笑顔

寒さ厳しき日々が続いておりますが、皆様、お健やかでいらっしゃいますか?
私が皆様方のお世話をさせていただくようになって、そろそろ三ヶ月を過ぎようとしていますが、つい先日のことでございます。あるお嬢さまから、このようなお言葉をかけていただきました。

「最近、とてもよい笑顔を見せるようになったわね」
そのお誉めの言葉は、もちろん、たいへん光栄に存じました。ですが、おもわずはっとさせられたのでございます。
思い返せば、執事の任を仰せつかって最初のうちなどは、右も左もわからず、ただただ気ぜわしく動きまわっておるばかりでございました。
当然ながら、緊張と焦りで表情も強ばり、もしやすると怖がらせてしまったお嬢さまもいらっしゃったことでしょう。
いやはや、たいへんなご無礼を働いてしまいました。誠に申し訳ございません。
しかしながら、最近ようやく仕事の要領も覚えて、少しずつゆとりも出てきたのでしょうか。やっと自然な笑顔を浮かべられるようになって参りました。それが、お嬢さまにも通じ、きっと先のお言葉につながったのかと存じます。
まだまだ、未熟な司馬でございます。
もし私の表情が、またしても強ばっているようでしたら、どうかご遠慮なさらずご指摘、ご指導ください。
いつも笑顔を絶やさず、皆様方に心の底からおくつろぎいただくのが、使用人としての矜持であり、義務であると存じますので・・・。
それでは、今回はこれで失礼いたします。
どうぞ、皆様方のお顔にも、いつも楽しげな微笑みが浮かんでいらっしゃいますように。