バトンの先に

お屋敷の玄関先でも鈴虫の声が聞こえるようになってまいりましたが、お嬢様方におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。
今年の夏は地球の裏側からの知らせに日々一喜一憂致しました香川でございます。

勝利に沸く日も意に沿わぬ結果の日も、どちらにせよ最終的には目に熱いものをこらえられぬ瞬間が待っている。
それがこころを引きつけてやまない魅力なのかもしれません。

どのドラマにも筋書きはないはずでございますが、その中でも特に緻密に計算された上でのメダル獲得を感じた競技がございました。

それは男子400メートルリレーでございます。

4人の走者がそれぞれ100メートルをバトンでつないでいく。
この種目は100メートル走が速いことが勿論勝利に近いはずで、短距離のトラック競技では日本から出場する選手がメダルを獲得する日が来るとは、正直想像すらしていなかったのが本音でございました。

今回もリレーメンバーの誰一人として100メートル走では決勝に進んでいないにも関わらず、その4人での銀メダル獲得。

しかしこれは偶然の産物ではなく、取るべくして取ったメダルだったように存じます。

個々の潜在能力が高かったということも勿論あろうかと存じますが、適材適所の配置に加え、チームとして戦うという意識とリレーならではの巧みなバトンワークがあったからこそでございましょう。バトンの受け渡しにかなり多くの時間を割いて練習を重ねたとのことでございます。

各国の個性も出てくるのかもしれませんが、リレーの練習を厭う方もトップクラスの選手といえどもいらっしゃるようでございます。
チームで何かを取り組むということの、まさにモデルケースを見たような気がして、非常にこころを動かされました。

皆のチームワークが求められることは、お屋敷でも言えることかもしれません。
使用人チーム全員でのこころを込めたバトンワークの先に、お嬢様方のキラキラの笑顔というゴールを求めて、これからも走り続けて参りましょう。

お早いお帰りを、お待ちしております。