カクテルサロンについて … 及び、挑戦状。

敬愛せしお嬢様へ

いよいよ当家カクテルサロンのお申し込み開始当日となりました。
初のイベントとなりますゆえ、多々お見苦しい点もあるやもしれませぬが、どうかお楽しみ頂ければ幸いでございます。

つきましては先んじて、いくつかカクテルサロンについてのご案内を差し上げておきたく存じます。
ご参加お申込みに、お迷いの方がおられましたら、ご参考として頂ければ幸いでございます。

・当日は立食形式のパーティーでございます。お時間も長めでございますので、足がお疲れになるような履物などは避けて頂いたほうがよろしいかと存じます。
・サロンにてご用意させて頂きますカクテルのラインナップは、追ってお知らせもさせて頂きますが、プログラムに沿ってオリジナルカクテルをお配りする形式でございます。
・手の空きましたバーテンダーが、グラスの空いてしまったお嬢様の為にフリードリンクをご用意するスペースもございますが、イベント中などそれがかなわぬ状況もございます。また、フリーオーダーにてカクテルをご用意することは、イベント初回でございます今回は、まだ難しいかと思われますので、どうか予めご了承くださいませ。
・ノンアルコールのドリンクも、フリードリンクにてご用意いたします。
・サロンのプログラム進行に伴い、簡単な軽食もご用意しております。お手元の小皿にお取り頂けるようなスナック・フィンガーフードを中心にご用意しておりますので、お食事に合わせてお楽しみくださいませ。

他、ご質問などございましたら、何なりとお寄せ頂ければと存じます。
執事・フットマン一同、お嬢様方にお楽しみ頂けるよう努力を重ねてイベントのご用意を務めますゆえ、どうか是非ともご参加ご検討くださいませ。

さて、以下は時任の私信でございますが、どうぞご寛恕くださいませ。

人にはそれぞれの志した道というものがございます。
日頃どんなに柔和な者でも、争いを嫌う温厚な者であっても、決して譲れぬ自分の道というものがございます。

一度はシェーカーを手放した身でこれを申し上げるのは不遜かとも思いますが、時任にとって譲れぬものの一つは、バーテンダーとしての誇りでございます。
大旦那様のお計らいにより、再び手にすることとなったシェイカー。再び袖を通すこととなったバーデンダーベスト。

「カクテルに法律はない」
そう言葉を残したバーテンダーがおります。私も生徒たちに最初に教える言葉の一つでございます。
我々バーテンダーという人種は、色々なルールに縛られているようでいて、その実とても我儘な生き物たちです。
自分で定めたルール、自分が従うと決めたルール以外には決して縛られない。
誰よりも美味しいカクテルを作る。誰よりも心のこもったサービスを提供する。忠実に師から得た教えを守る。
一人一人が心に抱くルールは異なれど、確固たるルールをそれぞれに持ち、決して人のルールに縛られない、それがバーテンダーというものです。

時任のルールはただ一つでございます。
当家のバーテンダーとしてお役目を頂いた以上、決して外の世界では味わえないようなカクテルをご用意する。
決して誰にもカクテルの品質においては負けない。
たとえ相手が一流と言われるホテルバーのバーテンダーであろうとも、歴史あるバーのチーフであろうとも。

その信念を貫くにあたり、私は、贖いきれぬ大恩と敬意を持ちながらも、挑み乗り越えねばならぬ方が目の前に居られることに、気が付いたのでございます。

豪徳寺執事。挑戦申し上げます。

当家バーテンダーの誇りに賭け、7月27日カクテルサロンの場において、挑戦させて頂きとうございます。
ちょうど、大河内や天河たちが『カクテルコンペティション』としてカクテルの競作を行う予定でございます故、その後のエキビションマッチとして、互いにサロン用のオリジナルカクテルを作成し、お嬢様方の投票により勝敗を決する形ではいかがでしょうか?

そして。僭越とは存じながらも…もし、もし私が勝利を収めることができましたならば。
ひとつ、叶えて頂きたい願いがございます。

使用人としての分を多大に超えた願いではございますが、その場において、その時が来たならば、大旦那様と豪徳寺執事に申し上げたく存じます。
どうぞ、お含みおきくださいませ。