焼きそば

皆様、ご機嫌麗しゅう。
吉川でございます。

お屋敷にはシェフがおりますから、皆様には縁遠い話かもしれませんが、中年男の独り言と思って耳を傾けてくださいませ。
わたくし吉川は独り暮らしが長いもので、男の手料理レベルですが、ひと通りの料理は作れるようになりました。
しかし、苦手とするメニューもございます。
そのひとつが「焼きそば」です。
おっと、失礼しました。
あまりにも庶民的すぎて、「焼きそば」という料理の名を耳にしたことがないかもしれませんね。
大雑把に申しますと、中華麺と野菜を、少量の水でほぐしながら焼き、ソースなどの調味料で味付けする料理です。
焼きそば用の中華麺の袋にはそのような調理法が書いてあり、その通りに作るのは簡単なのですが、それは「焼きそば」とは違う、言うなれば「蒸しそば」のような、麺の食感がグニャグニャとした不本意な仕上がりになってしまいます。
さりとて、火力を上げて焼こうとすると、麺がフライパンに貼り付いてしまい、後始末が大変です。

もっと麺の食感をパリッとさせ、旨味と香りを引き出しつつ、全体的にシャキッとした焼きそばが作れないものか。
そもそも、焼きそばの麺は、本当に焼かれているのか。
思案に暮れ、試行錯誤を繰り返しておりましたが、転居の所為で住処のキッチンがIHクッキングヒーターになってから、IHに向いている煮物中心の食生活を送ってしまい、焼き物炒め物から遠ざかっておりました。

しかし、そんな私の元に現れた救世主が、オーブントースターです。
オーブントースターの降臨により、フライパンを使わずに焼きそばを作る、画期的な調理法を編み出すことが出来ました。
オーブントースターで麺を10分ほど焼き、シリコンスチーマーに麺と野菜を入れ、レンジでチンするだけ。
ただそれだけです。
麺をどの程度ほぐしながら焼くか、野菜も少し焼いた方が良いのか、調味料はいつ入れるか等々、今後の研究課題は残っておりますが、野菜から出る水分によって麺が蒸されるので余分な水を加えずに済み、麺を焼いた香りやパリッとした食感が残る、私の目指す「焼きそば」に近づくことが出来ました。

この調理法に気づいた時は、浮力の原理を発見したアルキメデスのごとく「エウレカ!」と叫んだとか、叫ばなかったとか。
皆様が何かの折に「焼きそば」を口にすることがありましたら、「焼きそば」の麺が本当に焼かれているのかを噛みしめながら味わっていただき、吉川が言っていたのはこのことだったのかと思い出していただけると嬉しゅうございます。