年始

お嬢様、明けましておめでとうございます。

2026年を無事迎えることができ、なによりでございます。

今年は、去年よりもさらに邁進し、お嬢様に喜んでいただけるような挑戦ができれば幸いでございます。

 

時にお嬢様、今年のおみくじは引かれましたか?

私はもちろん引きにまいりました。

 

結果は一体どうだったのか?まずはこちらをご覧くださいませ。

 

 

中吉というと、一般的には「大吉」「吉」の次に位置する結果でございますので、まずまずと言えるのではないでしょうか。

そして吉凶の結果と同じくらい気になるのが、後に続く文章でございます。

 

ということでここからは、それぞれの運勢の詳細について、紐解いてまいりたいと存じます。

 

 

初めに和歌の部分でございますが、恥ずかしながら私は、今回こうしておみくじとしっかり向き合うまで、この部分を〝なんとなく〟で、読んでおりました。

(ちなみに、ご存じのお嬢様も多いかもしれませんが、この部分は神社だと和歌で、お寺だと漢詩が多い傾向にあるそうです。今回は神社で引きましたゆえ、和歌が掲載されておりました)

 

ではまず書かれている和歌でございます。

 

【疎くなる人を何とて 恨むらん知られず 知らぬ折もありしに】

 

これは「新古今和歌集 巻第十四 恋歌四」の撰歌であり、西行法師が詠んだ歌でございます。

 

そして、その左側にはこう書いております。

 

【金がめあてで集まる人ならば無くなれば去ってゆくのも人である。知らぬ昔もあったと思えばなんら恨むに足りない。】

 

ここまでが、この和歌を訳した文章でございます。

ただ、調べてみると「疎くなる人」の部分は、恋歌に入集されているだけあり、恋人を示しているそうで、「恋人との関係が希薄になったとはいえ、どうして恨むことがある、お互いに知らない時もあったではないか」と、恨みや悲しみといった感情を、「知らない時のほうが長かっただろう」と、達観して受け入れる、という感情を詠んだ歌らしいのです。

 

しかし、このおみくじの「疎くなる人」の「人」は、「金がめあてで集まる人」と訳されておりますので、書かれている通りに受け取るのが良い気がいたします。(というよりも、書いてしまったあとに言うのも変でございますが、このおみくじを作った方は、そうとう和歌の歴史に精通し、あえてこのように訳していると考えるのが妥当でございます。そしてさらに申しますと、この和歌の部分こそが最も大切な神様からのお告げらしく、それを人の手を介して訳し、引いた人に届けているということなので、私が付け焼刃の知識を使って訳すのもお門違いな話でございます。)

 

そしてその先の文章に続きます。

 

【運不運は世の常の習い事。他に左右されず、慈愛と謙遜の心で開運を待て。】

 

この部分は恐らく、お告げに対しての解決策だと私は考えます。

この文章だけで読み解くと、「幸運と不運の移り変わりは、この世に生きる限り当たり前のことだから、周りに左右されず、自身の持つ慈愛と謙遜の心を忘れずに開運を待て」。そして、そこに【金がめあてで……】の文章を合わせると、「様々な人間関係を築いていくなかで、必ずしも良い人だけではなく、悪い意味で打算的に寄ってくる人もいるであろう。(このおみくじ的には、特にお金にまつわることで)そして、それで悲しい思いをするかもしれない…しかし、慈愛と謙遜の心を持ち続けていれば、損得抜きで分かりあえる素晴らしい人間関係が、その先に待っているかもしれない」という感じでしょうか?

 

この結果は心の中に留めておくといたします。

 

 

では次に、普段の生活にかかわる運勢の詳細について見てまいります。

 

【願望 人の助力あれば叶う】

最近の願望は、やはり私のオリジナルブレンドティーをお出しする、もしくはエクストラティーを開催することでしょうか。確かにこれは優しき先輩方に助力を乞えば叶うやもしれません。もちろん自分で努力することも忘れてはいけませんが。

 

【待人 直ちに来たる】

これは分かりやすうございます。

使用人が心の底からお待ち申し上げておりますは、お嬢様でございますので、この明石、大変嬉しゅうございます。ただ、ここで気を付けなければならないのは、来てくださったことに満足してしまうことでございます。そこからいかにお嬢様が快適にお過ごしいただけるようご案内できるか、そこをおろそかにしては、せっかくの結果も宝の持ち腐れでございます。

 

【失物 時たてば出てくる】

ここ最近、物を失くしたということは特にございませんが、待っていれば自然と出てくるということでございますので、これもありがたい限りでございます。ただ、少し気になるのは、逆に考えると、どれだけ探しても時間が経たなければ見つからないということでございます。仮にここに書かれている「時」というのが、一時ではなく多大な時間を要するとしたら、それは大変なことでございます。

もし、私の物ではなく、お嬢様の大切な何かを失くしてしまったら……考えるのはよしましょう。常日頃気を付けるに越したことはございません。

 

【旅行 いずこも可。但し色事をつつしめ】

なるほど、硬派な私であれば、今年の旅行はどこへ行っても必ず成功するということでございますか。まずは気合を入れて釣り旅行計画を練ることにいたします。

 

【商売 慎重なれば利あり】

ついにお屋敷の紅茶や焼き菓子を日本全国に広めるときがやってきましたか。まずは焦らず慎重に作戦を考えるべきでしょう。そしてその作戦を実行に移すとなったら、例のギフトショップ号が活躍するかもしれません。(まさか、お嬢様の為以外にもこんな使い方があったとは!)夢が広がるばかりでございます。

 

【方角 北西の方よし】

このお屋敷より北西と申しますと、練馬区辺りでしょうか。いや、さらに範囲を広げてみましょう。埼玉県や長野県を越え、さらにその先、富山県や石川県などの北陸を越えると、そう、そこに広がるは日本海でございます。

ここで先ほどの「旅行」でございます。確かおみくじには「釣り旅行なら今年がよし!」と、書いておりました。つまりここから導き出せる結論は、「お嬢様に満足していただけるお魚は日本海に生息していたのか!!」で、ございます。

とりあえず目的地は決まりましたので、次は時期を考えとうございます。

 

【学業 沈着なれば成る】

これは学校でのお勉強以外にも資格勉強なども当てはまるらしいのですが、欲しかったティーアドバイザーの資格は去年取得したゆえ、特にこれといってないのですが、仮にその上のティーインストラクターやはたまた全然違う資格を取りたいと思ったときはこの言葉を忘れずに落ち着いて励みたいと存じます。

 

【争事 退くが勝】

争い事……。何かあったでしょうか……?

