むつもりだったのにうっかり、疲れて12時間ぐらいお昼寝してしまったり、ついつい2日ほど飲むのを忘れてしまったりしては絶対にいけません。

ダメですよ。
絶対ダメですからね。

それでは、お嬢様の食卓が更に季節の美味しさに溢れることを願いながら、筆を置かせて頂きます。

おやすみなさいませ、お嬢様。