五月雨は梅雨

お嬢様、お坊っちゃま。
奥様、旦那様。
ご機嫌麗しゅうございます。才木でございます。

いよいよ梅雨入り、
低気圧が攻め込んできますので、
私としては、雨よりもそちらの方が厄介です。

こんな気候が続きますと、
否応なしに気は沈むものですが、
ふと顔を上げてみれば、
紫陽花が咲いていたりして。

季節に耳をすませてみますと、
憂鬱さというものも和らいで参りますね。
自然というのは、大きく雄大なものです。
都会に過ごしておりますと
忘れがちではございますが、
たまには目を向けてみるのも一興ですよ。

五月雨が激しく過ぎ去った後には、
晴れやかな夏がやって参ります。
カンカン照りの行楽日和。
いっぱいいっぱい楽しんでくださいませね。

今からスケジュール立てが忙しいですね。
今年は、何を致しましょうか。

才木

チャムハムくんとあいすきゃんでー

お嬢様、お坊っちゃま。
奥様、旦那様。
ご機嫌麗しゅうございます。才木でございます。

近頃は急な暑さで、
早くも季節の移り変わりを感じさせられ、
私達の部屋では、チャムハムくんが、
(くんまでが名前らしいです)
舌を出し、息を荒くして寝そべっております。
その隣には、同じく佐々木が。
左隣には、浪川が。仲良く川の字です。
そう言えば、当月は、端午の節句もありましたね。

私?
私は、涼しい顔で、読書に勤しんでおります。
こういったものは、気の持ちようなのです。
強い精神力さえあれば、
多少の我慢など些事でございます……

「才木くん、私たちにも、アイスくださいよ」

嫌です。
アイスキャンディーは、文明の叡智ですね。

とはいえ、効能はそこまで長くありません。
30分もすれば、川の字の仲間入り、
何の字になるのかは良くもわかりませんが、
仕方の無いことです。

次の機会があれば、皆の分も含めて、
調達することに致しましょう。
チャムハムくんには、何がよろしいでしょうか?

お嬢様方のご意見も是非お聞かせくださいませ。

それでは、失礼致します。

才木

花より団子、団子より酒

お嬢様、お坊っちゃま。
奥様、旦那様。
ご機嫌麗しゅうございます。才木でございます。

近頃はお日柄もよく、暖かく過ごしやすいですね。
花粉さえなければ、快適な日々ですよね。
恨み辛みは尽きないところです。

さて、先日も申しましたが、
お給仕をさせて頂いて1年が経ってまいりました。
同期3人、仲良くこの日を迎えられましたことは、
感謝の気持ち尽きないところですし、その幸運を喜ばざる負えません。

この1年、ティーサロンにも様々な変化があったことと思います。
ただ、乗り越えて、受け止めて、邁進する、何がありましてもこれに尽きるところではないかと。
忘れることと慣れることも、個人の考えとしては、良いことではないと、存じております。
楽に生きる、これは素晴らしいことです。
とはいえ、苦があってこそ、な部分もしばしば。
全てを内包するのが、やはり人の常ですから。

結局のところ、私としては、全ても楽しんで、参りたいなと思うところなのです。
温かく支えて頂いた御恩に報いる為にも、
同期3人尽力し、しかし気負わず、
いつもニコニコと励んで参りますよ。

大それたことですが。
皆様の素晴らしい人生の、一助が出来れば、
これが何よりの幸福です。
今後ともどうぞよろしくお願い致します。

……

「桜」「団子」「会う」

春は出会いと、別れの季節でございます。
どちらも突然に、いずれはやってくるものかも知れません。
桜いうのは、とみに綺麗なものですね。でもそれは終わりがあるものこそ、と思うことがあります。
散りゆくものは美しい。
でも、やはり、そんな美しいものを目の前にして、感じるのは、お腹が減ったということですね。
生を感じると、結局お腹が減るのです。そして、酒を飲みます。
少し酔って参りますと、より綺麗に見えて参りますね。
桜の樹の下には、死体が埋まっている。それは恐らく担保なんでしょうね。
両極があるから、いとをかし。
さらばさらばと散りぬるを。
来年はまた新しい桜に出会いますね、
それはきっともっと美しいのだろうと、期待を込めて。
春眠を貪りたい時節ですね。ゆるりと。

