お屋敷に秘密 その2

 さて、本日はお嬢様の住むお屋敷について振り返ってみましょう。
当然ご自身の家でございますから、「何を今更」とお思いのことでしょうが、中には久しく帰って来て下さらない不良お嬢様もいらっしゃることでしょうから、そんなお嬢様は懐かしんで、いつも帰ってきて下さるお嬢様はご一緒にイメージして頂けると幸いでございます。

 当家は東京都豊島区・・・・
あまり詳しく書くと盗賊が忍び込んでくるかもしれませんので、池袋の閑静な住宅街の一角に当家があるとだけ申しておきます。

その敷地は実に広大です。
東京ドームがいくつも入ってしまうほどです。
まず正門を抜けると、目の前に悠々と車が行き交うことの出来る道が一本。
これがお屋敷に続く大通りとなります。
この道をまっすぐ進んだおよそ敷地の真ん中よりやや奥手側に本館と言われるお屋敷があります。
お嬢様にとってのご自宅でございますね。

以前この道のりを『全力疾走で何分で着くか』ということに長岡君が挑戦いたしましたが・・・・
数分後、途中の道端で貧血で冷たくなりかかっている彼を大河内君が発見いたしました。

それほど、広いのです。

やはりここは、車や馬車、もしくは田辺執事のように自転車を使うのがよろしゅうございましょう。

 その広大な敷地には、お屋敷のほか、庭園があり、馬屋があり乗馬施設があり、池などもあります。
私どもの生活する宿舎もこの敷地内にあります。

使用人の宿舎から大通りに向かう道の左手には、通称『体育館』と呼ばれる総合施設があります。
その中には、武術道場や温水プール、スポーツジム等があります。
このジムに熱心に通うのが藤堂執事と響執事ですね。お嬢様も一度足を運んでみてはいかがでしょうか。藤堂と響の肉体を競い合う姿を見る事が出来ましょう。
 また、そういったスポーツ施設の他に図書館(大旦那様の書斎を使用するわけにはまいりませんので。)や簡単なシアタールームまで備わっております。
体育館が使用人宿舎に近いのは本館の近くにあると美観を損ねるから、また普段の移動手段が徒歩の我々でも利用しやすいようにとの、大旦那様のお心遣いでございます。

因みにここにあるシアタールームと、『本館』にある大旦那様やお嬢様用のシアタールーム、リスニングルームの管理は椎名の管轄でございます。
自分の趣味を仕事にさせていただける、大変素晴らしいことでございます。
ただ、熱が入りすぎてチューニングに没頭しすぎることもしばしば・・・
ふと気が付くと横で司馬執事が三角座りをして、あのつぶらな瞳と髭で私を観察していた事に気付いた時には大変驚きました。

もし、椎名を見かけなくなりましたら、他の重要なお仕事か、候補生の育成か、猫。
またはシアタールームに籠もっているとお考え下さい。

話がズレてしまいましたので戻しましょう。

 さて、最後にご紹介するのがお嬢様がいつもお帰り下さる『あの場所』でございます。
こちらは正門から歩いてすぐの所にあります、『ティーサロン』でございます。
お茶の為にお戻りになるお嬢様に、わざわざ長い道のりを移動していただくわけには参りません。

ですので、お気軽にお戻り頂き、ひと休みしてまたお出かけし易い様に、正門付近に建設されました。

 普段別宅で生活し、こちらにしかお顔をお見せ下さらないお嬢様、たまには本宅に足をお運びになるのはいかがでございましょうか。
きっと大旦那様もお喜びになるはずでございます。

今回ご紹介したのはほんの一部、まだまだ他に沢山あります。
お屋敷の裏手にある裏庭や鬱蒼と生い茂った森。
さらにそこを抜けるとある、裏山等の秘密についても触れたいところですが、本日はここまで。
またの機会にお話したいと思います。

