電気執事の夢を見る

敬愛せしお嬢様へ
雨の日にしても晴れの日にしても、傘が手放せぬ季節でございます。
この傘というものは、常に片手が塞がれてしまい、どうにも荷物となってしまうのが難でございますね。

文明が発達し、あらゆるものが小型化・携帯化している昨今、傘もどうにかハンズフリーに出来ないものかと思うところでございます。
そう申しますれば遡ること20年ほど前、とある米国の作家が「20年後の日本社会」を想像した未来絵図を描き、その構想の中に今日のスマートフォンそのものが描かれていた事がまるで予言のようだと話題になったことがございましたが、その構想の中で「2020年代には日本の傘は頭に被る形式に戻っているだろう」と予言されていたのが少し面白うございました。

思えば江戸時代の傘や日傘は、頭に被るタイプの傘や頭巾と豊富かつコンパクトで、随分と合理的でございますね。
折り畳めるタイプでも開発すれば、意外と売れるのではないでしょうか。

逆に近代で開発されつつある未来世代の傘は、ドローンタイプだそうでございます。
20年も先には身の回りの品々があれもこれもドローンとAIに組み込まれてゆく予想が有力でございまして、傘も片手を塞ぐ事なく頭上に浮遊し、持ち主を追尾して移動し、そもそも持ち歩かずとも呼び出せば自宅から飛んでくるという便利極まりない構想が成されております。

まぁ、そこに至るまでに充電の問題や安全性の問題、万人が使用しても安定したネットワークの確保など課題は多いようでございますが。

傘のみならず、車両や掃除機、洗濯機、調理器具、果ては洋服のクローゼットや靴箱に至るまで、AI・ドローン化の構想はあるそうでございます。
ご帰宅なさったら洗濯機ドローンが服を受け取って洗濯、クローゼットドローンがそれを格納し、ドレスルームドローンと連動して、当日のご予定に合わせたお召し物をコーディネートして朝ご用意しておく。そんな未来が垣間見えますね。

さて

使用人失業の危機でございます。

思えば、痒い所に手が届くかのように、主人の不便や面倒を解決するのが使用人の役割。
その意味で言えばドローンという存在は使用人の究極形とも言えます。
そのドローンの発展普及は喜ばしいことといえど、使用人にとっては存在価値喪失の危機かもしれません。

されど

今日においても既に「機械で出来ることを敢えて人間にやらせる」事に高級感を見出している事柄は多くございます。
そうでなくても元より、中世のお屋敷においては「どう見ても必要のない仕事」にまで使用人を雇い配置する事で、名家の裕福さと権威を示していた傾向がございました。

給仕ドローンやAIコンシェルジュが当たり前の時代がやってきたとしても
あえて其処に人を使うことが高級の条件となっていく。そんな未来が来る気が致します。

お嬢様も
AIドローンのアフタヌーンスタンドに乗ったアンナマリアが飛んでくるよりは
忠実なフットマンがアンナマリアをお持ちし給仕させて頂いた方が、お寛ぎ頂けるでしょう?

うむ。どうやらお屋敷の未来は20年後も安泰のようでございます。
しっかりと今も未来もお支えさせて頂き、何十年でも使用人たちがお屋敷を支えさせて頂きますゆえご安心くださいませ。

 

 

 

だけど

 

 

 

空飛ぶアンナマリア

ちょっと見てみたいですね。

 

日誌

 

影山でございます。

ティーサロンのご滞在時間が増えた事により、お嬢様とご一緒出来る時間が長くなった喜びと共に重責を感じてございます。

貴重なお時間を頂戴してるのでございますから。

今までよりもより視野を広くして務めたいと存じます。

夏の期間はどの紅茶もアイスティーで御用命頂けますので、色々な種類のアイスティーを試されるのもよろしいかもしれませんね。

夏支度

司馬でございます。
皆様、お健やかでいらっしゃいますか?

7月に入りますと、とうとう真夏がやってきますね。
陽光も激しく降り注いでまいります。
物陰から急に日向に出ますと、視界全体がカッと白くなるような気がします。
お出かけの際は、日傘やお帽子など、紫外線対策はけっしてお忘れにならずにご自愛くださいませ。

真昼の暑さが強烈な日、涼しい風を感じられるような夕刻になりますと、ようやく、ほっと一息がつけますね。
その時分には、庭園から響いてくる蝉の声にも、少しばかりの悲哀を感じられてきます。
夏の夕暮れの雰囲気には、過ぎた日々を懐かしく思うような効果があるような気がいたします。

井戸で冷やしたスイカ。
軒下の風鈴。
蚊取り線香からたゆたう煙。

いずれも純日本風の情緒であり、当屋敷ではあまり出番ははございませんが、時にはお嬢様方の別宅で用いることもございましょう。
夏本番が来てから慌ててご用意するのでは、突然の御用に間に合いません。
そろそろ、お屋敷の物入れを一大捜索しまして、夏の支度にかかると致しましょう。

