お嬢様、奥様、お坊ちゃま、旦那様、ご機嫌麗しゅうございます。久保でございます。
お嬢様のお席の椅子を引くたびに、つい考えてしまうことがございます。
それは「立ち上がる時の掛け声」についてです…
スポーツの世界では、力を込める瞬間に雄叫びを上げる選手をよく見かけます。声を出すことで、より大きな力を発揮できることもあるそうです。
ならば!!
人類が日常で最も多く行っているであろう運動?「椅子から立ち上がる」にも、最適な掛け声があるのではないでしょうか。
ここからは、私による勝手な考察でございます。
まず王道の「どっこいしょ」。
長い歴史と実績を誇る、立ち上がり界の大ベテランです。
しかし、よく考えてみると不思議です。
「どっこいしょ」。
なんとなく、もう立った後のような響きがございませんか?
声を出した時点で、すでに一仕事終えたような顔をしています。
続いて
「よいしょ」。
こちらは軽快でございますね。
ただ、少々勢い任せなところがございます。
「ふんっ!」は短距離型。
「ふーーーんっ!」は重量挙げ型。
「さて」は、立つというより何かを始めそう。
「よっ!」に至っては、もう完全に気合いで押し切っています。
では、科学的……ではなく、久保的に考えた究極の一声は何なのか。
私が辿り着いた答えは、、、
「たちっ!」
です。
理由は単純。
「立つ」という動作に「立ち」と直接言い聞かせる。
これほど立つことに忠実な言葉もありません。
「立て」では少し命令口調。
「立とう」では、まだ迷いがある。
「立ちっ!」なら、決断と瞬発力が同時にあります。
しかも「立ち」と「ピシッ」の中間のような響き。
これは強い!!
実際に試してみました。
「たちっ!」
……立ちました。
これは有力です。
さらに考察を進めると、「すっっく!」も捨てがたい。
こちらは、声そのものがすでに立ち上がっております。
「すっっく!」と言った瞬間に、身体まで「すっっく!」となりそうです。
ただし、周囲から見れば何を言っているのか分かりません。
そこが最大の弱点です。
結局のところ、「どっこいしょ」も「よいしょ」も「たちっ!」も、それぞれに個性がございます。
そして思えば、「立つ」という言葉は実に奥深い。
志を立てる。
予定を立てる。
腹を立てる。
噂が立つ。
人生、何かと「立つ」ことばかりでございます。
身体を立たせる声もあれば、気持ちを立たせる言葉もある。
そう考えると、私たち使用人がお嬢様に掛ける言葉も、ただの言葉ではないのかもしれません。
笑顔になれる言葉。
元気になれる言葉。
明日も頑張ろうと思える言葉。
そんな一言で、誰かの気持ちが「すっ」と立ち上がることがある。
……などと、椅子を引きながら「どっこいしょ」について考えていたら、いつの間にか話がずいぶん立派になってしまいました。
本日の考察、ここまで。
ちなみに私は、閉館後に椅子から立ち上がる際、
「たちっ!」
ではなく、
「よいしょ……」
でございました。
考察と現実は、なかなか一致しないものですね

