敬愛せしお嬢様へ
まだまだ朝晩は吐く息も凍るような季節。
御身くれぐれもお風邪など召されぬようご自愛のほどお願い申し上げます。
こう冷えておりますと、どうしても出不精になってまいりまして
お暇をいただいた日は書棚のそばで過ごすことも多くなってしまいますが
いかんせん、個人の書棚でございますとお屋敷の書庫と違って限りもございまして
先日、新たなインスピレーションを求めるという理由を己に言い聞かせながらお外に出てまいりました。
足を運びましたのは東京。とある大学の資料展示博物館でございます。
長きにわたる研究と学識の一部を公開していらっしゃるとのことで
興味を惹かれふらりとお邪魔してまいりました。

当時の大学講堂を再現したスペースを抜け、少年心くすぐられる明治の機器など観覧しながら進みますと
生物・文学・化学・美術やデザインに至るまで、なんともあらゆる領域の展示がなされており、
しばし時を忘れるほど魅入らせていただきました。

こと、生物のコーナーにおいては古今あらゆる生物の骨格標本や、進化の歴史などが莫大なスペースにわたって綴られており、本だけでは得られない知識があるのだと改めて思い知らされました。
鉱石や植物のコーナーも圧巻の情報量であり
デザイン・美術のコーナーでは、本来大学の蔵書であろう貴重な美術書・デザイン書を閲覧でき、
某テーマパークではありませんが、本気で全てを見ようと思うと一日で済まないのではないかと思う、実に重厚な展示でございました。

お昼過ぎにお邪魔したはずが、気づけば閉館時間の夜。
後ろ髪を引かれる思いで退出し、その後立ち寄ったバーにてハイボールを傾けている間もずっと余韻に浸っておりました。
冷える日々が続きますが、お嬢様におかれましても
時にはこういった地へお出掛けなさるのもお勧めにございます。
文字どおり塵が積もるように、先人たちが日々を重ねて遺された
知識の巨山を垣間見た一日でございました。
そんな想いを反芻しつつ家に戻りましたら
猫が自力でヒーターのスィッチを入れていて
身近にもあった生物の進化に愕然としつつ、危ないものはコンセントを抜いておこうと心に誓いました。