サッカー日本代表であれば、今年の6月から負けられない戦いがあるのですが……。まさか、サプライズで私が選出される可能性が!?確かに密かに狙ってはおりましたが……。メンバーの最終決定は、確か5月31日の壮行試合のあと。今から体を作っておいたほうがよさそうでございます!

あっ、それとお嬢様にお伝えしたいのですが、昨年お出しした「スポーツDVD」のとある競技のシーンは、絶対に森保一監督には見せないでくださいませ。

 

【転居 焦るなかれ】

早急に自室を移す予定もございませんので、いきなり大旦那様に「明石、2026年はイギリスの別荘地で執務をしてくれ」などと命じられない限りはこの結果は特に気になりません。

これが今の私にとって一番関係ないかもしれません。

 

【出産 女児安んずべし】

失礼いたしました。先ほどの言葉を撤回させてくださいませ。

性別で何かを分けるという考え方が古臭い時代ではございますが、さすがにこれは………と、思ったのですが、なんとこの「出産」という項目、実は新しい物や計画を創造するときにも関係するらしいのです。そして、ここからはAIによる概要でございますが、「出産・女児・安し」などの言葉には、そのままの意味の他に「アイデアや計画が円滑に進み、安泰である」という意味合いもあるそうです。

ならば、オリジナルブレンドティーを考える年としては素晴らしいタイミングなのかもしれません。

 

【病気 医師次第でなおる】

まずは体調を崩さないことが大切でございますが、仮にかかってしまったら、速やかに病院へ足を運んだ方がよいということでしょう。私は流行り病の気があるとき以外は、ほっといてしまうところがございますので、今年は早めの診断を受けるよう心掛けることにいたします。

 

【縁談 疑いの心なければ良縁なり】

調べてみますと「縁談」というのは、おみくじによくある「待人」や「恋愛」(なぜかこのおみくじには無いですが)とは違って、結婚に関しての縁に重きを置いているらしいのです。もしおみくじの中で今後無くなる項目があるとすれば、この「縁談」な気がいたします。最近の考え方的に「趣味」とかに変わってもおかしくないのではないでしょうか。

 

と、まあここまで色々書いてまいりましたが、引いたおみくじに書いている言葉や意味を調べ、自分自身の周りの環境や人間関係と照らし合わせ、自分なりの解釈を導き出してみる。

きっとこれもおみくじの楽しみ方の一つなのでしょう。

 

もし、お嬢様もおみくじを引いてらっしゃるのであれば、是非試してみてくださいませ。

きっと新たな発見があることでしょう。

 

ではお嬢様、改めまして本年もよろしくお願いいたします。

 

 

おまけ

 

今回のおみくじの結果でございますが、「慈愛と謙遜の心で開運を待て」「時たてば」「沈着」「焦るなかれ」など、とにかく慎重さを求められている気がいたします。

なのでこの「慎重」という言葉を一つキーワードとして、今年を走り抜けたいと存じます。

 

終わり。

年末

ご機嫌麗しゅうございます、お嬢様。明石でございます。

今年もあと僅かでございますが、お嬢様はどんな一年を過ごされましたか?

私は、様々なギフトショップの催し物に参加したり、ティーアドバイザーの資格を取ったりと、使用人として充実した日々を過ごせました。

ここまで頑張れた要因は、ひとえにお嬢様のおかげでございます。

そして、それらによって少しでもお嬢様の生活に喜びや笑いが増えていたのであれば、使用人冥利に尽きる次第でございます。

改めまして、今年もありがとうございました。

 

おまけ

 

前回掲載したブログで、りんご飴のお話を書かせていただきましたが、その後もう一度同じくらいの時間帯に足を運んでみると、やはりそこには例の屋台がございました。

ただ、よくよく見てみると屋台ではなく、いわゆるキッチンカーと呼ばれるものでございました。

これならば何もない所に、いきなりお店が出現しているのも頷けるというものでございます。

そしてそのキッチンカーに並ぶ煌めくお品物の中から、今回はりんご飴ではなく、動物をかたどったマシュマロを手にし、その場をあとにいたしました。(このマシュマロに関しては、とある事情で感想を割愛させていただきます)

帰路についていると、ふと、とあることを思い付きました。

キッチンカーがあれば、出張ギフトショップができるのではないか!と………

つまり、お嬢様の別荘やご別宅付近で楽しんでいただくことはもちろんのこと、お出かけ先、あるいは社会勉強の合間などにお腹を空かされた場合に即座にキッチンカーで駆けつけ、スコーンを振る舞うことができる!ということでございます。

さらに申しますと、お嬢様のためのキッチンカーでございますので、最低でも二階建ての観光バスサイズであることは間違いなく、そうなると車内でおくつろぎいただける空間を確保することができます。

そしてそこにキッチンスペースを完備することができれば、お嬢様がどこにいらしても、ひとときの優雅なティータイムを楽しんでいただけるのです!

 

実装された暁には、私が責任を持ってキッチンカー(ギフトショップ号)を走らせたいと存じます。

 

それではお嬢様、良いお年をお迎えくださいませ。

 

終わり。

遠回り

ご機嫌麗しゅうございます、お嬢様。明石でございます。

お嬢様は〝遠回り〟をされたことはございますか?

「人生の遠回り」とか、そういう深い話ではなく、単純に道の話でございます。

先日、私は何となく遠回りをしたくなったので、違う道を使用して帰路についておりました。

「久しぶりにこの道を通るな〜」などと考えていると、行く先に覚えのない屋台がございました。

近くでお祭りが開催されているとか、何か特別なことがあったわけではなく、その一店だけポツンと道沿いに構えていたのです。

 

そんな、周りの風景にまったく溶け込めていない屋台に何が置いてあるのか、俄然興味が湧きました。

 

屋台の前まで歩き見てみると、美味しそうな鯛焼きだったりマシュマロなど、思っていた以上にそそられる品々が売られておりました。中でもひときわ輝いて見えたのがこちらでございました。

如何でしょうか?

今日日、お祭りの屋台でもこんな立派なりんご飴は見かけません。

あの時、別の道を選んだ私を褒めとうございます。

 

お嬢様も時間に余裕があれば、遠回りをしてみては如何でしょうか?

意外な出会いがお嬢様を待っているかもしれません。

 

私事でございますが…

私、5年目にして、まさかのティーアドバイザー取得でございます!

胸に新たなバッジを付けることになるとは、数年前の私では考えられないことでした。

これで私もより紅茶に携われる機会が増え、ブレンドティーを考案したり、もしかしたら紅茶の催しに参加することができるかもしれません!

