お嬢様、奥様、お坊ちゃま、旦那様、ご機嫌麗しゅうございます。
久保でございます。
時間とは目に見えぬのに、誰よりも厳格な監督のような存在でございます。
ほんの数分遅れただけでも叱責し、どんなに早く準備を終えても労いの言葉はかけてくれません。
しかも、その監督は休暇もとらず、夜中であろうと早朝であろうと、律儀に秒針を打ち鳴らしております。
本当に働き者ではありますが、もう少し柔軟に接していただきたいものでございます。
けれども、もしこの監督が存在しなかったらどうなるでしょう。
ティータイムが始まる時間は曖昧になり、お嬢様が紅茶をいただくつもりが、気づけば真夜中。
紅茶の代わりに夜食を用意する羽目になるかもしれません。
そう思うと、この厳しい監督も、実は陰ながら秩序を守る守護者なのだと感じます。
時間は時に私たちを急かし、時に待たせ、思うようにはならない存在でございます。
けれど、その不自由さゆえに、ひとときの笑顔や言葉はより鮮やかに心へ刻まれるのでしょう。
もし永遠に続く午後があったなら、お嬢様との会話も、きっとただの雑談になってしまう。
限られた中で交わされるからこそ、その瞬間が素敵に輝くものだと思います。
ただ、それでもやはりお願いできるのであれば、清掃の最中だけはこの監督に小休止していただきたい。
掃除機と格闘している間の一分は、一時間に等しく感じられるのです。
その一方で、お嬢様が笑顔を見せられる瞬間は、ほんの一秒でも羽のように軽やかに過ぎ去ってしまいます。
かくなる上は、時計の監督を味方につける秘策を編み出すしかありません。
何か秘策を授けてください。
なお、9月16日には冴島と共に、ささやかながら特別なカクテルをご用意する所存にございます。
どうぞそのひとときも、時を忘れてお楽しみいただけますように。