おかしい…………
季節、天候、潮の動き、そのどれもが、言うことなしの一日だったはずなのですが、この日の釣果は朝から全くもって振るいませんでした。
ただ、別に釣れなかったわけではございません。むしろ数でいえば普段より多いくらいでございました。
では何が不満なのか、それはかかれどかかれど、釣り上がるのは15cmほどの小さなサバばかりだったからです。
狙いの黒鯛は一向に現れず、たまに違う魚を釣ったと思ったら小さな草フグだったりと、成果が出ぬままただ時間が過ぎていくばかりでございました。(草フグは鋭い歯で糸を切ったり、釣れても食べるのが難しかったりと、釣り人にあまり好かれていない魚でございます)
それでも私は気持ちが折れないよう様々な釣り方を試したり、ご飯休憩を挟んだりしながら釣りを続けました。
しかし、結局は何も起こらず、気が付くと日が落ちかけておりました。
さらにその頃になると、小さなサバすらもかからなかったので、「さすがに帰ろうかな……」などと考えていると、いきなりウキが〝シュン!〟と沈んだのです。
久しぶりのあたりに少々反応が遅れながらも、何とか合わせることには成功いたしました。
引きはそれほど強くないか…
あまり大きさには期待ができませんでしたが、それでも「小さくても黒鯛なら良し!」と、逃がさぬよう丁寧にリールを巻きました。そしてたいして時間もかからず釣り上がり、何だ何だと釣れた魚を見てみると、そこには小指サイズのクロホシイシモチがかかっておりました。
この子を見た瞬間、さすがの私でも〝ポキッ〟と、気持ちが折れてしまいました。(クロホシイシモチは最大でも12㎝ほどで、その見た目から私と友人は金魚と呼んでおります)
そうして泣く泣く帰路につくことにいたしました。
黒鯛はいつになったら釣れることやら……
次こそは最近の悪い流れを払拭し、お嬢様のお夕食のテーブルに、黒鯛の活け造りをご用意したいと存じます。
終わり。