12月

【Fianco a Fianco】

お屋敷でお給仕を始めた間もない頃から、時任執事に、私もいつかカクテルを作ってみたいと、将来の夢を語る幼子のように真っ直ぐな目をして伝えておりました。

来る日も来る日も、幾度となく伝え続け、ようやく許しを得ましたカクテルデー。

名前がFianco a Fianco(フィアンコ ア フィアンコ)、イタリア語で支える、寄り添うという意味がある優しい言葉でございます。

私は使用人としてお嬢様、お坊ちゃまを支える身でございます。
しかしながら、支えるだけであらず、喜びにも悲しみにも寄り添いあえるそんな人でありたいと、そんな私の思いを汲み取っていただき、出来上がったものが“爽やかなレモンとヨーグルトクリーム“に“桃と苺とマスカットに甘いクリーム”という優しさも悲しみも包み込む様なカクテルでございます。

作るものが決まりましたら、当日までただひたすらに練習を繰り返しました。

お給仕終わりには時任執事に付き添ってみていただき、自室に帰っても感覚を忘れぬ様にと何度もシェイクの練習をしました。

うまくいかなくとも心が折れず、毎日がむしゃらに続けられたのは、きっと前向きな言葉をずっと投げ続けてくれた時任執事のおかげでございます。

助けられてばかりの初めてのカクテルデーでございましたが、私はこの一回で終わるつもりはございません。

叶うのならば、また来年時任執事とカクテルデーができる様に『一緒にカクテルしましょう!』と何度も伝えてみようと思います。