魔女の心臓

ほどよく夏の暑さに近づき夜に窓辺で杯を傾けるには良い季節となってまいりました。お嬢様におかれましてはご健勝にお過ごしであられましょうか。

気をおかぬ友人と、ゆっくりと杯を交わす時間と言うのは大変楽しいものでございますが、ときには妖精の悪戯かふっと話題が途切れてしまい、奇妙な空白の時間が発生することもございましょう。

そんなとき、遊戯好きな私や友人たちでございますと、手持ちのゲームを酒の肴に時間を過ごすことが多うございますが、私どものようなジャンキーでもない限り、ちょうどよくゲームやカードを持ち合わせている…なんてこともございますまい。

然れば、今宵はカードもコインも何もなしで遊んで頂ける、簡易なゲームをご紹介致しましょう。


---魔女は敵が多すぎる。
魔女狩りの審問官、ライバルの魔女、狡猾な悪魔、獰猛な蛮人たち。
おちおち眠れもしないので、魔女はよくよく考えて、
魔法で自分の心臓を『あるもの』の中に隠してしまった。

隠した心臓を見つけられない限り、魔女は斬られたって焼かれたって死にはしない。
だけど、隠した心臓を見つけられたら、子供にだって退治されちゃう。
だから魔女は、大事な心臓を一生懸命隠すんだ。
森の木の葉のように深く降り積もる、言葉の森の中へ。ーーー



『魔女の心臓』というゲームでございます。
基本的なルールは簡単。いわゆるyes/no形式の探し物クイズでございまして、互いがこっそりと心の中で決めた『心臓の言葉』が何であるかを、「それは食べられますか?」「それは赤いですか?」など、yes/noで答えられる質問を重ねていき、当てるというゲームでございます。

普通のyes/noクイズと異なりますのは、ゲームを行うお二人とも、心の中で『何か適当なものの名前(=心臓の言葉)』を決めて頂き、互いに相手の『心臓の言葉』を探って頂くこと。そして、相手に質問をするとき、その質問に対する自身の『心臓の言葉』の答えを添えないとならないことです。

つまり「それは食べられますか?私はyesです。」「それは赤いですか?私はnoです。」というように、質問をするほど自身の『心臓の言葉』のヒントも晒してしまうわけですね。


では、具体的にゲームの流れに沿ってルールをご案内致しましょう。

<<<1.お互いに『心臓の言葉』を決定する。>>
お互いに心の中で「心臓の言葉」を決定します。
具体的には、とあるひとつの物を表す「名詞」を決定致します。
これは物でなければなりません。物理的に存在しないものはダメです。

お時間があるならば制限なしでも良うございますが、ゲームを簡潔にするため「いまお部屋にあるもの」「いま見えるもの」「お屋敷にあるもの」などの制限を決めておくことをおすすめ致します。

また、以下にここで「選ぶべきではない」言葉のルールを書き添えておきますが、常識的な範囲で『あるもの』を選べるならば不要なルールです。参考程度にご覧ください。


☆固有名詞は避けましょう。
個人名や商品名などの固有名詞は、キリが無くなるので使えません。
例えば「田中一郎さん」とか「ユーランダーパウダールビー」などを選んだら、いつまで経ってもゲームが終わりません。
つまり上記の場合なら「田中さん→人間」「ユーランダー→ティーカップ」となります。

☆部分、複数あるものの一つ、細分化されたものは使えません。
細かすぎるものも同上の理由で使えません。
「右手の人差し指」とか「タンスの三段目」「トランプのハートのエース」などは使えないわけです。それぞれ「人間」「タンス」「トランプ」と扱われます。
同様に「棚の右から四番目のグラス」「自分の座ってる隣の椅子」「右斜め前の年配の男性」なども使えません。同じようなものが複数存在するものは、まとめて一つの名詞として扱われます。上の例なら「グラス」「椅子」「人間」となります。

☆抽象的すぎるもの、くくりが大きすぎるものはご遠慮ください
「生物」「世界」「家具」など、該当するものが多すぎる単語や抽象的になる単語は避けた方が無難です。


<<<2.お互いに質問を行い、『心臓の言葉』を探る。>>>
交互にyes/noで答えられる質問を行い、相手の『心臓の言葉』を推測していきます。
どちらが先に質問するかはじゃんけんなどでお決めください。

答える側は絶対に嘘をついていけません。
ただし『心臓の言葉』や質問内容によってはyes/noで答えられない場合があります。そのような場合は「どちらとも言えない」「ごくまれにyes」「そうである場合もある」など、自由に言葉を使って答えて構いませんが適切な表現になるよう努力する義務があります。

例)心臓の言葉が『バラ』で「それは食べ物ですか?」という質問。
エディブルフラワーなど食べるバラもあるので「そうである場合もある」と回答。

こういう中庸な回答が多いとズルいとお考えかもしれませんが、
実はこういうyes/no以外の回答が返ってくる方がヒントとしては有益です。
その質問が明確に答えられないものは何なのか、どういうニュアンスの回答であったか。それらをよく考えてみましょう。


また、質問を行う際、質問の最後に自身の『心臓の言葉』の場合はyesかnoかを必ず言い添える必要があります。自身の答えがyes/noで答えられない質問をすることはできません。

例)「それは赤いですか?私はnoです。」
悪い例)「それはお店で売っていますか?私はどちらとも言えません。」


<<<3.相手の『心臓の言葉』がわかったら、宣言する。>>>
『心臓の言葉』がわかったら、タイミングを問わず宣言できます。
「あなたの心臓は『○○』だ!」と、相手を指差し宣言してください。

正解だったらゲームセット。当然、当てた人の勝利となります。
外れだったらゲーム続行。ただし外した側はペナルティとして、質問をひとつ一方的に受けなければなりません。
「それは赤いですか?私はnoです。」ではなく、「それは赤いですか?」とだけ質問されるわけですね


文章にすると意外に長くなってしまいましたが、やってみると単純かつ奥深いゲームでございます。

交渉力、洞察力も鍛えられますので、ぜひお友達と試してみてくださいませ。

今宵もよい夜でありますように。


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