「お嬢様への手紙~横浜紀行・弐」

我が敬愛せしお嬢様。ご機嫌麗しゅうございますか?時任でございます。
抜けるような青空には、筆で掃いたような鮮やかな白い雲が流れ、元気な蝉の声
が、夏という季節の到来を誇示するかのように鳴り響く…。
世はまさに真夏と言うべき季節のようでございます。

最近はドアマンを仰せつかることも多い時任でございます。
扉を護らせて頂いている間は、外界から漂い込む陽光に怯え、夏の暑気を感じて
はお嬢様の身を案じております。

お嬢様方、夏の太陽の下、向日葵の花のように微笑むお嬢様方も確かに美しゅう
ございます。
ただ、お身体に障るといけません故、どうか日傘と帽子はしっかりと携えて下さ
いませ。
この夏らしき真夏の日々に相応しく、白いつば広の白帽子に、軽やかなレースの
白日傘などいかがでございましょうか?
輝く陽光の下、青空の下に映える清楚な白いお姿で、笑顔でお戻り頂けるお姿を
、私どもは眩しさに眼を細めながらお迎えすることでございましょう。

――…あちちちちち。

なんにせよ。このように如何にも夏らしい夏は数年ぶりのように存じます。
お嬢様方、くれぐれも日中は涼しくお過ごし頂き、無理をなさってお体の具合を
崩しませんよう、ご自愛下さいませ。
私どもは、お屋敷を涼しく整えながら、いつでもお帰りをお待ちしております。

さて、それでは今宵も駄文を添えさせて頂きます。
どうかお休み前のナイトキャップ代わりにでも、お楽しみ頂ければ幸いでござい
ます。

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