番外編・同族狩りの四/千の戦略家/秘密の書斎/塵は塵に、灰は灰に

我が敬愛せしお嬢様。いかがお過ごしでございましょうか。時任でございます。

三寒四温とはよく言ったもので、まるでチェスボードのように暖かい日と肌寒い日が交互に続いておりますね。

気がつけば梅の時期も過ぎ、やがて桜が咲くことでしょう。

桜が咲いたら、皆でお花見など致しましょうか。

美しく散り行く桜を惜しみ、そしてまた来年に咲き誇るだろう花を想う。
そんな桜が私は大好きでございます。

桜の花粉症なので、意味も無くボロボロ泣きながら桜を見ておりますが、そこは気になさらないで下さい。

悲しむことなどございません。
梅も桜も、また来年に、また可憐な花をきっと咲かせてくれるのですから。

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春の気配は東の果てへ

冷たい風が爪痕のつくほどにこの肩を鷲づかみ、
逃げ行く春を追うことを決して許そうとはいたしません。
暦はあらがう術を知らずに、風のなすまま、
そのうすい皮膚をめくり剥がされております。
ただ、暖かな春陽に包まれて盛る花々を眺めていたいだけですのに、
いまだ冷たい風はわたくしの肩に青痣を残そうと爪を立て続けるのです。

お嬢様の身には何事もなきよう、冷たい風の意地悪はわたくしが
代わりにお引き受けいたします。
ご機嫌いかがでしょうか。伊織でございます。

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