かくれんぼ

窓を開け放つと、まばたきするより速くわたくしの鼻孔に漂い入るものがございました。
朝のけがれない外気を彩るその香りは、またたく間にわたくしを幸福で満たし、秋であることを知らせてくれました。
目に見えない幸福という価値観は、同じく目に見えることのない香気によってもたらされることもございます。

さぁ、今年もあなたとのかくれんぼが始まります。わたくしが見つけるのが先か、それとも、あなたがどこかへ去っていくのが先か、ひとつ競争とまいりましょうか。
ねぇ、金木犀。

街中を満たす金木犀の香気のように、お屋敷にお帰りになるお嬢様方が、ささやかでも幸福に満たされますように。
伊織でございます。

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迷いねこ

ようやく秋の気配を感じられるようになってまいりました。
蝉の声はすでに遠く弱く、落ち蝉の乾いた腹が聞かせる幻であるかのようです。
秋の虫へ継がれた楽譜は同じ愛を歌っているにもかかわらず、蝉のそれとは対照的に、月と闇とに抱かれてもの悲しさを湛えているように聞こえてまいります。
わたくし個人といたしましては、彼ら秋の虫の声色の方が筆のさまたげにならない分、その思いを応援してあげたい気持ちになるものです。

いかがお過ごしでございますか。
伊織でございます。

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夏の終わりに思うこと・・・

お嬢様、お坊ちゃま、機嫌いかがでございましょうか? 金澤でございます。

暑い日が続きますと秋が待ち遠しく、急に涼しい日が訪れますと夏が名残惜しくも思います。
これからの時期は暑い日もあり涼しい日もありと気温の変化が激しい季節の変わり目へと移ってまいります、どうか体調には十分お気をつけ下さいませ。

さて、お嬢様、今年の夏の日々はいかがお過ごしで御座いましたでしょうか、
素敵な思い出は出来ましたでしょうか?

夏の思い出・・・

私には夏の恒例行事がございます。

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