もうすぐ…

お屋敷に来てからの初めての年越しでございます。
クリスマス、そして元日と、お嬢様も大変お忙しい日々を送られている事でしょう。
急ぎ足になりまして、お怪我をされぬようお気をつけ下さいませ。

初のお屋敷での年越しを、お嬢様と一緒に満喫しとうございましたが、
まだまだ半人前の身でございますので、年末も紳士の心得を学ばさせていただいております。

“もうすぐ…” の続きを読む

新参執事の司馬でございます。

お初にお目にかかります。
このたび、執事として皆様方にお仕えすることになりました、司馬と申します。すでに御屋敷でお目にかかりましたお嬢さま方には、あらためまして、御挨拶申し上げます。
これから先、執事の日常で感じました様々なことを、この日誌でお伝えすることとなりますが、なにぶんにもユーモア感覚がとぼしいため、とんだ駄文を綴ることになるやもしれません。その時は、どうか寛大なお心で、笑い飛ばしてくださいませ。

では、まず執事の役職を仰せつかったきっかけをお話しいたししましょうか。
そもそも、学生を卒業してからほとんど間も置かず、私はお屋敷で働き出しました。広大な書庫を職場とし、主な仕事は毎月何百冊と購入される蔵書の整理と管理でございました。そこで、十五年ほど勤めたでしょうか。
今年の夏頃でございます。あまり例のないことでございますが、たまたま書庫に降りていらっしゃいました大旦那様が、私の仕事ぶりをしばらくじっと見つめて、やがて、黙って立ち去りました。
数日後、のことでございます。大旦那様がだしぬけに私を書斎に呼び出されました。なにか粗相でもしでかしてしまったか、と気に病みながら急ぎ参上したところ、大旦那様は優しげな笑顔で、これから執事として仕えて欲しい、と穏やかにおっしゃいました。
寝耳に水でございます。
私は黙々と職人のように仕事をこなすのが性に合っており、他人様のお世話をすることになるなど、夢にも思っておりませんでした。
使用人としてあってはならないことですが、私はその指示をお断りしようとしたのです。しかし、大旦那様のどこかいたずら好きな笑顔を前にいたしますと、とてもそんなことは言いだせませんでした。
こうして、私の執事人生は始まったのですが、大旦那様が、なぜこの役目を下さったのかは、いまだに考え続けております。現在は職務をこなすだけで精一杯ですが、きっと経験を積んでいくうちにその答えは出せるのでしょう。そう信じて、慣れない執事職に全力を尽くしたいと存じております。

思わず長くなってしまいました。
最後に、私の好きな戯曲の台詞を一部もじって、執事就任の決意(と申すのは大げさでございますが)といたしましょう。

「われら執事は影法師。その所作つたなく、皆様のお気に召しませなんだら、これらの幻が現れておりました間、しばしまどろまれた、と思っていだだければありがたいことに存じます。
さて、私は正直者の司馬でございますので、もし幸いにもお叱りの声を免れえました暁には、せいぜい技を磨いてご愛顧に報いたいと思っております。ご期待にそいえませなんだら、この司馬めをうそつきと呼んでいただきましょう。
では、皆様ごきげんよろしゅう。もし、そのお気持ちがございましたら、どうかお手を拝借願います。」

お寒うございますね

暖かい秋の絨毯をガラスの風がさらって行きます…。

美しい冬の光景とは裏腹に刺すような木枯らし…

そんな中、
お嬢様、体調は崩されておりませぬか?

風邪にはお気をつけ下さいませ…。
私の周りでも体調を崩しかけている仲間がちらほらといるので…。

お寒いときはぜひ紅茶を…。
ご存知かと思われますが、紅茶には風邪を予防する効果がございます。

さらに体を温める薬でもありますので、
ぜひナイトキャップティーとして就寝前の一杯をお勧めいたします。

あ…
ただし、それ以上飲んでしまいますと逆に寝付けなくなってしまいますので、
ご注意を…。

では、私含め使用人一同、お屋敷でお嬢様の元気なお姿を
楽しみにお待ちしております。