冬日和

お嬢様、お坊ちゃま。奥様、旦那様。
ご機嫌麗しゅうございます。
才木でございます。

私、冬の空が好きでございます。
夏の雲を愛でるのも、
よいものではありますが、
冬の澄み切った空を眺めるのは、格別ですね。

どこまでもどこまでも広がっている、
青空を見ておりますと、
ほっと一息つけますし、
心が洗われるような心持ちになります。
ふと、感傷的な気分になり、
私はこの世界に生かされているのだなぁと感じます。

“冬日和” の続きを読む

秋の思案

お嬢様、お坊ちゃま、旦那様、奥様。
ご機嫌麗しゅうございます。
才木でございます。

私、暑さがとんと苦手です。
ですので、好きな読書も捗らないことが多かったのですが、
ようやく様々読んでおります。
やはり文章に浸る瞬間、本に囲まれる瞬間、
何にも変えられないものがあります。
“秋の思案” の続きを読む

じめじめと。

じめじめと。しております。
お嬢様、お坊ちゃま、ご機嫌麗しゅうございます。
才木でございます。

近頃は、曇天の合い間から、
天の子が覗くのを、心待ちにしております。
ただ、恥ずかしがりなのか、
出不精なのかは存じませんが、
とんと姿を見せません。

背を伸ばす、朝顔の如く、
光を求めてうんと背を伸ばすものの、
顔を打つのは、雨粒ばかり。
いっそ、ブタでも降れば面白い
と思うのですが、中々そうもいきません。

とはいえ、悪いことばかりではなく。
雨が降れば、
少しばかり涼しさを感じますし、
しとしとと、屋根打つ雨音も、
風情があるような気も致します。
庭に、耳をすませば、ゲロゲロと、
歌声が聞こえてくることもございます。

カエルでございますよ。
ひんやり冷たい身体なのですが、
お嬢様、お坊ちゃま方には、
少々刺激が、強うございますかね?
五月蝿いような、心地よい様な、
無骨な奴らでございますが、
ゲコゲコという、リズムを聞くと、
不思議と楽しくなってまいりますね。

そのような、
自然の音楽に、耳を傾けながら、
活字に浸るというのも、良いものですよ。
現実と非現実の境界線が、
曖昧になっていく中で、
うつろうままに時を過ごすのも、また一興です。

さて。
強かに、自己主張を続けるあやつらに、
敬意を評して、カエルにちなんだお話を、一つご紹介いたしましょう。
(ここまで前フリでございました……)

【「かえるくん、東京を救う」作:村上春樹
(短編集「神の子どもたちはみな踊る」に収録)】

あらすじを長々と説明するのも
無粋ですので、
簡単にご説明しますと、
主人公が、ある日うちに帰ると、
自宅に巨大な蛙がおります。
そいつは、自分のことを
「かえるくんと呼んでくれ」と言う。

私、春樹フリークという訳でもないのですが、氏の作品の何本かは拝読しておりまして、
どちらかと言うとこの作品は、
「世界の終わりとハードボイルドとワンダーランド」などに、近い印象を受けました。

冒頭から中々シュールではありますが、
そんなかえるくんが言うことには、
みみずくんと呼ばれるものがおり、
そいつが東京に地震をおこして、
壊滅させようとしている。
なので、みみずくんを倒して、
東京を救うのだと。

純文学というのは、得てして、
理解が追いつかないものでございます。
(あくまで、私のイメージですが)
ですが、その分からないものを、
分からないものとして、受け入れ、
世界を俯瞰してみると、
あれよあれよという間に、
作者の持つ何某かに、
飲み込まれてしまうこともしばしば。

「私の思う、私の世界の、私の答えはこうなんだ」

というエネルギーが垣間見える瞬間を、
是非楽しんで頂ければ、嬉しゅうございます。

かえるくんは、終始ユーモラスで、可愛らしゅうございますし、
作品としては、さらっとお読み頂けます。
氏の文体も、読み進めて頂くと、愉快で、語感の良さが、癖になる部分が。
更に、もう一度申しますと、かえるくんは大変可愛らしゅうございます。
オススメでございます。
是非ご一読下さいませ。

