新たなる年に―。

司馬でございます。
皆さま、お健やかでいらっしゃいますか?
遅ればせながらではございますが、お屋敷で申し上げられなかった方々には、この場を借りまして、謹んで新年のご挨拶をさせていただきます。
年始は楽しくお過ごしあそばされましたでしょうか。
私は、と申しますと年越しの宴の疲れからか、元旦は寝正月を決め込んでしまいました。
執事といたしましては、少々怠惰でございますね。反省しきりでございます。





さて、今年は寅年でございます。
虎、といえば私がつい思い出してしまいますのは、「日の名残り」という小説でございます。
名高い作品でございますので、お読みになられた方も多いと存じます。
古風な、常に品格を追い求めてきた執事のスティーブンスの回想で綴られる物語でございますが、そのエピソードの一つとして、彼の父が語る話がございました。
主人とともにインドの屋敷に赴いた執事が、ある時、食堂に虎が入り込んでいるの見つけてしまいました。その執事は、なんら慌てることなく猟銃で虎を退治すると、
「―夕食はいつもの時刻でございます。そのときまでには、最近の出来事の痕跡もあらかた消えていると存じますので、どうぞ、ご心配なきように願います」
と、申し上げたそうでございます。
いやはや、執事として、なんと理想的な振る舞いではないでしょうか。
この話を思い出すにつけて、私は自分自身を振り返ってみざるをえません。はたして、お嬢さま方の前で、これほど品格と自制に満ちた振る舞いができておりますかどうか―。
いまだ至らぬ私でございますが、さらにお嬢さま方の意に添えるべく、理想的な執事を目指したい、と新年を迎えて想いを新たにいたしました。
本年も、なにとぞよろしくお願いいたします。


では、今回はこのあたりで失礼させていただきます。