……

掌編でも綴ろうと思いましたら、
ただのミニコラム・ポエムになってしまいましたね。

何となく文章に浸るというのも楽しいものですよ。一活字中毒者としては、お勧め致すところです。

とりとめのなくなって参りましたので、
本日はこの辺りで失礼致します。
続きは書庫の片隅で、お話出来れば。
では。

才木

オールバックと1年

お嬢様、お坊ちゃま。
奥様、旦那様。
ご機嫌麗しゅうございます。
才木でございます。

近頃、前髪が現れている私でごさいますが、
その経緯を皆様にもお伝え出来ればと思い、
筆をとった次第です。

とある日のことです。
お給仕に向けて、支度を整えていた私。

私「(これは……)」

まとまらない髪に言葉を失う私です。
そもそも執事としての名を頂くのと同時に、
大旦那様に決めて頂くものですから、おいそれと変えるわけに参りません。

前髪を恨みながら、ティーサロンに向かいました。
1日くらいでしたら、大目に見て頂けるのではと。

浪川や佐々木などは、大丈夫と言ってくれますが、
そう思っても、やはり気は休まりませんでしたが。

ティーサロンに着きますと、水瀬に出会いました。
ファーストフットマンであり、寮長でもあり、日頃は燕尾服の管理も仰せつかっている水瀬ですから、
私達の身だしなみには、厳しい。それがお務めですから当然ですが。
叱責の一言程度は覚悟しながら、声をかけました。

私「おはようございます」
水瀬「おはよう、才木くん……あれ?」
私「な、何でしょう」
水瀬「普段と少し違うね」
私「滅相もございません、そんなそんな、さて今日もお務め頑張るぞー」
水瀬「ああ、前髪か」

万事休すです。
四面楚歌、ああ哀れなり。

私「違うんです、これは勝手にその、」
水瀬「いいと思うよ」

水瀬は去っていきました。
あまり状況が飲み込めません。
もしかしたら、自身が思うよりも、微細な変化で、気づかれていないということなのかも知れません。
支離滅裂ですが、そんな考えに至りました。

佐々木に確認してみると、バッチリだよ、などと返ってきました。
ありがとうございます。
しかし、いま求めているのは、優しい一言ではないのです。

佐々木から聞いたのか、何やら慌てている私を見て、
浪川がやって参りました。

浪川「そんなに気になるなら、大旦那様に聞いてみたら?」
私「いや、でも、こんな些事で大旦那様を煩わせる訳には……」
浪川「きっと聞いてくれるよ、多分」

良い奴です。
切り替えの早い私は、御所望の本を届ける際に、大旦那様に伺う事に致しました。

私「少々よろしいでしょうか」
大旦那様「どうした」
私「かくかくしかじか、という訳で、この前髪なのです」
大旦那様「ほお」
私「お許し頂けるでしょうか……?」
大旦那様「……いいんじゃないか」
私「ありがとうございます」

流石大旦那様でございます。
寛大なお心でお許しを下さいました。
そもそも「そこまで気にせずとも」のような顔をされていたのが、気にはかかりますが。
何はともあれそのようなことで、ニュー才木が生まれた訳です。変化としては微細すぎて、8分の1ニュー才木くらいなあれですけども。

与太話はこのくらいで、脇に置き。
ティーサロンのアニバーサリー期間などもありますが、
私達同期3人も4月8日で、丁度1年が経つようです。
時の流れというのは、不思議なもので、
常にそこにあるのは確かですが
私達に何も感じせずに、過ぎ去って参ります。
だからといって、無味乾燥に過ごすのは、悲しいものです。
より誠実に、より楽しく。彩り豊かに参りたいものですね。

