千変万化の水しぶきの如く

お嬢様、ご機嫌麗しゅうございます。

かねてより大旦那様から仰せつかっておりました、当家の歌劇団を支える仕事にて、すでにご尊顔を拝させて頂いた機会もございましたが、
この度あらためてお屋敷にてドアマンを務めることとなりました、香川でございます。
光栄にもこちらの日誌を綴る機会を頂戴致しましたので、僭越ではございますがご挨拶させて頂きます。

今後もお嬢様方にご満足いただくため、できる限りのことを尽くしてまいりたいと存じます。

この度のドアマン拝命もその一つ。
各諸先輩方のあたたかいご指導のもと、節分の朝より独り立ちを致しました。

厳しい修行の成果を今こそとの想いを胸に門の前に立ち、
怪しいものが来ようものならただでは置かぬと思いつつも、
内心では、やれ万が一のために豆を持っておれば良かったとかあれこれ考えておりましたが、
ご帰宅されるお嬢様方のあたたかいまなざしや微笑みに励まされ、
なんとか第一歩を踏み出すことができました。

しかし突然の、「鬼はァ~うち!!」という嘉島執事の声には、
すわ何事ぞ!と肝を冷やしましたことを白状致します。

ご別宅にご出発されるお嬢様方をお見送りするために、「福は外」とお伝えしていたと聴いて胸をなで下ろしはしましたが、
今後はどのようなことがあってもうろたえることのないよう、さらに修行を積んでまいる所存でございます。

あらためましてこれからも、何卒よろしくお願い申し上げます。

まだまだ寒い日が続きますので、くれぐれもお体をおいとい下さいませ。
では本日はこの辺で失礼いたします。