お嬢様、お坊ちゃま、ご機嫌麗しゅうございます。

室戸でございます。

九月とはいえ残暑厳しく、涼風の待たれるこの頃、いかがお過ごしでしょうか。

 

「何か夏らしいことはされましたか?」

 

先日、そう尋ねられて、改めて気づかされました。

ここ数年、夏祭りにも花火大会にも足を運んでいないことに。

 

振り返れば、いつからでしょうか。

忙しさにかまけていたり、暑さや人混みを避けていたりしたこともございますが、一番の理由は「誰かと一緒に行く」きっかけを失ってしまったからかもしれません。

 

かつては、友人たちと浴衣を着て出かけた、そんな夏の思い出が心にたくさんございます。

しかし、流行病の影響もあり、友人と集う機会が減っていく中で、いつの間にか、夏を楽しむ気持ちから遠ざかっていたようでございます。

そして、いつしか私にとって、夏祭りや花火大会は「誰かの楽しい思い出」になっておりました。

 

お嬢様の今年の夏はいかがでございましたか。

次の夏はわたくしも季節感を味わう工夫をしてみようかと存じます。

Mabon

季節の変わり目、庭園の植物が移り行く様に趣を感じるようになりました。

幼少の頃に体験した秋の行楽を懐かしく感じております能見でございます。

お嬢様、お元気でいらっしゃいますでしょうか。

 

誠に残念ながら暦の上では、私が愛してやまぬ夏が終わってしまいました。

お嬢様はこの夏、心の中に暖かく灯るような素敵な思い出はできましたか。

残暑と申します言葉通り、残り香を感じることができる時候でございます。

今のうちに、この夏の記録として日記帳に記してみてはいかがでしょうか。

 

さて来月の上旬。影山とともに特別なエクストラティーをご用意いたします。

影山と紅茶を製作いたしますのはお屋敷にまいりまして初めてでございます。

執事歌劇団入団の同期としてパフォーマンスで切磋琢磨してまいりましたが、

ティーサロンでともに一つの作品を作る機会には、心躍る感情がございます。

 

この度は「霊峰富士」をモチーフに、2種類のアレンジをご用意する予定です。

我々はスワロウテイル登山部(仮)として僅かな頻度ながら活動してございます。

日本で最も高い場所で見た、日常生活から隔絶されたこの世とは思えない景色。

忘れられないアルバムのひとページを、お嬢様と一緒に眺めてみたい。

 

そのような想いをこめて、お嬢様に紅茶をお届けいたします。

どうかお楽しみにお待ちくださいませ。

 

能見

嗚呼、スコットランド

ご機嫌いかがでしょうか、お嬢様。
隈川でございます。

お嬢様、ご旅行はお好きでしょうか。
私はどこかへ出かけるよりも部屋でもくもくとなにかをしている方が性に合っていることを自覚しており、旅行は準備などから億劫になってしまうタイプです。そんな私にも人生上で一度足を運んでおきたい場所がいくつかございます。

そのうちのひとつがスコットランド。

お恥ずかしい話ですが、英国式のティーサロンに10年以上お仕えしておりながら、私グレートブリテン及び北アイルランド連合王国に行ったことがないのです。

特にスコットランドといえばスコーンやショートブレッドが生まれた土地。バターを使ったお菓子たちに目がない私ですから、本場のものをいただけたらどれだけすてきなことでしょう。

それから、あのネス湖も実はスコットランドにあるそうです。かの有名な写真が潜水艦のおもちゃを使ったフェイクだったことは重々承知しておりますが、それでもやはりネッシーへの憧れはいまだこの胸を熱く焦がします。ぜひとも一度自分の目でロマン溢れる湖を拝みとうございます。

美しい街並みの中流れるバグパイプの音色も魅力的ですね。生の演奏を実際に聴いてみたいものです。

うーん、いいですね。想像するだけでわくわくします。

ですから、お嬢様!
いつの日かグレートブリテン及び北アイルランド連合王国にご旅行でおいでの際はぜひ私をおともにお連れ…え?

通訳をかねて伊織を連れて行く…ですか。

 

…いえ。別に…ふてくされてなど、おりません。私は空想旅行で満足ですし、全然悔しくなんてございませんけれど…ええ、まったく。

自室で大人しくもくもくショートブレッドを齧りながら執務に臨むのが個人的に好きですから、別にいいのですけれど…いいのですけれどー…あの…

…大丈夫でございますか?
旅先で私のこと思い出して可哀想な気持ちになったりしませんか?そんなことになったら旅がもったいのうございませんか??