一先ず春ですから。
桜色で、華やかに。
花より団子。私は、花より酒と言ったところです。

今後とも、どうぞよろしくお願い致します。

才木

ああ、バレンタイン

お嬢様、お坊ちゃま。
奥様、旦那様。
ご機嫌麗しゅうございます。
才木でございます。

お屋敷のバレンタインといえば、
バレンタインサロンなどもございました。

とはいえ日本流のバレンタインですと、
基本的には私達の出番はなく、
常に変わらずお務めするのみですが、
折角のイベントでございますし、
古今東西見渡せば、
そもそも男性が何かをするものですから、
ここは一つ私も、何かをしたいなと考える訳です。

私、同期に浪川と佐々木がおりますが、
使用人宿舎では、同部屋をあてがわれておりまして、
何となく、そんな皆を伝えてみたのでございます。

私「折角だから、何かないだろうかね」
佐々木「チョコは食べたいですけどねえ」
浪川「何かって言っても難しくないですか?」

佐々木は甘い物が好きです、
ですけど、作るのは苦手です。
浪川はこのような時、客観的です。

私「それを考えたいんですよ、ほら女性の方だと友チョコとかあるじゃないですか、ああゆうのは」

二人共、何が楽しいのか、といった顔です。

私「チョコ嫌いですか?」
二人「才木くんのは別に、いらない」
私「悲しいです」

私も、あげても、
殊更楽しい気はしませんでしたから、
この案はなしになりました。

私「他になにかありますか?」
佐々木「インスタ映えするのがいいと思うんですよ」

佐々木の流行語です。
インスタのことはよく分からないようです。
私もよく分からないのですけど。

私「例えば?」
佐々木「そこは……浪川くんが」
浪川「綺麗で可愛い……とか?」

答える誠意は、素晴らしいですね。

私「何か抽象的ですね、具体的に何をするのか決めないと」
佐々木「才木くんが考えてくださいよ」
私「ぐう」

そもそも私は何がしたいのでしょう。

浪川「明日もお勤めがあるから、私は、寝ますね」
佐々木「それもそうですね、そうしましょう」
私「何かやりましょうよ」
佐々木「才木くんが、決めたら、それにしましょう。じゃあ、後はお願いします」
浪川「お願いします」

任せられてしまいました。
ただ、三人集まって、決まらなかったことが、
一人で決められるはずもありません。
本でも読みながら、そのまま眠ってしまおうと思います。

何となく過ごすというのも悪くないですし、
気は置けませんから、
何となく楽しくはなるでしょうから。
何とかはなるでしょう。

使用人らしからぬ、コメントではありますけども。

ああ、バレンタイン。
何か面白いことが、あればやってみたいですね。

後は、春が駆け足で、
参りましたら、なおよいところです。
早く来い来い、春よ来い。

才木

暖炉の前で

お嬢様、お坊ちゃま。
奥様、旦那様。
ご機嫌麗しゅうございます。
才木でございます。

新たな春を迎えまして、
少しは暖かくなって参るのかと
思い込んでおりましたら、
やはり季節柄いよいよ寒くなっていくばかりで、
本を捲る手もかじかんで仕方ありません。

暖炉の前で、暖かいお飲み物と共に、ゆっくりと過ごさせれるのが、
一番良いやも知れませんね。
心暖まる物語は、私がご用意致しましょう。

相変わらずのことでございますが、
くれぐれもご自愛くださいませ。

改めまして、
本年もよろしくお願い致します。

才木

ゆく年くる年

お嬢様、お坊ちゃま。
旦那様、奥様。
才木でございます。

いよいよ年が変わるようで。
近い内には、元号まで変わってしまうようですね。

新しくなっていくものには、
少しだけ寂しさもありながら、
何よりワクワク致します。
いつまでもそういった、
好奇心を、忘れないでいたいものです。

クリスマスが過ぎて、
勝手にご褒美だと思っておりました、
ペンギン達がいなくなってしまいまして、そこから感じる寂しさなのかも知れませんが。

とみに寒くなって参りましたから、
皆様もくれぐれもご自愛くださいませ。

旧年中は、お世話になりました。
今後ともよろしくお願い致します。

書庫の整理がまだ残っておりますので、
この辺りで失礼致します。

面白い1冊が出て参りましたら、
お届け致しますね。
そうやって内容を確認しながら
やっているから、
終わらぬのだと、お叱りの声が
届いてきそうです。

より良い1年を願っております。

才木