あとは・・・。
プライベートビーチでお使いになるビーチパラソルや、避暑地でお召しになる浴衣、夜会用のドレスも新調しなければなりませんね。
こちらも早急に手配しなければ。

では、お嬢様方。
例年通りに今年も猛暑となるのでしょうが、どうぞ夏バテなどなさらずに元気にお過ごしくださいませ。

 

未知なる食材

皆様、ご機嫌麗しゅう。
吉川でございます。

この時期になると市場に出回る野菜に『青唐辛子』なるものがございます。
以前よりその存在は認識しておりましたが、ピーマンの亜種のような『獅子唐』と違い、一般人が迂闊に手を出してはいけない、何やら専門的かつ職人的な雰囲気を感じ、手に取る機会がございませんでした。

しかし昨年でしたか、『青唐辛子醤油』なる調味料を入手し、意外と日常使いし易そうだなと認識を新たにしておりました。
ただ、青唐辛子を使った料理のレシピを検索してみると、「手袋をすると安心」「換気扇は必ず回す」など恐怖を煽る注意書きが多く、購入には二の足を踏んでおりましたが、今夏に入り改めて青果店の店頭を眺めてみると、意外なほど普通に、獅子唐と同じような頻度で見掛けるようになりました。

ここは一念発起、購入することにしましたが、獅子唐と同じような感覚で使うにはまだ恐怖を伴いますので、最初は数本入りの小袋で様子を見てみます。
種をしごいて取るレシピと、そのまま輪切りにするレシピの凡そ二通りですが、炒めものに使用するのでとりあえず輪切りにしてみます。
種は柔らかいのでそのまま使えますが、切り口からは驚くほどの辛みの気配を感じます。
とりあえず豚肉と炒めて食してみると……美味しい!
乾燥唐辛子とはまた違った、さっぱりすっきりとした爽やかな辛みが癖になりそうです。
これは良い食材を知ることができました。

早速リピートしようと数日後に店頭を探してみると小袋が見当たらず、40本は入っているであろう大袋しかありません。
数本しか使わないのに大袋か……しかし癖になってしまったので欲しくたまらない……悩んだ末に大袋を購入しました。
その内の30本は輪切りにして醤油に漬けしばらく寝かせ、残りは調理に使うことにします。
漬けこんだ青唐辛子は何に使うか、そうめんに添えるか、はたまた冷や奴に添えるか、今から楽しみです

労働者

デニム。ジーンズ。

このような話題を認めようと思い筆を執ったのですが、
おそろしい量の情報が集積した分野であり、私が扱うにはあまりにも難しい内容です。
以下は、私の浅い経験と知識の中での思い出話、とでも受け取ってください。

 

デニムは現代の服飾には欠かせない素材であり、
本当かどうかわかりませんが、サンローラン本人を以てして「私の唯一の後悔は、ジーンズを発明できなかったこと」といわしめたほどです。

さて、そのようなデニムですが、私の印象はと申しますと。

若い時分。
今思えば本当に常識知らずで恥ずかしい限りなのですが、
当時お世話になっていたお筝の先生を訪問する際に、デニムパンツを履いていったことがございました。
その場では何もなかったのですが、後日、一緒にいた先輩が「作業着を着てくるなんて変わった子ね」とチクリと釘を刺されていたそうです。

まあそのような経験もあり、デニムは私にとっては労働着。
ストリートでも、ロックでもない。ワークに属する服だと認識しております。

しかし、現代社会においては、モノが持つそういった情報は希釈され、
「全体をカジュアルダウンする素材」
という認識になっているのでしょうか。

 

我々も年間350日は燕尾を着ておりますので、他の使用人の燕尾以外の姿をみることは稀なのですが、

 

個人的には乾がデニムのベストドレッサー、ベストジーニストではないかと感じています。

生地が余らないぴったりのフィッティングのヒップから、ジャストの腿、ひざ上から少しゆとりが出る細めのストレートにワンクッションする丈。
永遠の定番ですが、ここまでキレイに穿けるのは、乾のスタイルと空気感、体型維持の賜物でしょう。

 

私も見習いたいものです。
まずはやはりデニムの燕尾からでございましょうか。
大旦那様是非ご一考を。

文月

うだるような暑さが続いておりますがお嬢様いかがお過ごしでしょうか。乾でございます。

今月ギフトショップにて私がプロデュース致しました「白桃のタルト」をご用意させていただきました。

旬の白桃とカスタードクリームををふんだんに使い軽い甘さでさっぱり仕上げております。

紅茶やコーヒーはもちろんの事、少しだけ辛口な白ワインやシャンパン、日本酒とのマリアージュもお楽しみいただければと思っております。

是非、お試しくださいませ。

また、ご感想などお教えくだされば幸いでございます。

 

今月はお嬢様の愛馬でございます。

 

 

では、お屋敷にてお嬢様のお帰りをお待ちしております。