隈川でございます。
此度は自身の体調不良で催しを延期にしてしまい、誠に申し訳ございません。
こうしたときに普段元気に屋敷にお仕えし、ステージに立てていることがどれほどありがたいことかを思い知ります。
申してしまえば私は一介のフットマン、ティーサロンで客人をもてなしお茶を注ぐのが務めです。本邸の使用人と異なり、お嬢様のご生活のすべてを知っているわけでもございません。
そんな身分の者がいっちょ前に落ち込んでいるのか、なんて言われてしまいますと返す言葉もございません。
それでも、すこし想像すればわかります。お忙しいなかで、我々の催しにお顔を見せてくださることがどれほどご労力のかかることか。
社会勉強の日取りをご調整くださり、期待を寄せてお召し物を選んでくださり、プライベートのなかでのご都合だってございましょう。
主人が我々のような一介の使用人の用意する催しの為にここまでしてくださっている。そんな身に余る幸福の機会をひとつ取りこぼしてしまったのです。
此度の延期、やはり寂しゅうございます。私はどれほど忙しくとも執事歌劇団の催しがひとつでも多いと嬉しいのです。
それらを通じてひとつでも多く貴方様の笑顔のきっかけになることができるのであれば、それが私の生き甲斐です。
本来、影に与するべき使用人を照らしているのは舞台の証明ではなく、そのご表情です。
恥を承知で申しますが、今回の催しは延期になってしまいましたが、どうか挽回の機会をくださいませ。
必ずや「待っていてよかった」と思っていただけるステージをご用意いたします。
お目にかかれていないときにも貴方様は我々の敬愛なる主人です。
隈川


