お嬢様、お坊ちゃま。
ご機嫌麗しゅうございます。
新年あけましておめでとうございます。
いかがお過ごしでございますか?
櫛方でございます。
いよいよ新年を迎える事となりました。
昨年末の大晦日はカウントダウンもございまして、また使用人の新たな一面が見えたのではないかなと感じております。
私自身も初となるカクテルもございまして、少しでも成長出来るよう尽力して参りたいと存じます。
そんな新年のとある日の事ーーー
新年らしい事を各々がするお屋敷にて、
私と桐島さんは何をしようかと思案しておりました。
隣で名取君は謹賀新年ジグソーパズルを黙々と進めています。
桐島「うーん、餅でもつくかあ!」
彼の放った一言は、使用人を庭に駆り立てました。
やはり冬の寒さは厳しいものがある中、悴む手を擦りながら外に出る我々は、
新年をお祝いすべく…急遽餅つきを行うこととなりました。
〜餅つき大会会場〜
桐「私の餅が食べたいか?欲しければくれてやる。つけ!」
櫛「自分でつくのかつかないのかどっちなんですかそれは」
そんな事を言っている間に着々と準備は進んでいきます。
杵を担ぐ者、そして臼を転がす者もいれば、早くもお皿とお箸を装備した隈川さんの姿もあります。
遠くでは書初めをしていたにも関わらず最終的に羽根つきをし始める者もいれば、お皿に砂糖醤油を垂らし始める隈川さんの姿もあります。
「おや、なんだか面白そうな事をしているじゃあありませんか」
その言葉に振り返る私達。
私達「君は…」
そこには「2021」とデザインされたメガネを装備した月城君がそこに居ました。
(それは見えてるのか?)
(無理矢理にも程があるのでは?)
私達に浮かんだ疑問はそっと心の中に閉まっておく事に致しました。
桐「ではここに炊き上がった餅米があるから、後はつくだけ!水つけて捏ねるのは…そうだね、月城君!任せた!」
月「お任せ下さい、実は私、捏ねるのだけは得意なんです」
よく分からない自信を持つ月城君と桐島さん、そして既に眉を八の字にして不安げな名取君を残して、私はつきあがったお餅につけるきな粉や餡子の支度をすべく1人キッチンに。
櫛「とりあえず…お任せして大丈夫ですよね?」
桐「何が?」
櫛「えっ…うーん、まぁ…はい、じゃあ頼みました」
本当に大丈夫だろうか、と確かに少しばかり不安になりながらも美味しいお餅をつくる為ならばと大豆を挽いていたその時でした。
名「櫛方さぁん!大変です!」バタン
櫛「おっ、これはまた急に…。桐島さんの力が強すぎて臼が埋まった?」
名「それはそうなんですけど、いや…とりあえずちょっと来て頂いていいですか!!」
櫛「えっ…埋まったんだ…まぁ…うん」
嫌な予感というのはよく当たるものです。
急足で戻る私と名取君が見たその餅つき会場の光景は非常に難解なものとなっておりました。
ドスドスドスドス
ウオオ
櫛「ストップストップ、どういう状況なんですかこれ」
月「桐島さんのお餅をつくペースが速すぎるが故に捏ねる隙が無くてですね、無力を悟って天を仰いでいました」
櫛「呼吸を合わせて呼吸を」
桐「張り切っちゃってついね!」フー
月「いやぁ、人はこういう時自身の力の無さを感じますよね」
名「お餅じゃなくて屁理屈を捏ねてましたからね」
月「皆さん、今名取が上手い事を言いましたよ」
冬はこんなにも寒いものだったのかと毎年思ってしまいます。
ちゃんと餅つきを進める事を約束し信頼を預けて、私は再度キッチン戻りとりあえずの下拵えを終えました。
ただ、もうすぐ餅つきも終わるんじゃないかな…と確認しに戻った私は、預けた信頼を返して欲しいなと思ってしまいました。
というのも、
フフフフフ…フフフ…
不敵な笑みを浮かべながら睨み合い、互いに拳を握り合う桐島さんと月城くんがそこに居ました。
櫛「えぇ…いや、なんで腕相撲してるんですか…餅をついて餅を」
桐「ちょっと一旦ね、肘をつけてね、力比べをね」
月「肘はつけてもハンデはつけずに真剣に勝負ですよ」
フフ…フフフフフ…
その姿の周りには心なしかオーラのような何かが見えそうな程、二人とも心が燃え上がっているのが分かりました。
まるで固まりそうなお餅が焦げそうな程。
櫛「えっ…いや、餅は?」
名「うーん、よく分かりませんが勝った方に今年幸運がつくんですって」
勝負は一瞬でございました。
ダァン
月「くっ、負けた…ついてないなあ」
桐「ハハハ、君にはその片膝ついて泥をつけた姿がお似合いだよ!」
ハハハハハハハハ!!!!
櫛「泥とか膝とかじゃなくて、お餅をつこうかお餅を!!!」
名「もう固まってますよ、お餅」
結果的に非常に疲れる事となった新年を祝う餅つき大会は、最終的にただの福男を決める腕相撲トーナメントになったのは…
それはまあ、いいでしょう。
ーーーという夢を見ました。
悪夢にでも取り憑かれたのかもしれませんね。
では今年もまた、是非楽しい年に致しましょう。
このような世の中でございますので、
小さな所に幸せを感じて。
出来るだけ笑いながら。
少しでも力になれるよう、
お嬢様の側でお仕えさせて頂ければ。
願いを込めて、
ハッピー、ニューイヤー。