すごく長い時間を暗闇で過ごした気がする。
気がつくと僕の周りは、お花がたくさんで、
いい匂いのものも、苦い香りのものもある。
虫や鳥が僕の周りを飛び、動物たちは道案内をしてくれる。
足を止めると秘密基地のような洞穴が。
どうやらここがみんなのお家みたいだ。
みんな僕にこの国のことを教えてくれた。
僕の知らない新しい世界。
美しく明るく毎日が冒険の世界。
時には危ない事もあるけれど、
それが日々の刺激になる。
ある日、妖精に出会った。
その子が言うには、空を飛ぶ魔法を僕にもかけてくれるらしい。
不思議な粉をひとふり。足元ふわり。
ぎこちない動きもだんだんと慣れてきた。
調子に乗って高くまで行くとちょっと怖い。
深い色の空に浮かぶ月を見て、ふと思う。
『私は今、どこでなにをしているのか?』
僕は気づいてしまった。
これは夢なのだと。
途端、真っ逆さまに海へ堕ちる。
空には月とあの子の軌跡が残っていた。
出来ることなら、
この夢の時間が醒めることの無いように。そう願ってしまった。
私はなんと不出来な使用人なのか。
人とは成長を重ねる度に肩書きや役職を得る。
反面、将来の像が『なりたいもの』から『なれるもの』へと
幅が狭まっていく。
私には今、素敵な場と素敵な仲間と素敵なお嬢様方がそばにございます。
でも、まだ僕は、空を飛ぶ夢を見たいと、
そう願う時があるのです。
お嬢様にも、同様の経験はございませんか?
(エクストラティー『Tink』、お楽しみいただきありがとうございました!)
羽瀬