そして、それらを通じて、お嬢様の楽しみが少しでも増えるのであれば、これ幸いでございます。

 

これからも紅茶の資格を持つものとして恥ずかしくないよう、精進してまいります。

 

終わり。

おさかな

 

ご機嫌麗しゅうございます、お嬢様。明石でございます。

冬が近づき、心も体も寒くなる季節でございますが、そんな季節でも元気が出るような焼き菓子「おさかなクッキー」を考案いたしました。

 

おさかなクッキーはバターなどの甘味をできるだけ取り除き、しょっぱさだけで勝負しようという、かっこよさに加え、ぴょこぴょこ泳いでいるかのような可愛らしいおさかなのフォルムを合わせた、隙のないクッキーでございます。

まだ試したことはございませんが、おさかなクッキーの上品な塩味は、紅茶を始め、お酒、日本茶、フルーツジュース、コーヒー、炭酸飲料、お水と、この世のあらゆる飲料と合わせやすいことでしょう!(恐らく)

なので、様々な場面で活躍させていただければ幸いでございます!

また、11月はギフトショップのお誕生日ということで、関わりのある桐島がデザインを施したコンパクトミラーや、考案した焼き菓子エメラルドフロウジョンフィナンシェ、宗方が初めて考案した焼き菓子オレンジピューレなどもおすすめでございますので、是非合わせてお手に取ってくださいませ。

今月もお嬢様のお帰りを心よりお待ちしております。

これからのクリスマスシーズンや年末年始もお嬢様がお元気で過ごせるよう、心よりお祈り申し上げます。

 

追記

私、スランプかもしれません……

 

先日とある使用人の面々と久しぶりに釣りに行ってまいりました。

前回の私は糸を垂らす度に魚がかかり、スワロウテイル釣り部のエースとしての自覚が芽生えはじめておりました。

が、今回の釣果でそんな思いは雲散霧消に消え去りました。

この日は朝から数時間釣りをしておりましたが、私が釣った魚はなんと僅か一匹!

他の使用人は私を横目に色々な種類の魚を釣っておりました。

これが一時的なスランプなのか、それとも私の本来の実力なのか………

このままではお嬢様に特大のお魚を振る舞わせていただくという、私の使命が達成できません!

なので、初めて釣竿を手にしたときの初心を思い出し、一からやり直す次第でございます。

 

終わり。

釣り6 ~大敗北~

 

おかしい…………

 

季節、天候、潮の動き、そのどれもが、言うことなしの一日だったはずなのですが、この日の釣果は朝から全くもって振るいませんでした。

ただ、別に釣れなかったわけではございません。むしろ数でいえば普段より多いくらいでございました。

では何が不満なのか、それはかかれどかかれど、釣り上がるのは15cmほどの小さなサバばかりだったからです。

狙いの黒鯛は一向に現れず、たまに違う魚を釣ったと思ったら小さな草フグだったりと、成果が出ぬままただ時間が過ぎていくばかりでございました。(草フグは鋭い歯で糸を切ったり、釣れても食べるのが難しかったりと、釣り人にあまり好かれていない魚でございます)

 

それでも私は気持ちが折れないよう様々な釣り方を試したり、ご飯休憩を挟んだりしながら釣りを続けました。

しかし、結局は何も起こらず、気が付くと日が落ちかけておりました。

さらにその頃になると、小さなサバすらもかからなかったので、「さすがに帰ろうかな……」などと考えていると、いきなりウキが〝シュン!〟と沈んだのです。

久しぶりのあたりに少々反応が遅れながらも、何とか合わせることには成功いたしました。

引きはそれほど強くないか…

あまり大きさには期待ができませんでしたが、それでも「小さくても黒鯛なら良し!」と、逃がさぬよう丁寧にリールを巻きました。そしてたいして時間もかからず釣り上がり、何だ何だと釣れた魚を見てみると、そこには小指サイズのクロホシイシモチがかかっておりました。

 

 

この子を見た瞬間、さすがの私でも〝ポキッ〟と、気持ちが折れてしまいました。(クロホシイシモチは最大でも12㎝ほどで、その見た目から私と友人は金魚と呼んでおります)

そうして泣く泣く帰路につくことにいたしました。

 

黒鯛はいつになったら釣れることやら……

 

次こそは最近の悪い流れを払拭し、お嬢様のお夕食のテーブルに、黒鯛の活け造りをご用意したいと存じます。

 

 

終わり。

変身9

 

11

 

猫の姿だと、同じ道でもこうも長く感じるものなのか。

 

明石太郎はトンカツと共に寅組のアジトに向かっていた。

 

「おいトンカツ、まだ着かないのか?」

 

「あと少しです!」

「それにしても太郎さんは戦うとすごいのに、体力は全然ないですね」

 

「うるさいわい!今日は朝から疲れることがいっぱいあったんじゃい!」

 

「へー!例えばどんなことです?」

 

「どんなことって。朝から大家…いや、人間に追い回され、さっきの広場にあった大きな建物に登り、そして君たちを悪い猫から救った!こんな芸当私以外には到底不可能だろうな!」

明石太郎は、昂然と胸を張りながら言った。

 

「それは確かに。でも何であんな所に登ろうとしたんですか?きっと、なんにもないですよね?」

 

「え?まあ、それは猫の憧れというかだな………」と、考えていると、明石太郎はふと何か大事なことを見落としている気がした。

 

「そういえばトンカツよ。さっき言ってたとある猫を探しているって、詳しくはどんな猫なのだ?」

 

「えっ?ミケさんのことですか?」

 

「なに!?ミケだと!!」

 

「知っているんですか?」

 

「知ってるもなにも、その猫ならさっき会ったぞ!」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「ああ。白と黒とオレンジ色のまだら模様で、ひょろっとしていて、人間の食べ物を当たり前のように頬張っていた……」

 

「ままま、間違いないです!!聞いていた特徴と一致してます!」

「戻って会いに行かなきゃ!」

トンカツは慌てて踵を返そうとした。

 

「まて、トンカツ。先にアジトに向かおう」

 

「えっ!?でもミケさんが!」

 

「まずは君の先輩たちを運ばないと」

明石太郎はリヤカーを見ながら言った。

「それに見つけたとしても無駄足になるかもしれない」

 

「なんでですか?」

 

「いや、ミケと話した限りでは、あまり戦いたくない雰囲気だった」

 

「そんな………」

 

「まあ、がっかりするな。丑組だろうがジャックだろうが、私が何とかしてやるから!」

 

「は、はい…」

 

 

 