と読みふけっておりましたら、
いつしか雨音も落ち着いてまいりまして、
夜の静けさが、響いております。
長々とお付き合い頂き、恐縮でございます。
ご感想などは、またティーサロンで、
お聞かせくださいましたら、嬉しゅうございます。

ささ、明日もお出かけも早うございますから、
そろそろ、お休み下さいませ。
楽しい夢をご覧になれますよう、お祈りしております。
願わくば、その夢よりも楽しい明日でありますように。

私はもう少々、
文章の波間にたゆたうことに致します。
夏至も過ぎて、
日の出も早うございますので、
出迎えぬようお気をつけて。

才木

ペンギン

お嬢様、お坊っちゃま、ご機嫌麗しゅうございます。
才木でございます。

近頃は、すっかり暑くなって参りまして、
梅雨の足音が、ポツポツと近づいてくるのを感じます。
くれぐれも突然の雨には、お気を付け下さいませ。

とはいえ、嫌なことばかりではありません。
初夏の気候は、お出かけにはぴったりでございます。
ただ残念ながら、この一カ月ほどは、恐らく雨も続くことと存じますので、
ふと羽を伸ばされるのなら、屋根のある場所がようございましょう。

そのような時、私はよく水族館に参ります。
明るすぎない綺麗な照明と、涼しげな水の温度、
のんびりと泳いでいる生き物達を鑑賞するのは、
何とも優雅な時間でございますよ。

その中でも、とりわけ、ペンギンが好きでございまして。
あの白と黒の可愛らしいフォルム。
寝ているのか起きているのか分からない、緩さ。
可愛らしゅうございます……。

水族館で、よく飼育されておりますのは、
マゼランペンギンやフンボルトペンギンという、
中型(体長70cm程)のペンギンが多うございまして。
最もポピュラーなコウテイペンギンは、
大きいものですと、130cm! とっても大きゅうございます。
ちなみに私が好きなのは、イワトビペンギンでございます。
頭部の黄色の飾り羽が特徴の、凛々しいさが特徴的です。

いつも、一度水槽の前に参りますと、
20分でも30分でも眺めておりますので、
外に出れば、暗くなっていることもしばしば。(私の話ではございますが)

先ほどから、暑い暑いと申しておりましたが、
昼と夜との温度差は激しく、
少々肌寒さを感じる時もございますので、
くれぐれもご自愛くださいますように。

それでは、どこからか私を呼ぶ鳴き声が
するようでございますので、
本日はこれにて失礼致します。
……あれは何ペンギンでございましょう。

才木

光陰矢の如し

お嬢様、お坊ちゃま。ご機嫌麗しゅうございます。
才木でございます。

気づけば、桜も散り、
私が大旦那様にお許し頂き、
お給仕を初めてさせて頂いてから、二ヶ月程が経って参りました。

光陰矢の如しなどと申しますが、
この二ヶ月はまさにそれでございまして、
あっという間のことでございました。

気づけば、私の後に、
真澄と諏訪部。
二人も入って参りました。

自身をより磨くとともに、彼等後輩に恥じぬよう、お務めをし、お忙しいお嬢様お坊ちゃまが、ティーサロンにて、よりお寛ぎ頂けますよう、努力して参ります。

今後とも、どうぞ宜しくお願い致します。

才木

お初にお目にかかります

お嬢様、お坊ちゃま。
お初にお目にかかります。
私、才木と申します。

大旦那様から
お許しを頂きまして、
フットマンとしてお仕えしております。

まだまだ至らぬ点、
未熟な点ございますが、
ご多忙なお嬢様お坊ちゃまに、
ゆったりとお寛ぎ頂けますよう、
誠心誠意、努力を致しますので、
よろしくお願い致します。

桜も咲き、暖かくなっては参りましたが、
遅い時間はまだまだ寒うございますので、
風邪など引きませぬよう、
お過ごし下さいませ。

それでは、失礼致します。

才木