お嬢様への手紙 -暇乞い-

我が敬愛せしお嬢様、ご機嫌麗しゅうございますか?
時任でございます。



まだ梅雨には日が早うございますが、朝霧が漂う日も多くなってまいりました。
霧雨に包まれた街を眺めるのも、また一興ではございます。
…が、お身体を御冷やしになりませぬよう、くれぐれもお気をつけ下さいませ。
さて。既にお聞き及びの事かもしれませぬが。
当家のティーサロンは、一月のお休みを頂くことと相成りました。
名家ゆえ、お屋敷もまた歴史ある古式ゆかしい建築物でございます。
が、歴史があるとはいえ、物理的な限度というものもございます。
いささか、この旧館を風雪に耐えさせるのも忍びなくなってまいりましたゆえ、大旦那様の号令一下、大補修を行うことと相成りました。
私ども執事やフットマンたちは、もちろんティーサロンのみにて勤めるわけではございませんが。
多少の時間が空いてしまうこともまた事実。
その時間は、よりお嬢様にご満足いただける給仕を実現するべく、それぞれに勉学・修練に励む所存でございます。
サロンにてお嬢様方とお会いする機会は、一月の間なくなってしまいますが。
またご給仕させて頂ける日を指折り数えながら、日々の責務を勤めてまいります。
お嬢様方。
どうか、お身体だけにはお気をつけて。
お疲れになったときには無理をせず、ひとときお休みなさって、甘くまろやかな紅茶をお楽しみくださいませ。
お出かけのときに、私ども執事が口うるさいことを申し上げることもなくなりますが、
なにとぞ、雨が振りそうならば傘をお持ちまださいませ。お外では、お車や階段に気をつけ、お怪我などなさらぬようご注意くださいませ。
どうか、扉を開くたびに、お嬢様の心の中に住む執事めの声に、耳を傾けてくださいませ。
月日が巡りましたとき。
またお会いいたしましょう。
時任
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