日誌

冬の気配がいよいよ深まり、街の灯がひと際きらめく季節となりました。

吐く息が白くほどけるたび、十二月の静かな厳かさが胸の奥へと染み入り、ティーサロン内にも柔らかな緊張と高揚が満ちております。

 

本日の日誌には、心の底から湧き上がる大切な思いを記しておきたく存じます。

毎年、能見と共に心を尽くして創り上げている“年に一度だけの雨の御堂筋”が、今年もいよいよ二十二日にお披露目の日を迎えます。

 

この一杯は、単なる一杯ではございません。

一年に一度だけ、たった一度の季節に向けて、色の深さ、香りの立ち上がり、舌に残る余韻、そして氷が奏でる微かな響きまでも丁寧に確かめながら、何度も試作を重ねて形づくられていく、特別な存在でございます。

 

今年もまた、能見と肩を並べて準備に臨めたことが、私にとって何よりの喜びでございました。

同じグラスを見つめ、迷ったときには互いの言葉がそっと背中を押す。

淡々とした日々の中にあって、この“一年に一度のカクテル”は、まるで冬の宝石をふたりで磨き上げているような時間でございます。

ふとした瞬間に思いが重なり、「これが今年の一杯だ」と静かな確信が胸に灯ったあの時の手の温もりは、今でもはっきりと思い出せます。

 

この特別な一杯を、お嬢様にこそお召し上がりいただきたく存じます。

グラスを傾けたときにふわりと立つ香りが心を包み、味わいの余韻が師走の慌ただしさをそっと和らげ、お嬢様の日常に穏やかな灯りを添えることができましたら――それこそ、この一年に一度のカクテルが存在する理由でございます。

 

二十二日は、一年の締めくくりにふさわしい特別な一日。

どうかその日、お嬢様がこの一杯と過ごされる時間が、冬の記憶に静かに寄り添う優しい光となりますように。

 

お嬢様がグラスにそっと触れられるその瞬間を、胸の奥に確かな高鳴りを抱きながら、お待ち申し上げます。