ほどなくして、明石太郎とトンカツの歩く先に、石塀で囲まれた大きな廃屋が現れた。視界に映る窓ガラスはすべて割れており、建物のそこらじゅうに蔦がはっている。

 

「こんな所に建物があったとは」

 

「太郎さん、ここが我々のアジトです!行きましょう」

明石太郎とトンカツは歩を進めた。

 

敷地の入り口には大きな門が建てられていたが、扉自体は古く、もう何年も開けっ放しであることが容易に想像できた。

 

門の前まで来ると、「少し待っててください」と、トンカツが伝え、とことこ中に入っていった。

 

少しすると話し声が聞こえた。

「おートンカツ……大変………そうか……ふむふむ……」

なにやら誰かと話しているようだった。

それから1分間くらい、途切れ途切れに聞こえる会話をなにげなく聞いていると、突然「えっ!!」と大きな声が響いた。

 

その声の後すぐに見知らぬ黒猫が敷地の中から足早に近づいてきた。

そして、私のもう隠す気のない立ち姿と運んできたリヤカーを何度も確認した。

 

「あ、あんたか……確かにミケさんじゃねー、まさか、こんな奇跡が…」

 

「どうですかハックさん?」

トンカツが、得意気な顔で歩いてきた。

 

「やるじゃねえかトンカツ!あのトロかったトンカツがよう」

 

「えへへへへ」

 

「おっと名乗り遅れた。俺の名はハック、アジトの門兵兼情報屋だ。あんたの名前はトンカツから聞いてるぜ、太郎ってんだろ?よろしくな!」

 

「よろしく。私が来たからには大船に乗った気でいてくれて構わないぞ!」

 

「そいつは頼もしい!あんたが来てくれたことで、ミケさんがいなくても、虎ノ進の旦那の作戦が決行できるかもしれねえ!」

「だが、まずは彼らの手当てが先だな」

そう言うとハックはリヤカーに近づき、怪我猫の状態を確認した。

 

「息はあるが、急いだ方がいいな。太郎、トンカツ、ついてきてくれ」

 

「もちろんだ!」

「はい!」

 

 

 

 

門を通り抜け中庭を進むと、大きな玄関扉の前までやってきた。

 

「さすがにリヤカーごとこの扉は入れないな。しかしハックよ、これ開けられるのか?」

猫が開けるには、中々に骨が折れそうなサムラッチハンドル式の扉であった。

 

「まあ見てなって」

するとハックはピョンとジャンプし、ドアの取っ手に捕まった。そして片方の前足で上部のボタンを押し、後ろ足でドア横の壁を思いっきり蹴飛ばした。

するとググっと少しだけドアが開き、すかさずハックはその隙間に体を入れ込み、下まで滑り落ちてきた。

そして最後に頭で押しながらドアを開くと、途中でガチャという音がした。

 

「よし、これで勝手に閉まらないはずだ」

中々の手際だった。

 

「どうですか太郎さん!これができるのは寅組の中でも数匹だけ。その中でもハックさんが一番スムーズに開けられるのです!」

トンカツが〝エヘン!〟という表情で言った。

 

「なぜお前が誇らしげなんだ」

 

「す、すみません」

 

まあ、確かにすごいがな……

明石太郎は、自室の扉と格闘した今朝のことを思い出した。

 

「だけどハック、ずっと開けっ放しにしとけば楽なのではないか?」

明石太郎はふと疑問に思った。

 

「昔はそうだったんだが、〝もし敵に攻められたらこの開けづらさが、守りとしての役目を果たしてくれる〟というおかみさんの助言を聞いてから、必ず閉めることにしているんだ。実際、アジトが手薄なときでも襲撃をうけなくなったしな」

 

「おかみさん?」

 

「我々のボス、虎ノ進の旦那の嫁さんで、目覚めし猫だった方だ。もう亡くなってしまったがな」

 

「目覚めし……、そういえばトンカツも言ってたが、それって何なんだ?」

 

「それはですね」と、今度はトンカツがしゃべりはじめた。

「一言で言いますと、人間みたいな猫のことです!おかみさん、ジャック、ミケさんがそれに当てはまります。そして恐らく太郎さんも……」

 

「なるほどな」と、明石太郎は納得した。そして全ての線が繋がった。

つまり、あの毛玉の死神によって罰を与えられ猫に変わった人間が、猫の世界では目覚めし猫と呼ばれているのだろう。

そして、良くも悪くも猫たちに大きな影響を及ぼしている…

 

「だから期待しているぞ明石太郎よ!」

 

「では、俺は怪我した彼らを運ぶために仲間を呼んでくる」

そうしてハックは建物の中に入っていった。

 

 

 

 

「これでよい」

怪我した猫たちをアジトの一室に運び、可能な限りの手当てを施した。

 

「これもおかみさんの知恵なのか?」

処置をした年老いた猫に聞いた。

 

「そうじゃ。しかし、ここまで完璧にできたためしはない。太郎さん、あんたが手伝ってくれたおかげじゃ」

 

「いやいや。これからも知りたいこと手伝えることがあれば、何でも言ってくれ!」

 

「頼りにしとるぞ」

年老いた猫の瞳は、希望に満ち溢れていた。

 

それから少し経ち、明石太郎が休んでいると、ひょこっとトンカツが部屋に入ってきた。

 

「あの~、太郎さんちょっといいですか?」

 

「どうしたトンカツ?」

 

「みんなが太郎さんと話してみたいと……」

 

「ん?」

詳しく話を聞いてみると、どうやらトンカツはアジトに戻ってから、私との経緯を仲間たちに自慢げに話していたらしい。

 

「やれやれ、しょうがないやつだ」

 

「ありがとうございます!」

 

まあ、ハックが虎ノ進親分と話し終えるまで、暇であったしな…

 

「では行きましょう!」

 

アジトにはかなりの数の猫たちがいた。そして意外なことに、ほとんどの猫が目覚めし猫を直接見たことが無かったのだ。なので、会うたびに質問攻めをされ、そのたびになぜかトンカツが鼻高々に答えていた。

「またこいつは…」と思ったが、ここまでくると何だか可愛く思えてきた。

 

そして、いつの間にか二匹の周りにはアジトにいたほとんどの猫が集まってきており、盛り上がりも最高潮に達していた。そんな折、ようやくハックが戻ってきた。

 

「おお、ハック。ずいぶんと遅かったな」

 

「ちょっとな……」

ハックは浮かない顔をしていた。

 

「太郎………まずいことになった」

 

「どうした?」

 

「ジャックが現れた」

 

「なに!?」

 

