春と思い出

お嬢様ご機嫌麗しゅうございます。

綾瀬にございます。

 

4月でございますね。新生活とされる時期でございますがお嬢様は何か変化はございましたか。
実を申しますと我々はアニバーサリーのお祝いがひと段落いたしまして落ち着く時期なのですが、きっとお嬢様はお忙しい事でございましょう。
いつでもお役に立てるよう備えております故、どうぞお気兼ねなく我々を使っていただければ幸いでございます。

 

さて昨年は桜が満開になった途端に寒い日々が続きまして、満足にお花見ができなかった記憶がございます。
今年こそはと思っておりますがさてさてどうなることやら。
自然の移ろいに干渉する事などできようはずもございませんから、少しでも良いタイミングを祈るだけですね。
ふと覚えている中で最も綺麗だった桜はいつだったかと考えてみると私は中学の入学式だったような気がいたします。
正門までの歩道を桜が覆っておりそれはそれは美しゅうございました。
中学生の頃の事など何年も思い出しておりませんでしたのに懐かしゅうございます。
1つの思い出から芋づる式に記憶が蘇って参りまして、何だかセンチメンタルな気分になってしまいますね。

是非お嬢様のベスト桜シーンも教えて下さいませ。
ティーサロンで聞ける事を楽しみにしております。

メッセージカードのご依頼につきまして

ご機嫌麗しゅうございます、お嬢様、お坊ちゃま。
執事喫茶スワロウテイルの諏訪野でございます。

当家フットマン小早川へのメッセージカードのご依頼は4月20日20時迄とさせていただきます。

尚、本人からの手渡しが叶わぬ場合もございます。
誠に恐縮ではございますが、ご了承のほどよろしくお願いいたします。

ご挨拶

ご機嫌麗しゅうございます。
小早川でございます。

突然のご報告となってしまいましたが、私小早川は外の世界をもっと知るために世界を旅してまいります。

お屋敷での日々やお給仕は私にとって大切な、楽しいことでもございますが、お嬢様お坊ちゃま方にもっと楽しい時間をお過ごしいただくために様々なことを学び身につけたいという所存でございます。

お屋敷でのかけがえのない思い出や、ひときれのパン、ナイフ、ランプ、大旦那様の熱い想い……そんな様々なものをかばんに詰め込んで旅に出てまいります。

出発まで時間はまだございます。
それまでの時間は変わらずティーサロンでのお給仕や、馬場の整備に努めてまいります。

私は旅立ちますが、お屋敷はこれからも変わらずそこにございます。
社会勉強の合間にごゆっくりお過ごしいただける時間をお楽しみくださいませ。

小早川

ご機嫌麗しゅうございます。
米澤でございます。

すっかり春の陽気でございますね。
桜も葉っぱをつけてきており、
すぐに初夏を迎えることでございましょう。

“春は出会いと別れの季節”という言葉が世間では浸透しております。
明るくもどこか寂しい言葉だなあといつも感じておりましたが、ふと気になりどなたかが言い始めた言葉なのか気になり調べましたが、特に見つかることはございませんでした。

有名な歌手の方の曲の歌詞で
「春なのにお別れですか」というワードがございます。
この歌詞からやはり日本の方は春というものに明るく美しい印象を抱きつつも、寂寥感も感じている不思議な季節だと感じているのではないかと考えておりました。

日本では同じ春でも3月には卒業式がございますが、
4月には入学式・入社式が多くございます。
こういった慶事が春に行われることによって人々は春は出会いと別れの季節だと感じ、口を揃えて皆おっしゃるのでしょうね。

私はこの日誌を書きながら、
この春がお嬢様、お坊ちゃまにとって素敵な出会いがある季節でありますようにと願っております。

もし別れがあったとしてもこの先、あの時の別れがあって良かったと前を向けるような別れであることを願っております。
出来ることならどんな形であれ、あまり別れというものは経験したくないものでございますけれども…。

話は変わりますが、
この日誌をご覧になられた数日後には先日の日誌でも書かせていただいた荒木田とのカクテル「IROHA」を振る舞っていることでしょう。

いろはという言葉はいろは歌の最初の3文字で使われていたり、物事の初歩や基本を意味する言葉でもございます。
このカクテルが少しでも貴方が前に進む初めの一歩を踏み出すための力になりますように。

