Prime

無事今年も新年を迎えました。あけましておめでとうございます。

お琴の音色を聞きながら、梅昆布茶を頂きたい能見でございます。

お嬢様、お元気でいらっしゃいますでしょうか。

年始特有のはんなりとした雰囲気が私は非常に大好きでございます。

いつもの感覚とは何かが違う、切り離された日常と申しましょうか、

普段の慌ただしさがまるで嘘のような街中に心を奪われております。

この雰囲気もあっという間。直ぐに喧騒が戻ってくることでしょう。

さて、お嬢様。今年も勿論行いますよ。能見の冬期講習のお時間です。

題して、新年スペシャル「年号を素因数分解してみよう」のコーナー!!

「数字なんてもう見たくもない…」「新年から気分が底を尽きそう…」

そう仰らないで下さい。是非、本日は数字とお友達になりましょう。

では、早速僭越ではございますが、参りましょう。

2018

= 2 × 1009

……!?

何なのでしょう。この感覚は。素直に喜べないと心が嘆いております。

恐らくお嬢様も同じ感情を抱いていらっしゃるのではないでしょうか。

「何の驚きもないしつまらない…」「やっぱり数学って面白くない…」

お嬢様の心の声が私の脳内に……!! 私は数学者として失格なのでは……。

いや、ここで諦める訳には参りません。光明が差す解答が見つかるはず。

何とか工夫を凝らして、お嬢様に数学の素晴らしさをお伝えしなくては。

今年は和暦で申し上げると平成30年。そして、一年の始まりし月の睦月。

全シナプスがリンクし、最後のピースがことりと嵌った音が致しました。

「3001」は……。

……素数。

お嬢様。この美しき一年を、どうか麗しくお過ごし下さいませ。

素晴らしき一年になりますように私も毎日お祈り申し上げます。

それでは、今年もよろしくお願い致します。

能見

Brilliant

冷たい木枯らしが龍の息吹のように荒れる季節が到来しました。

ジングルベルを目覚まし替わりに起床したい能見でございます。

お嬢様、お元気でいらっしゃいますでしょうか。

師走という文字通り、ほんの少し慌ただしい毎日でございますね。

移ろいゆく街中も普段より浮足立つような雰囲気を肌で感じます。

吐息が白く、冬の寒空にまるでわたあめのように消えてゆきます。

オリオン座が見えます。あれはシリウスでしょうか、綺麗ですね。

今年を改めて振り返りますと、本当に様々な出来事がございました。

もう言葉では伝えられないほど、沢山の思い出が私の中にあります。

それは決して御伽の国のような素敵で華々しい物語ばかりではなく。

ただ申し上げるならば、後悔のない一年であったと感じております。

そんなことを考えながら、使用人寮の廊下を一人で歩いております。

時折、寮の一室から使用人達の談笑する声が聞こえて参りました。

カウントダウンパーティーの準備をしているのでしょうか。はたまた、

お鍋でも囲んでいるのでしょうか。楽しそうで何よりでございます。

自室の前まで辿り着き、蝶番の軋む音を聞きながら扉を開けました。

凛と静まり返る室内。暗い空間に、カボチャ型のランプを灯します。

皴にならぬよう燕尾服をハンガーに掛け、ベッドへ身を投じました。

ふと横に目をやるとリボンを掛けられた箱が視界に映り込みました。

「こんな箱、うちの部屋にありましたっけ?」

手のひらサイズの小さな箱。私に見覚えは全くございませんでした。

当家の紋章が描かれております。おそるおそるリボンを解きました。

そんな見知らぬ箱の中に入っておりましたのは――

それは本当に綺麗な宝石。

蒼く蒼く光放つ、サファイア。

お嬢様、私から今年最後のご報告です。

私、能見はファーストフットマンに昇格致しました。

このような命を授かりましたこと、光栄に思います。

ありがとうございました。そして、これからも。

能見

Sommelier

紅葉が美しく色鮮やかに街を彩る季節が今年もようやく到来致しました。

はらはらと流れゆく落ち葉を後ろ髪で表現してみたい能見でございます。

お嬢様、お元気でいらっしゃいますでしょうか。

早速ではありますが、お嬢様にご報告しなくてはならないことがございます。

私、能見は2017年度日本ソムリエ協会呼称資格試験に、無事合格致しました。

目指すべき道として、ずっと自身の中で固く掲げていた目標でございました。

このように、お嬢様に吉報をお伝え出来ましたこと、誠に光栄に思います。

一年の間背負い続けていた感情が下りて、今は安堵の気持ちでございます。

張り詰めた緊張が解れ、純粋にワインを美味しく頂けるようになりました。

しかし、ようやくスタートラインに立ったばかりです。より勉学と経験を積み、

お嬢様が当家の誇りと思えるソムリエになれるように日々研鑽して参ります。

そして、11月23日(祝)より「能見おすすめワイン」のご提供を開始致します。

僭越ではございますが、赤と白どちらも一銘柄ずつご用意させて頂きました。

別冊のお品書きにも私のおすすめワインの詳細を記載する予定でございます。

私の気持ちをお受け取り下さいませ。お嬢様の毎日の彩りになれますように。

長い道のりを越えられたのも、日々支えて下さるお嬢様の御陰でございます。

「ワインの世界の扉を開き、ちょっぴり大人な世界を楽しんで頂きたい……」

「このワインをお勧めしたら、貴女は喜んで下さるかな……」

そんな感情が私の決心をより強く、孤独な闘いの背中を押して下さいました。

ありがとうございます。お嬢様の笑顔のため、私はずっと頑張り続けます。

こんな不束者ではございますが、改めてこれからもよろしくお願い致します。

あと二日で提供日。私の胸中に存在するワクワクが止まりそうもありません。

ティーサロンにてご感想を伺えること、私も心待ちにしておりますね。

能見

The Horizon

梅雨も終焉を迎え、夏へとアクセルを踏む季節になりました。
近頃めんそーれな気持ちを味わいたくなる能見でございます。
お嬢様、お元気でいらっしゃいますでしょうか。

私が毎年心待ちにしております夏が、今年もやって参りました。
この季節だけは、幼少の頃と変わらぬ感情の波が押し寄せます。
普段とは違う、別世界に迷い込んだようなワクワクする気持ち。
ふとした瞬間に消え行ってしまいそうになる、憂わしい気持ち。

全ての感情を合算して、夏は私に沢山の情緒を運んでくれます。
日本の四季折々の魅力をよくご存知のお嬢様はこう仰るでしょう。
「夏は暑いし、むしむしするし、日焼けもするし、普通に嫌。」
私、想像するだけでとても悲しい気持ちになってしまいました…。

夏のレクリエーションといえば、やはりバカンスが欠かせません。
トロピカルフルーツを存分に使ったカクテルのグラスを傾けながら
水平線に沈みゆく黄昏時の夕陽を、飽きるまでずっと見ていたい。
素敵な夏の思い出を彩る、まるで映画の1シーンでございますね。

さて、お嬢様。ずっとずっと遠くにありそうな水平線の向こう側。
水平線までの距離は、どのくらいかご存知でいらっしゃいますか?
この算計問題を、私からお嬢様への夏休みの宿題と致しましょう。
水平線までの歩き方、この夏にお勉強するのも素敵だと思います。

【 地球の半径は6371 km 】
【 クロトンの哲学者 】

以上の言葉を参考にしていただけますと、よろしいかも知れません。
ちょっぴり大人な至高の、そして思考の夏をお過ごしくださいませ。

能見