お嬢様、百合野でございます。
誰かに支えてもらった記憶というものは
不思議と、何でもない日に思い出すものでございます。
上手くいかない日に掛けてもらった言葉。
自信をなくした時に
隣にいてくれたこと。
こちらが笑えない時に
代わりに笑ってくれたこと。
その時は必死でちゃんと「ありがとう」を返せていたのかも分かりません。
けれど、いただいた優しさというものは
案外ずっと心の中に残っているものでございます。
私は時々…
優しさにはたどり着く順番があるのかもしれないと思います。
誰かに灯してもらった灯りを
ずっとその人に返そうとしなくてもよいのかもしれません。
その灯りで少し前を向けたなら
今度は自分が、誰かの足元を照らせばいい。
そうして巡り巡って
いつかまた大切な人のところへ戻っていくのかもしれません。
優しさとはもしかしたら、そんなものなのかもしれません。
いつも誰かを励ましている人が
いつだって一番元気とは限りませんので。
いつも灯りを持って歩いている人だって、たまには誰かに灯りを預けて
両手を空っぽにして歩いてもよいのでしょう。
そういえば
森に住む熊は冬になると
暖かくなるまでじっと眠るそうでございます。
何もしない時間も。
立ち止まる時間も。
きっと次に歩き出すために
必要な時間なのでしょう。
時折灯りを消す事で、他に灯されていたあかりに気がつく時もございます。
今まで何度も灯りを持ってもらいましたから。
たまには私が、灯りの番をする日があってもよいでしょう。
お嬢様も優しさに疲れてしまったら少しおやすみくださいませ。
灯りは私が持っておりますので。