せめて、せめてお土産にたくさんお菓子を…

隈川

日誌

9月1日より
ギフトショップにてわたくしの考案した

『クッピーラスク』

をご用意させていただきます。

色々試行錯誤した結果、
非常にシンプルにまとめました。

ラスクにクッピー&クリームが塗られた濃厚な味わいがお楽しみいただけます。

お召し上がりいただくタイミングは
間食時がおすすめでございます。

間食でございますので
言いかえますと、

いついかなる時もお召し上がりいただけます。

また
お勉強やお出かけのおともにもしていただけたら嬉しゅうございますので、

是非一度ご堪能くださいませ。

日誌

お嬢様、お坊ちゃま
今年の夏も楽しくお過ごしいただけたでしょうか。
近衛でございます。

9月になり季節も夏から秋へと移り変わる頃合いでございますね
まだまだ日中は暑い日が続いておりますが、最近日々のお給仕の終わりに夜の気温が涼しくなってきたなと感じております。
何気なく空を見上げ、夜空の雲や月をのんびり眺めながらその日の終わりを過ごし、夏の終わりを感じ入るのも季節の変わり目の醍醐味でございますね。

お嬢様、お坊ちゃま方もお忙しい日々をお過ごしかと存じますが時にはゆるりとお心を休めるお時間を作っていただけると幸いでございます。
ティーサロンでも、ゆったりおくつろぎいただけるようお給仕させていただきますゆえ、ご帰宅をお待ちしております。

可能性

お嬢様方
宵闇の訪れの早さが日に日に強く感じられるようになってまいりましたが、ご機嫌いかがでございましょうか。

香川でございます。

平年よりぐんと暑い夏だったとのこと。
体力もお使いになられたかと存じます。意識して休息をおとりいただき、回復に努めてくださいませ。

さて、夏を越えれば実りの秋。
あれこれと思いをかけ、大切に育てたからこそ得られるもの。
また、どのような成長をしてくれているかに気をもむ時期でもございます。

オータムナルのテイスティングが楽しみであるように、
日本酒もあのはつしぼりがどう丸みを帯びたかなど、気になるところでございます。

先人の蒔きし種。
守り育ててどう実らせるか。

この秋に思うことを忘れぬよう書き留めておきましょう。

お嬢様のもとに豊かな時間をお届けできるように。

お帰りを心よりお待ちしております。

日誌

ご機嫌麗しゅうございます、荒木田でございます。

漫画や小説、映画にドラマ。世にあふれるあらゆる物語の中で、主人公に都合のよい出来事が重なり、どんな苦境に陥っても最後には必ず勝利を収める。こうした物語の起伏や出来事は往々にしてございますが、そんな現象を人は「主人公補正」と呼びます。

さて、そんな主人公補正というものについて。

「ご都合主義だ」「リアリティが欠けている」そんな批判的な声はしばしば耳にいたしますね。確かに現実の我々の暮らしにおいては、土壇場で必ず勝利するヒーローなど存在せず、むしろ運命に押し潰されることの方が多いのかもしれません。

しかし、この主人公補正はあって当然のものなのでございます。なぜならば主人公とは、数ある人間の中で「物語を最も面白くするために選ばれた存在」だからでございます。

脇役や通行人にだって、それぞれ人生や物語はあるでしょう。しかしながら、彼らを中心に据えた物語が必ずしも面白いとは限りません。商店街の角のラーメン屋の主人が一日中スープを煮込んでいる物語。名刺入れをオフィスに忘れた不憫な会社員の一日。木のうろでどんぐりを抱えて眠り続ける小リスの話。――それもまた物語には違いありませんが、必ずしも万人を惹きつける力があるわけではございません。

物語の主人公は、読者や観客を最も楽しませ、心を揺さぶり、涙させ、笑わせるために存在します。そのために舞台照明のように「補正」という光が当たるのです。むしろ補正がなければ、物語など始まりもしない。主人公補正とは、物語を駆動させるための最低限の潤滑油なのでございます。

さて、この「主人公補正」という考え方を現実に引き寄せるとどうでしょうか。

巷でよく聞く言葉に、「誰もが自分の人生の主人公なのだから、自分の人生を生きよう」というものがございますね。

なるほど、尤もなお話でございます。確かに人はそれぞれ舞台の中央に立ち、それぞれにしか歩めぬ物語を紡いでいる。誰かにとっては脇役に見えても、自分にとっては掛け替えのない主役である。これは心を軽くし、前へ進むための、なかなかに良い言葉でございます。

しかし、私には一つ物足りなく感じられる点があるのです。「主人公だから自分の人生を生きよう」――それだけでは、どうにも締まりがございません。主人公であることは、ただの前提条件に過ぎません。問題はそこからでございます。

補正とは、主人公の物語を「面白くするため」に働くものだと申しました。であれば我々の人生においても、せっかく自分が主人公である以上、どうすればこの物語が最も面白くなるかを考え、生きるべきではないでしょうか。

失敗も挫折も時には必要でございましょう。喜劇にだって悲劇にだって、ハラハラと手に汗握る展開はつきものです。けれど結局、物語が面白くなったかどうかを決めるのは、その物語の中心に立つ主人公本人なのです。自分自身の選択と覚悟が、物語の補正となり、運命すら動かすのでございます。

お嬢様、坊っちゃま、人生を主人公らしく歩む……というのは当然として。ただ生きるだけでは退屈な物語になってしまいますから、どうせなら、面白い物語を。自らが語り部となり、自らが演出家となり、自分だけの舞台をお作りください。

面白い物語を作るためのおすすめは、普段しないことをすることでございます。普段通らない小路地なんかは特によろしゅうございます。未知の何かに出くわすやもしれませんし、異世界へのポータルがあったりして。何故かニワトリがいたりもします。事実は小説よりも奇なり。

そしてそのお嬢様の作る舞台に、もし私が脇役として登場を許されるのであれば……そうですね、爆発くらいいたしましょうか。脇役の一人が派手に散るのもまた、物語の華でございましょう。