「トンカツ!」

 

「あっ、ハックさん!」

ようやくハックの存在に気づいたようだった。

「今、みんなにですね……」

 

「まて、悠長なことを話している暇はない。緊急事態だ!」

 

「緊急事態?」

 

「みんな、聞いてくれ!」

その場にいた猫たちにも呼びかけた。

 

「ドングリ野原にジャックが現れた」

 

「えっ?」

「うそだろ」

「ジャックだと…」

その言葉を聞き、先ほどまでの楽しげな雰囲気が一転した。

 

「現在、迎え撃っているのは、蟹丸組、ラクレア組、そして…」

ハックはちらりとトンカツの方を向いた。

「どん吉組だ」

 

「えっ……」

トンカツの顔から一気に血の気が引いていった。

 

「で、でもハックさん、確か虎ノ進親分がジャックとは戦うなって指令を出してたはずですよね?」

一匹の猫が尋ねた。

 

「そうだ。だから虎ノ進の旦那も俺も争いは起こらないと考えていた。蟹丸さんはともかく、どん吉さんとラクレアさんは、冷静に対処しようとするはずだからな。だが………」

 

「でも、もしかしたらあの方たちが揃えば勝てるんじゃないですか?」

「そうだよ、幹部の中でも実力のある方たちだし」

 

「10%」

 

「えっ?」

 

「旦那も俺も勝てる見込みはそのくらいだと予想した」

 

「そんな」

「彼らでも……」

 

ハックの表情からも、会ったときのような明るさは消えていた。

 

「僕……」

すると突然、トンカツがどこかに歩き出した。

 

「おい、どこへ行く!」

 

「僕……、ドングリ野原に行きます!」

 

「なっ!?落ち着け、トンカツが行ったところで、どうこうできる相手じゃねえ。命を無駄にするな!」

 

「でも僕もどん吉組の一員だ。だったら行かなきゃ!」

 

「まて、お前は太郎を連れてきたという大きな仕事を果たした!参加しなくたって誰も文句は言わん」

ハックが前足で止めようとした。が、それを振り切りトンカツは走りだしてしまった。そして割れた窓ガラスから飛び出していった。

 

「くそっ……」

 

「ハックよ、戦いが始まってからどのくらい経つのだ?」

横で見ていた明石太郎が言った。

 

「………正確には分からないが、太郎と会ったときには、すでに始まっていただろう」

 

「なるほど。なら、急げば間に合うかもしれないな」

 

「えっ!?ま、まさかお前…」

 

「私も向かう!」

 

「駄目だ!ミケさんがいない今、あんたがやられたらそれこそ打つ手がなくなる!」

 

「やられやしないさ。そもそも真面目に戦う気はない」

 

「どういうことだ?」

 

「勝つことはできなくても、助けることならできるかもしれない!大切な仲間なんだろ?」

 

「そうだが………」

ハックは考えた。確かに、必ず訪れるであろう丑組との決戦に、彼らがいるといないとでは大きく違う。

 

「わかった。ただ、俺も行く。そしてもし助けられないと分かったら、太郎は仲間を置いて必ず逃げると約束してくれ!」

 

「……了解した」

 

「よし」

そう言うとハックは、近くにいた一匹の猫に、虎ノ進の旦那に経緯を報告するよう伝え、向かう準備を始めた。

 

 

 

変身8

 

変身(登場猫物・用語)

 

明石太郎……この物語の主人公。(目覚めし猫)

朝起きると茶トラ猫になっていたが、持ち前の好奇心と前向きさで、アパートの外に飛び出す。その後トンカツやミケと出会い、現在は寅組を助けるため行動している。

 

トンカツ……寅組傘下であるどん吉組所属のハチワレ猫。

指令によりミケを探していたが、途中で敵対勢力である丑組の猫たちに襲われてしまう。が、明石太郎の助太刀により事なきを得る。その後、明石太郎を味方にするという大きな仕事を果たす。

戦いが苦手で好きではないが、意外と勇敢だったりする。

 

どん吉……寅組傘下であるどん吉組の親分。

寅組の幹部でもあり、武力と知力を兼ね備える実力者。寅組の中でも古参であり、虎ノ進親分のおかみさんやミケとも面識がある。現在は、同じく寅組の幹部である蟹丸・ラクレアと共にジャック率いる丑組と交戦中。

大柄で灰色の猫。

 

虎ノ進(とらのしん)……寅組の親分。

通称〝犬喰いの虎ノ進〟猫の世界では広く名が知られており、彼に惹かれて寅組に加入した猫も少なくない。大きな戦いでは自らが最前線に立ち部下たちを指揮する。

大柄なトラ猫。体はがっちりとした筋肉質である。

 

ミケ……寅組所属の三毛猫。(目覚めし猫)

唯一、規律厳しい寅組の中で自由を与えられている猫。その実力はいまだ不明だが、寅組の中ではジャックに対抗できる唯一の猫だと言われている。しかし、明石太郎と出会ったときは、戦いにあまり前向きではなかった。

好物は焼き魚。

 

おかみさん……虎ノ進の妻で現在は亡くなっている。(目覚めし猫)

野犬の群れに襲われていたところを虎ノ進に助けられ、そのことがきっかけで結婚する。そして虎ノ進に恩を返すべく、役立ちそうな人間についての情報を様々伝えた。しかし、野犬に襲われたときの怪我などが原因で結婚した数年後に亡くなった。

 

牛鬼(ぎゅうき)……現在の丑組の親分。

自己中心的な考えで心の中では常に自分さえよければいいと考えている。

武力はあまりないが、悪知恵と先代の血を引いているという理由で丑組の親分に就任した。

牛柄のぶち猫でかなりの大柄だが、ほとんどが脂肪である。

 

ジャック……丑組最強の猫。(目覚めし猫)

所属すれば面倒な食糧集めをしなくても、たらふく食事にありつけるという理由で丑組に加入。部下はいるが普段は一匹で勝手に行動しており、様々な地域に行ってはそこらじゅうの猫たちに喧嘩を売り危害を加えている。

 

神様……人を殺めた人間を猫の姿に変えるという罰を与える猫型の死神。

仙人を猫にしたような話し方や見た目だが、特に罪のない明石太郎を間違えて猫の姿にしてしまうという、いい加減な面も併せ持つ。

真っ白でふわふわもこもこの毛並みは、とても触り心地がよいらしい……

 

 

