6月26日には紅茶サロンが開催されます。
今回はナショナルクリームティーデーにちなみ、スコーンとクロテッドクリームが主役のクリームティーをお楽しみいただこうと企画しております。
伊織でございます。
イギリスで紅茶と言えばミルクティー、というのはお嬢様もご存じの通りです。
英語ではミルクティーとは言わず「Tea with milk」と称します。
ミルクティーに関して長く論じられているのが「ミルクが先か、紅茶が先か」という問題でございます。
初めにカップに入れるのは、はたしてどちらが正解なのか。
この議論について少しだけ掘り下げてみましょう。
議論の前に文化を振り返ります。
イギリスには中国からの磁器=chinaが輸入され、もてはやされました。
遠い国からの輸入品である磁器は高価ではありますが、耐熱性に優れるという特徴をもっておりました。
しかしそんなものを使えるのは貴族などのお金持ちだけです。
一般庶民は紅茶が飲めるようになっても、高級な磁器は使えません。熱に弱く、割れやすいカップを使っておりました。
こうしたところから、庶民の間では「ミルクを先に入れておくことで急激な温度上昇を防ぎ、カップを割れにくくする」という方法が採られることになります。
対照的に高価な磁器が使える人たちはその必要がありませんし、そんなことを問題にすること自体がありませんでした。ですので、先に紅茶を注いでもなんら問題はありません。
やがてこの差は「ミルク先入れ=庶民」、「紅茶先入れ=お金持ち」のような階級意識と結びついていきます。
後になると、科学的なアプローチでどちらを先にカップに入れるかの違いを検証することになりました。
ミルクを先に入れた場合、ミルクに含まれるタンパク質であるカゼインの変質が穏やかになります。
カゼインは紅茶に含まれるタンニン(渋み成分)と結びつく性質があります。
低温のミルクに紅茶を注ぎ入れることで温度変化が緩やかになり、カゼインとタンニンの結びつきが安定し、全体的に味がまろやかに仕上がります。
対してミルクを後から入れた場合、高温の紅茶にミルクが入ることでミルク自体の温度が急激に上がりやすく、カゼインの結合力に影響を及ぼすのだそうです。
結果タンニンとの結びつきが弱くなり、紅茶の渋みを感じやすくなり、また風味もミルク先入れとは変わります。どちらかと言えば紅茶の風味がより引き立ちます。
なんて違いはありますが、その際はごくささいなもので、正直わたくしはあまり気にしません。後からミルクを入れた方が紅茶に対してのミルクの配分がしやすいなと、思う程度です。
科学的なアプローチからすると、ミルク先入れの方が奨励されるようですが、紅茶を楽しむのに堅苦しい決まり事などいりません。
小説「1984」で知られるジョージ・オーウェルも紅茶に関してはかなり厳格な意見を主張したのは有名ですが、同時に「多くの人が反対するだろう」という趣旨の言葉も記しております。
紅茶は趣向品です。
ご自身がおいしいと感じる方法が正解です。
それが他人と異なった場合は、ぜひ互いに飲み比べたり語り合ったりしてみてはいかがでしょうか。
これもまた紅茶が好きだからこそできることです。