常識をわすれて

お嬢様、ご機嫌はいかがでしょうか。
不安定な天候が続いておりますが、近々また暑さがぶり返してくると聞いています。お召しになるものや口にされるものにも十分お気をつけくださいませ。

猛暑であろうと食欲の耐えたためしのない伊織でございます。

半夏生の姿がまわりの緑に塗り込められるの見ると、とうとう夏本番かと腹をくくらねばなりません。

しかし、この暑い季節は悪いことばかりではございません。わたくしにとっては睡蓮の花を眺めることを許された、短い猶予でもございます。
そんな睡蓮の名を冠してお作りいたしました、わたくしのオリジナルハーブブレンドティー「姫睡蓮」。たびたび茶葉を切らしてはご迷惑をお掛けしております。申し訳ございません。
本日はそんな姫睡蓮の楽しみ方のいくつかをご紹介させていただきます。

すでにお話させていただいたお嬢様もいらっしゃいますが、この姫睡蓮というお茶は夏の花をモチーフにいたしましただけに、夏場においしく召し上がっていただくことを前提にお作りいたしました。
すっきりとしたジャスミンティーに、ほんのりと丸みを加えるオリエンタルなアニスシードの香気とステビアのひかえめな甘さ。見目を整えるローズペタルとコーンフラワー。
雪村執事には随分なわがままを申したものですが、数多くのハーブをブレンドすることで納得のいくお茶を完成することができました。

このお茶の第1のアレンジは、アイスティーでございます。
濃いめに抽出した茶液を氷で急冷していただいても結構でございますが、暑い中火の前にわざわざ立たれることもございません。手軽に水出してお楽しみ下さい。
市販の茶袋と申しますか、ティーバッグをお作りいただける袋に、5~8グラム程度の茶葉を入れ、水で満たしたポットやピッチャーにそっと浮かべて下さい。グラム数はお作りいただく量にあわせて加減していただければ結構です。
ですが、水のあとにティーバッグをお入れいただく点はお守りください。茶葉にいきおいよく水や湯を当ててしまいますと、茶葉がつぶれ、おいしさよりもエグ味や苦味が抽出されやすくなってしまいます。
どうか最後に、やさしく浮かべるか、心配でございましたら軽く水に浸してやる程度で十分でございます。2時間から一晩置いていただければ十分おいしく召し上がっていただけます。

ふたつ目のアレンジは氷出しでございます。
仕上がりはアイスティーでございますが、氷で抽出するという点がおもしろい一品です。
通常、紅茶は可能な限り100度に近い沸騰したての湯で抽出するものでございますが、そんな定石を真っ向から否定する氷出しでございます。
淹れ方は至極簡単。
氷と茶葉を交互に容器に詰めるだけでございます。神経質に「交互に積み重ねる」という必要はございません。なんとなくで十分です。
氷が溶けきれば完成でございます。
茶葉の量、氷の量ともに目安はお伝えしかねますが、茶葉は多すぎない程度にお控えください。
氷出しは抽出のために非常に長い時間を有するため、通常の抽出では考えられないほど香り高いお茶をお楽しみいただくことができるのです。
夏場ならではの抽出法として、ぜひとも召し上がる前夜にご用意いただければと存じます。

そして最後に、温かなお茶のアレンジをお伝えいたしましょう。
これはもう、完全にわたくしの好みのお話でしかございません。
姫睡蓮は前述のとおり、ステビアによるほんのりとした甘みが特徴のお茶で御座いますが、こちらにより甘みを加える場合の一例でございます。
加えるのは、龍眼の蜂蜜でございます。
執事歌劇団の日誌でも以前にご紹介させていただいた、わたくしの最も好んでいる蜂蜜でございます。
龍眼の蜜は非常に個性的な味と香りをしております。
独特の清涼感が一番の特徴でありますが、南国の果物であるこの龍眼の蜜は、姫睡蓮にブレンドされているアニスシードとの相性がようございます。
ただし、加える蜜の分量は本当に少し、ティースプーンの先にようやく乗っかっている程度で十分でございます。味や香りを確かめていただき、お好みに合わせて量を加減してくださいませ。

お食事、お菓子どちらにも合わせていただきやすい仕上がりのお茶でございます。
お屋敷では温かな姫睡蓮しかご用意しておりませんが、是非ともブルーローズにて別宅用の茶葉をお持ちいただき、お試しいただけたら幸いでございます。