寅組(とらぐみ)……明石太郎が生活する地域一体を支配する二大猫勢力の一つ。

親分である虎ノ進を中心に幹部クラスから下っ端まできっちりと統制がとれた組織。規律を重視しており、基本的に無駄な他勢力との戦いはしない。

また、今は亡きおかみさんのおかげで、人間社会へもうまく対応し勢力を広げていった。

 

丑組(うしぐみ)……明石太郎が生活する地域一体を支配する二大猫勢力の一つ。

寅組と拮抗していたが、牛鬼が就任してから力が徐々に弱まりはじめる。しかし、組織再建のため行った徴兵政策でジャックが加入したことにより、再び力をつけはじめる。アジト周辺には豊富な食糧や資源があり、それを餌に多くの猫を集めている。兵力の多さでは寅組に大きく差をつけている。

あくどいことも平気で行う。

 

目覚めし猫(めざめしねこ)……数万匹に一匹の割合で存在するという猫。

特徴として人間社会に詳しかったり、猫では考えられない発想を有していたりする。また、熟練度があるらしく、日を追うごとに力を増すといわれている。実は神様によって猫の姿に変えられた人間である。

それ以外にも知られていない事実が存在する。

 

 

10

 

「丑組の件、了解した。お前たちは奴らとの接触を避けながら引き続きミケを探してくれ」

 

「わかりました」

 

太陽はすでに西に傾きつつあったが、寅組は依然としてミケの所在を掴めずにいた。無論、どん吉組のミケ捜索班たちも同じであった。

 

(くそ、ミケのやつどこ行きやがった)

どん吉は焦っていた。

数時間経っても、ボスである虎ノ進親分の指令を達成できていないという理由もあるが、一番は丑組の先鋒隊が寅組の縄張りに進行してきているという通達を、偵察班の部下たちが度々報せに来るからだ。

 

(とっとと見つけねえと。いっそ縄張りの外まで捜索範囲を広げるか?いや、それだと戦力をさらに捜索班に割くことになる。丑組が攻めてきているというのに、それは危険だ。しかし、このまま続けていても無駄に時間が過ぎるばかり……)

いくら考えてもこれといった打開策は思い浮かばなかった。

そうこうしていると、また一匹の部下がどん吉の元へ走ってきた。

 

「どん吉さん報告が」

 

「ん、どうした?ミケが見つかったか?」

 

「あ、いえ……」

 

どん吉は表情を少し曇らせた。

「悪い報せか?」

 

「は、はい。ドングリ野原にて我々寅組と丑組が交戦を始めました。敵の戦力を見るに、今回は少しばかり大きな戦いになりそうです」

 

「ジャックはいるのか?」

 

「いえ、ジャックらしき姿は確認できず」

 

「そうか」

(確かドングリ野原を任されているのは蟹丸だったな。あいつなら援軍は必要ないだろう)

よし、我らは引き続き捜索を……と、伝えようとした刹那。さらにまた別の猫がどん吉の元に走ってきた。

 

(またか……)

ただ今度の猫はかなり険しい表情をしていた。

 

(ん?たしかあいつは蟹丸のところの……)

嫌な予感がした。

 

「どん吉さーん!!!はあ、はあ、大変です。ジャ、ジャックが現れました」

 

「なんだと!!」

それは考えうる中で最悪の報せだった。

 

(まさか奴まで来ているとは)

「ドングリ野原か?」

 

「はい。なので援軍に加わってほしいと蟹丸親分から言伝てを預かってきました」

 

「援軍!?」

どん吉はその言葉に我が耳を疑った。

「あいつ迎え撃つ気か?」

 

「はい。そのようです」

 

「……ばかやろう」

 

「えっ?」

 

ふわりと、どん吉の灰色の毛が逆立った。

「ジャックとの戦闘は避けろとの命を忘れたのか!!」

どん吉の怒号でその場の空気がひりついた。

 

しかし、それでも報せにきた猫は言葉を続けた。

「申し訳ございません!!が、が、しかし。今ジャックは悪魔の爪を装着しておらず、〝俺と近くに陣を張っているラクレア、そしてどん吉の三部隊が合わされば奴を倒せる!〟とのことです」

 

「………」

どん吉は少しの間沈黙し、思考を巡らせた。

 

それは甘いきがする……

 

(ジャックは底が知れない。直接戦ったことはないが、奴の戦闘を見れば分かる。体の大きさ、筋力、俊敏性。そして目覚めし猫だからか、引っ掻きだろうが噛みつきだろうが、こちらがどんな攻撃を仕掛けようが、全ていなされてしまう。恐らく俺たち三部隊だけでは……)

 

しかし、だからといって行動しないのも違う気がした。

事態は急を要している。

 

(それに蟹丸の性格なら我々が合流しなくても、ジャックに挑もうとするだろう。あいつをそんなことで失うのはまずい)

 

「……よし、分かった」

断腸の思いであった。

 

「我々どん吉組も部隊を整えドングリ野原へ向かう。だから、集まるまでは絶対に戦うなと蟹丸に伝えろ!」

 

「はい!!ありがとうございます!!」

その猫はドングリ野原の方向へすぐさま駆けていった。

 

「どん吉さん……ジャックと戦うんですか?」

横で聞いていた部下が尋ねた。

 

「そうなるかもな」

 

「……わかりました。では急ぎ各地に散らばったどん吉組に、ドングリ野原に集合するよう伝えてきます」

 

「頼んだぞ」

「俺は先に向かっている」

 

「わかりました。では、後程!」

 

「ああ」

 

間違った選択をしている………気がする。

それにミケだってまだ見つかっていないというのに……

 

しかし、そんなことを考えても詮無きこと。今は急ぐしかない。

 

そうしてどん吉はドングリ野原へ駆けていった。

 

 

 

 

 

おまけ1

 

お嬢様、今回もご覧いただき誠にありがとうございます。

毎回、そろそろ終わりが近づいてきたかな?と思うのですが、書きはじめると、どうも話が膨らんで中々完結に辿り着けません。これが良いことなのか悪いことなのかは分かりませんが、妥協せずに一歩一歩、完結へと進む所存でございます。なので、ごゆるりとお待ちいただければ幸いでございます。

 

おまけ2

 

最近とても良いことがございました。

私が一番応援しているサッカーの〝鎌田大地選手〟が、とある大会で優勝を果たしたのです。

それはイギリスの〝FAカップ〟と呼ばれるものでございます。

最も歴史があるサッカーの大会としても知られ、決勝戦にはイギリスの王族が観戦するという慣例があるほどでございます。(ちなみに鎌田選手はウィリアム皇太子と握手をし、メダルをかけてもらっておりました)

また、鎌田選手が所属し、今回優勝した〝クリスタル・パレスFC〟は1861年に創設されて以来、初めての主要タイトルでございました。

恐らく、ファンの方々からは永遠に忘れられることのない日本人選手になることでしょう。

 

そしてサッカーの話題をもう一つ。来年はワールドカップイヤーでございます!開幕戦は2026年6月11日予定、つまり約一年後でございます。なので、来年の今頃には、私は変身を書き終え、ワールドカップのブログをきっと書いていることでしょう!