それではお屋敷にてお戻りをお待ちしております。

米澤

桜とアイス

お嬢様、お坊ちゃまご機嫌麗しゅうございます。

冴島でございます。

4月に入り新年度が始まり世の中では新入学や新社会人と思しき方々も見かける頃でございますがいかがお過ごしでしょうか。

桜も連日続いた雨に負けず意外ともってございましたね。

私も自室のそばに咲く桜を楽しみました。

この時期お嬢様、お坊ちゃまもお忙しいかと存じますが是非少しでもお時間がございましたらひとときでも落ち着いた時間を過ごしに当家ティーサロンにお戻りくださいませ。

今月は温かい紅茶と共に私が監修させていただいたアップルパイ風のアイスも用意してお帰りをお待ちしております。

 

冴島

暦を新たに

甘酒づくりが習慣づき、ずっと作り置きを続けております。

伊織でございます。

 

 

4月を迎え、環境や立場に変化の生じるお嬢様もいらっしゃるかと存じます。

不安を感じることも多い時期であることも確かですが、先々への希望を忘れずにお過ごしいただきたいものです。

 

不安を感じるというのは決しておかしなことではありません。

新しいこと、知らないことに臨んで不安を感じない方が心の働きとしては不自然なことではないでしょうか。

そうした不安をどうか必要以上に取り上げ、大きな障害だと思わずにいただきたいのですが、言うは易しということも重重承知しております。

 

世の中にはたくさんの先輩方がおり、今感じられている不安を乗り越えてきたご経験をお持ちです。

素直に相談されることも大切です。

ご自身だけで立ち向かおうというのではなく、そうした先輩方のご経験を糧にすることもよろしいのではないのでしょうか。

実際に話を聞いてみたら一週間悩んでいたことが10分で解決した、なんてこともあるかもしれません。

 

来年また桜が咲く頃には、お嬢様ご自身が先輩としてご相談を受ける側になっているかもしれません。

初心を忘れずとは、常に自身が前を向くためだけの言葉とは思いません。

後ろを振り向き、後をついてくる者への気持ちを理解するための言葉でもあるのでしょう。

 

お嬢様のご活躍を心から祈っております。

透明

本日の執務、無事に終了いたしました。

完璧。実に完璧な一日。

——だからこそ、最後の一手を誤るわけにはまいりません。

 

夜の街へ出る。暖簾の灯り、漂う香り、人々のざわめき。すべてが「一杯どうだ」と語りかけてくる。

 

私は、立ち止まる。

 

——何を飲む。

 

ビールか。

焼酎か。

それともハイボールか。

 

三つ巴。これは厄介でございます。

 

まずビール。

あの一口目の爽快感。もはや説明不要。喉が「それだ」と叫んでいる。

——だが、強すぎる。一撃で満足してしまう危険。

 

次に焼酎。

ロックで静かに嗜む、あの深み。時間とともに変わる表情。

——だが、初手からは渋い。今の自分にその覚悟があるか。

 

そしてハイボール。

軽やか。爽やか。どこまでも飲めてしまうあの危うさ。

——だが、軽すぎるのではないか。記憶に残らぬ夜になるやもしれぬ。

 

私は暖簾の前で完全に停止いたしました。

 

通行人が、二度見している。

気にしている場合ではございません。これは戦でございます。

 

——爽快か。

——深みか。

——軽やかさか。

 

三者三様、いずれも正解であり、同時に不正解。

 

思考が渦を巻く。

 

「いや、待て。順番という手もあるのではないか」

 

ビールで開き、ハイボールで流し、焼酎で締める。

——完璧ではないか。

 

……いや。

 

それは“飲みすぎ”でございます。

 

自分で自分に突っ込むという、珍しい事態。だが冷静にならねばならない。

 

では、どれか一つ。

 

ビールか。

焼酎か。

ハイボールか。

 

——決めきれない。

 

私は一歩前へ出る。暖簾に手をかける。

その瞬間、ふと気づく。

 

……喉、そこまで乾いているか?

 

立ち止まる。

 

いや、確かに乾いてはいる。だがそれは、「どうしても酒でなければならない渇き」なのか。

 

頭の中で、三つのグラスがゆっくりと遠ざかっていく。

 

ビールの泡がしぼむ。

焼酎の氷が溶ける。

ハイボールの炭酸が抜ける。

 

——あれ?

 

急に、どうでもよくなってきた。

 

私はそっと暖簾から手を離しました。

 

そして、くるりと踵を返す。

 

結論。

 

ビールでもなく、焼酎でもなく、ハイボールでもない。

 

——水でよろしい。

 

いや、むしろ水がいい。

 

圧倒的な安さ、翌日のコンディション、そして罪悪感ゼロ。

すべてを兼ね備えた、真の万能選手。

 

ここまで悩んで、最終的に水。

 

……我ながら、見事な遠回りでございます。

 

夜風に当たりながら、私は小さく頷きました。

 

——本日の一杯、白紙。

 

いや。

 

——透明にございます。