うき世

お嬢様、お坊ちゃま、
ご機嫌麗しゅうございます。
小瀧でございます。

9月に入り過ごしやすい気温になって参りましたね。

9月といえば「中秋の名月」でございます。
私、月を見る度に思い出す和歌がございます。
それは、

心にも あらでうき世に ながらへば

恋しかるべき 夜半の月かな

要約しますと、「心ならずも、このつらい世の中を生き長らえたなら、きっと懐かしく思い出されるのだろう、この夜更けの月が。」という意味でございます。この世への悲しみを詠んだ和歌でございます。

この和歌は第六十七代の天皇(三条天皇)だった三条院が退位を決意した際に詠まれたとされております。11歳から25年間もの間を皇太子として過ごし、ようやく天皇に即位したかと思えば眼病や火災に悩まされ、権力争いの末にわずか6年で退位を決意したと言われております。

眼病を患っていた三条院にとって、夜更けの月はどのように写ったのでしょうか。

悲しいことや辛いことがありますと、つい俯きがちになってしまうものでございます。
お嬢さま、お坊ちゃまも社会勉強の中で悲しいことや辛いこともあるかと存じます。
そんな時こそ空をご覧くださいませ。
その空がいつの日か、きっと、懐かしく思えるはずでございます。

過ごしやすい気温になって参りましたが、体調を崩されませぬようにお気をつけてお過ごしくださいませ。