 

ではお嬢様、次回のブログでまたお会いいたしましょう!

 

終わり。

変身7

 

 

明石太郎の居住アパートから一駅ほど離れたところに大きな廃工場がある。

目の前には川が流れており、また、そばの橋を渡った先には民家やら商店街やら、人の住む町が広がっている。

川には魚をはじめとした生き物がわんさか生息しており、さらには人の住む地域のごみ箱を漁れば、猫にとっての食材が豊富に落ちている。

つまりこの人の寄り付かぬ廃工場は猫にとって格好の住処なのである。

そしてそんな楽園とも言える廃工場を住処としているのが〝牛鬼親分〟率いる丑組なのである。

 

開きっぱなしの大きなシャッターから廃工場内に入っていくと、大きく開けた空間が広がっている。天井からは錆びたフックがいくつか垂れ下がっており、三方の壁際にはもう動かないであろう機械が点在していた。機械の周りには機材や鉄材がそこかしこに転がっていた。

そして空間の中央には壊れた平ボディ型のトラックが置かれており、荷台には猫たちが拾ってきたボロいクッションがたっぷりと積まれ、その上に丑組の長〝牛鬼親分〟がふんぞり返って座っていた。

 

ちょうど工場内では丑組の集会が開かれていた。

 

「えー、現在先鋒部隊が寅組の縄張りに進行しており、数か所にて戦いが勃発しております。中でもドングリ野原での戦いが大きく、相手方を率いているのは寅組幹部の一人〝蟹丸〟とのこと」

丑組の下っ端がそう伝えると、牛鬼親分はぶくぶくに太った大きな体をゆっくりと起こし、口を開いた。

 

「ドングリ野原での戦況は?」

 

「やや押されておりますが、そこにはジャックさんが向かっておりますので、到着次第逆転するかと」

 

「よしよし」

「ジャックにはそんな雑魚部隊など早く蹴散らして力を見せつけろと伝えろ!ただし寅組の本陣には攻め入るなよ。あくまで作戦通りにとな」

 

「はっ」

 

さらに牛鬼親分は質問を続けた。

「その他の状況はどうなっておる?」

 

今度は別の下っ端猫が答えた。

「はい。まず手筈通り決戦の噂を各方面に流しており、そちらはほぼほぼ完了したとのこと。さらに戦力の補充に関しては、噂やエサにつられて、かなりの野良猫が丑組に集っております。」

 

その答えに満足したのか、牛鬼親分は醜悪な表情で笑いはじめた。

「ぐっふふふふ。あのくそ忌々しい目の上のたんこぶを、やっとこの手で屠れるわい」

「よし、お前ら!決戦は今日ドングリ野原!日が落ち人間共が寝静まったらじゃ!この戦いで虎ノ進及び寅組を徹底的に潰し、奴らの縄張り一帯を丑組のものとするのじゃ!」

 

「うおーーー!!!」

牛鬼親分の啖呵で工場内に地響きのような歓声が鳴り響いた。

 

 

明石太郎は負傷した猫たちを運べそうなものを探していた。

 

「ええーと、確かこの辺に……おっ!あったあった」

明石太郎はアパートの物置小屋で木製のリヤカーを見つけた。

「あとはこの姿で引っ張れるかどうかだが……」

持ち手の部分に両前足をかけ、バランスを崩しながらもなんとか後ろ足だけで立ち、持ち手を上げた。

「おっとっとっと、難しいけどなんとかなりそうだ」

 

ガラガラとリヤカーを引っ張りながら小屋を出ると、先ほど助けたハチワレ猫に話しかけた。

「おい!そこの猫君よ、倒れている君の友達をこれに乗せたいんだが、手伝ってくれないか?」

 

すると目を大きく見開き驚いた表情でこちらを見ていたハチワレ猫が、ハッとその言葉に気づき、こちらに駆け寄ってきた。

 

「これに……ですか?」

 

「ああ。これなら一度に運べるだろ」

 

「運べるって、どこへです?」

 

明石太郎はリヤカーを一旦置いて答えた。

「君たちは寅組だろ?アジトがあるのではないか?」

 

「えっ!なぜ寅組って知っているんですか!?」

ハチワレ猫は少し警戒した表情で聞いた。

 

「まあちょっとな。おっと、だが勘違いしないでくれ。さっきも言ったけど私は君を助けにきた仲間だ!」

 

ハチワレ猫はその言葉を聞くと俯いた。何かを考えているようだ。

そして、しばらくすると何かを決心したように口を開いた。

 

「あなたはもしや〝目覚めし猫〟ではないですか?」

 

「ん?なんだそれは」

 

「あ、いや……」

ハチワレ猫は当てが外れたのか少し悲しそうな顔をしたが、またすぐキリっとした表情に戻り明石太郎に尋ねた。

「あ、あの僕たちを助けてください!」

 

「あたりまえだ!そう言ったろう」

 

「い、いや違うんです」

そう言うと今何が起きているのかを話しはじめた。

 

今この辺りを支配している二大勢力「寅組」と「丑組」が争っていること。

 

丑組にはジャックという恐ろしい猫がいること。

 

そしてそのジャックに対抗すべく、このハチワレ猫トンカツは〝とある猫〟を探しているという。

 

「なるほど。で、その猫が見つからないから代わりにそのジャックと戦ってくれということか」

 

「は、はい」

 

「そのジャックというのはそんなに強いのか?」

 

「僕も見たことはないのですが、普通の猫では絶対にありえない〝武器〟というのを使ってくるそうです。それで何匹もの寅組の方々がやられてしまったそうで……」

 

「ふむ…」

明石太郎はそうは言っても所詮は猫だからなぁと思い、取り敢えず二つ返事で了承した。

 

「ありがとうございます!」

「ではまず僕たちのアジトにご案内します!」

 

そうして明石太郎とトンカツは、倒れている仲間の猫たちをリヤカーに乗せ、寅組のアジトに歩を進めた。

 

 

 

おまけ

 

明けましておめでとうございます、お嬢様。

久しぶりのブログ、久しぶりの「変身」ということで、よく分からなかったお嬢様もいらっしゃるかと存じます。

そんなお嬢様には是非、変身1〜変身6を見ていただければと存じます。

 

