鬼の笑うケーキ

敬愛せしお嬢様へ。

雨の季節となり、窓を流れる雨粒を眺める日も多くなっておりますでしょうか。
お出掛けがなかなか叶わぬとお嘆きやも知れませぬが、季節は文化を育むもの。こんな季節は屋内にて、溜め込んだご本を読まれたり、映画鑑賞を楽しんだりなさる時期とお考え頂き、お楽しみくださいませ。

さて、そんな六月の後半は、私めがティラミスケーキをご用意させていただいております。

オレンジのキュラソーを多めに利かせ、ラム酒を薫らせたちょっと大人なケーキでございます。
読書やティータイムのお供にしていただければ幸いでございます。

このティラミスケーキは、私の祖父が溺愛していたケーキでございまして、祖母の遺したレシピに基づいております。

剣道の師でもあった祖父は普段から厳しく、私の記憶にある限り祖父との時間は剣で叩かれているか投げ飛ばされているものばかりです。

そんな祖父がブランデー片手に祖母のケーキを食しているときは、腹立つぐらい満面の笑顔でございました。

お嬢様に想い出あるケーキをお届けするようにとのご用命にあたり、
我が祖母の特性『鬼が笑うティラミスケーキ』をお届け致します。

ぜひ一度、お召し上がりくださいませ。