過程

おや、お嬢様…
こんな朝早くご出発のご準備でございますか?
執事から伝えられた予定ではまだお時間に余裕がございますよ?
お嬢様は本当に用意周到でございますね…

肌寒くなって参りましたので、
玄関先にはストールをご準備しておきます。

…もう、すっかり秋でございますね。

清々しい天気の朝に
季節の風を感じますと、とっても心地よく、
どこか懐かしさを感じます。

同時に、一年前からどれだけ自分が成長したかも、
気にかかります。

どれだけ得たものがあるか…
どれだけ失ったものがあるか…

どれだけの出会いがあったか…
どれだけの別れがあったか…

お屋敷のティーサロンでは
たくさんのお嬢様やお坊ちゃまとお顔を合わせる事が出来ます。
そして、たくさんの使用人とも毎日顔を合わせます。

長旅に出られるお嬢様、お坊ちゃま。
役目を終え、新しい路へ旅立つ使用人、

幸せと悲しみが混在する春夏秋冬(ひととき)。
あんなに涙した仲間との別れも
次第に感覚を鈍していき、
そんな自分に嫌気がさした時を経て、
その忘却も必要なのだと今の実感に至ります。

良く大旦那様に、
「悲しい時こそ笑顔であれ」
と、お言葉を頂戴したものでございます。

これからも新たな仲間に出会い
長旅から帰られるお嬢様、お坊ちゃまと空間を共にさせていただく事でしょう。

時は過ぎて行くのみでございます…。

春夏秋冬とは、
とても抑揚のあるひとときでございますね…
この抑揚、お嬢様にはどんな風に香ってまいりますか?

…少々、物寂しゅうございますが、
私、あえてこれを人生の醍醐味と
前向きに捉えていきたいと存じます。

おや…

もうすでに準備がお済みでございましたか…
つまらない戯言に付き合っていただき、有り難き幸せでございます。

かなり、大荷物でございますね…
長旅でございますか…?

待つ事も使用人の大事な務めでございます。

あ、ストールお忘れにならない様に…
どうかご自愛くださいませ。

では…
私、笑顔でお見送りさせていただきとうございます。