ビュッフェという言葉はいつごろから日本で市民権を得たのでしょうか。
グラスに注いだオレンジジュースの色彩を眺めている能見でございます。
お嬢様、お元気でいらっしゃいますでしょうか。
蝉時雨もまだまだ聞こえぬころ、夏を迎える前の日のことでございます。
梅雨時期のある晴れた日、山岡とともに山梨のワイナリーに赴きました。
ともに、と申しましょうか、わたしが一方的に誘ったと申しましょうか。
快くついてきてくれることになりまして、馬車へと乗り込んだ次第です。
山梨という土地へは、十年前にも一度、足を運んだことがございました。
ソムリエを志すにあたり、日本のワインを深く知ろうという思惑でした。
当時はまだ右も左もわからないころ。勇気を出したテイスティングでも、
比較してようやくそのワインの輪郭がうすぼんやり感じられる程度です。
十年前と現在。二本の甲州ワインがセラーに並んでいる光景を拝見して、
歩んできた時間とその道中にあった、さまざまな物語に想いを馳せます。
ひぐらしの声が窓の外から聞こえ、そろそろ夕陽が空を染めるころです。
絡まった思考を解きほぐすため、散歩へ出かけることにいたしましょう。
夏の疲れが押し寄せる、季節の変わり目でございます。
どうかお身体に障りのございませんよう。
能見
