わたしのカヌレ

昔からカヌレが好きで。
もう5年以上前でしょうか、一度私の提案で当家のパティスリー用にご用意しようという話があったのですが、焼き型の問題で流れてしまい、その後再びティーサロンでお出ししたという経緯がございます。
その上で今回改めて声をかけていただきカヌレをご用意できることとなりました。

 

表面の飴のようなぱりぱり、その下の厚みのある硬さ、そして中はしっとりもちもちと。
ただ、ぱりぱりならいいというものではございません、伝統菓子という側面を鑑みますと、多少しっとりした上でリズムの良い食感が残るくらいが美しゅうございましょう。
顔に近づけたときの香ばしい香り、そして口の中で広がるラムやブランデー、濃厚な卵の風味。
お菓子の由来も、ボルドーという世界屈指のワイン生産地で、その過程で余る卵黄を消費するために生まれたというエピソードすら美しく感じます。

このように
カヌレという菓子においては、残念ながらシンプルなスタイルこそが至高であると認めざるを得ません。

 

しかし、私がカヌレをティーサロンで提供した数年前とは違い、最近は至る所でカヌレを目にするようになりました。
応援していたロックバンドが売れてしまったときのような喜びと悔しさが入り混じっているのが正直なところではございます。ただそのような環境だからこそ、定番のカヌレでは私がご用意する価値が薄いのではないかと思い、今回は、少しアクセントのある味わいを提案いたしました。

 

軽くスモーキーなウィスキーをベースにハチミツとハーブを漬け込んだリキュール、ドランブイという英国のお酒を使っております。
ボルドーは過去英国領だったこともございますので、浅からぬ縁があるリキュールなのかなとも思います。

深まる秋にぴったりの焼き菓子ですので是非お手に取っていただければ幸いです。