また、続きもなるべく早く書き上げる所存でございます。

 

これからもお楽しみいただければ幸いでございます。

 

終わり。

釣り5

 

先日、私は釣り納めに行ってまいりました。

前回は狙っていた黒鯛が一切かからず、思い出すも無残な結果で、ブログでも見栄を張ることしかできませんでした。

ですのでそんな雪辱を果たす戦いでもございました。

 

一泊二日の釣り旅行。結果は一体どうだったのか………

まあ、申してしまうと黒鯛は釣れませんでした。が、しかし。

それなりのサイズのカワハギが釣れたので、少しは果たせたのかなぁと、存じます。(ちなみにカワハギはいつものフカセ釣りではなく、その合間で遊んでいた「ブラクリ」というオモリに針が直接付いているシンプルな仕掛けで釣りました)

 

と、まあ釣りだけでいうとなんとも微妙な結果でございましたが、実は今回は釣りと並行してあることに挑戦しておりました。

それは前々から友人と考えていた「キャンプ」でございます!

 

いつも考えていたのですが、釣った魚をすぐに調理して食べられたらどれだけ良いかと。

そしていつも釣りを共にしている友人がキャンプ経験者だったということで、今回挑戦した次第でございました。

 

私は初めてのキャンプでございましたが、とても良い経験でございました。

自然豊かな土地にテントを設営し、そこに荷物を置いて拠点を作るのは、幼少の頃の秘密基地作りを思わせ、キャンプ道具はどれも男心をくすぐり、焚火はいつまでも見ていられました。

そして待ちに待ったキャンプ飯も何と美味しかったことか。

今思うと一般的に黒鯛よりも食すことが多いカワハギが釣れたのは、この日においては良かったのかもしれません。

その他にも持参したお米や道中で購入したお野菜なども、美味しゅうございました。

(いつもと同じ食べ物なのに、環境次第でより美味しく感じるのは不思議でございます)

今回の釣りキャンプは概ね成功ながらも課題もございましたので、それも踏まえてまた挑戦したいと存じます。

 

そして次こそは、必ずやお嬢様に美味しいお魚を釣ってまいります!

 

 

おまけ1

お魚はご用意できませんでしたので、せめてお写真だけでも献上いたします!

 

 

カワハギ君。

 

 

焚火と飯盒。

 

 

歩いてたタヌキ。

 

 

おまけ2

 

今年はどんな一年でございましたか?

 

私はお屋敷のことで申しますと…

 

ブログ……上半期は調子が良かったが、後半は尻すぼみ。

お写真……大きな4回ある催しのうち3回参加!

動画……珍しく2回も出演し、年末年始の配信イベントも参加!

お菓子……新しい焼き菓子を2種類考案!

 

私にしては、まずまずだったのではないでしょうか。

来年もこの調子で頑張りとうございます!

 

それではお嬢様、このあたりで失礼いたします。

 

来年も良いお年をお迎えくださいませ。

 

 

終わり。

釣り4

 

ぎょ機嫌麗しゅうございます、お嬢様。明石でございます。

え?挨拶がどこか変でございましたか?……ややっ!これはうっかりしておりました。先日の釣りが楽しすぎたゆえ、「ご」と「ぎょ」を間違えてしまいました。申し訳ございません。

 

いやー、それにしても先日の釣りはとても素晴らしい成果でございました。今も半ば興奮気味でこの文章を書いております。

 

一体何が素晴らしかったのか?

まずは一枚の写真をご覧くださいませ。

 

 

美しい黒と銀に彩られたこの魚。名を黒鯛と申します。(またの名をチヌ)

フカセ釣り(餌を使用する釣り)を始めるにあたって、釣り人がまず目標にするお魚がこの黒鯛かと存じます。

かくいう私も今まで釣り上げたことがなく、常に憧れておりました……が、しかし。ついにその時がやってきたのです。

 

この日は9月中旬でございましたが、さすがにまだ夏の暑さが残っており、照りつける紫外線に加え、予報外の通り雨や荒々しい波など、厳しい環境でございました。

ですが私と友人はそんな困難な状況でも希望に満ち溢れておりました。なぜならば、確かな情報筋からこのポイントで黒鯛が釣れるということを聞いていたからです。

我々は無我夢中で竿を振り続けました。

 

気がつくと時刻は17時前。いわゆる夕マズメ(日の入りすぐ)の時間帯でございます。

 

「今日一番のチャンスかもしれない」と、期待に胸を膨らませていると、ぐぐっと何かが餌に食いつきました。その引きは今までとは明らかに違います。友人もそれを感じとったのか一旦竿を置き、タモの準備を始めました。

私は逃がすまいと必死にリールを巻きました。

すると徐々にその姿が見えはじめたのです。メジナでもアイゴでもない、黒と銀の光沢が。

私は焦る気持ちと興奮を抑えリールを巻き続けました。そして海面ギリギリまで来たところで友人が絶妙のタイミングでタモを入れ、無事釣り上げたのです!

 

この時をどれだけ待ちわびたか。実は友人も一度も釣ったことがなかったので、彼も大喜びをしておりました。

なんと素晴らしい一日だったのか!ただ一つ残念なのがお嬢様の食卓を彩るには少しばかりサイズが心もとないと言うこと。なので散々迷った結果、今回は我々で頂くことにいたしました。

次こそは良型でとびきり脂の乗った黒鯛をお嬢様に届けとうございます。

 

それではまたお会いいたしましょう!

 

 

おまけ1

 

お嬢様、ご覧いただき誠にありがとうございます。

今月はなんとか掲載できました。

来月もこの調子で頑張る所存でございますので、ご期待いただければと存じます。

 

おまけ2

 

そういえば他にも小さいながらも別の魚も何匹か釣れましたので、そちらの写真も載せておきます。

それと調理した焼き魚の写真も載せておきます。

 

 

 

 

終わ……

 

 

(やはり事実を申さねばならない)

 

実は今回釣り上げた黒鯛でございますが……

 

本当は友人が釣り上げました……

 

あたかも私が釣ったように見せて、申し訳ございませんでした!!

釣ったシーンでも本当は私がタモ係でございました。

 

私が釣れたのは小さなお魚だけで、それがなんと申しますか、とてもくやしゅうて、くやしゅうて、見栄を張ってしまいました。

誠に申し訳ございません。

 

ただ、もしまた釣りをする機会があれば、次こそは私の手で黒鯛を釣り上げたいと存じます。

そして必ずやお嬢様の食卓に届ける次第でございます!

 

終わり。