これは、まだ2人が、英国の御屋敷に仕える前、出会いのお話。
そこには確かに自由があり、生活があり、貧富があり、差別があった。
欲するものは自分の力で手にいれ、弱い者から淘汰されていく。
儚くも命漲る世界。
名乗る必要のない生活をする彼は、いつしか自分が何者なのかも忘れ、日々生きることに精一杯であった。
『俺は何のために生きるのか。この世界で生きていくしかないのか。』
独り、鈍色の空を眺める彼の目は、澄み切った碧空の色をしていた。
無駄なことを考えても仕方ないと、彼は生きるために必要なことは、何でもした。毎日毎日、目まぐるしく灰色の世界に、鮮やかな色を塗るように、いつかこの世界から羽ばたく日を夢見て、
否、
夢見ることを否定したいのにどうしても忘れることが出来ず、必死に足掻いた。
その時は来た。
普段灰色に染った彼の世界に、1色のビビッドな紳士が現れた。
名前を言われる。変な名だ。
№.21?ふざけている。また搾取しに来た人間だろう。
それになぜ自分のことを知っているのか、不思議でたまらなかった。
なるほど、彼もここで暮らしていたのか。
考えを廻らしているうちに、彼はこう続けた。
『君は私に似ている。この世界では鮮やかすぎる。まさかこの小さな世界に、こんな人間がいるなんて。君、名前は?』
いつぶりだろうか、人に名前を尋ねられるのは。
名前。名前。
なんだっけ。
名乗る名が無いのなら、今つければいいと言う。
ずっと見ないようにしてきた外の世界。
今ようやく羽ばたける時が来たのかもしれない。
『…ブラインド…ウイング』
見えない世界へと飛び立つ羽。
彼はそれを聞くと満足気に、また、この世界では見た事の無い鮮やかな笑みで
『いい名だ。』
と言った。
続
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さて、読書の秋。且つハロウィンと言う季節。
私もそれにちなんで物書きになった気分で綴ってみましたが、くさい表現になってしまいましたね笑
今年のハロウィンは、魅力的なキャラクターが多ございますから、各キャラクターのいろんなお話や掛け合いを想像しながら楽しむのもいいかと。
そうそう。
お嬢様方へのお菓子は、裏山のてっぺんに置いておきましたからね、私に悪戯はしないでくださいね。
どうしてもひとりじゃ登れないなら、仕方が無いので一緒に紅葉眺めながら登山でも。
羽瀬