明石だらけ。

お嬢様、ご機嫌麗しゅうございます。
的場でございます。

ここのところ明石の溢れ出る文才が止まりません。
彼はシャイなところがあり、写真や歌や演技が苦手なのでございます。
もっとも実際に歌などを聞いたことがないので自称ではございますが…。

このギフトショップのブログを書くように申したところ
「初めはお嬢様にご挨拶程度のものがよろしいでしょうか」
という温度感だったのにも関わらず、いきなりの「明石太郎」の登場でございます。
私は原稿を持つ手を震わせたものです。

「て、天才だ…!」

独特な世界観は留まることを知らず、容量もどんどん長文になっていきました。
妄想旅行やホラー作品の楽しみ方など、徐々に内容もディープなものに…っ!
遂には他の使用人の提出頻度をはるかに越え、先日の「走れ明石」などは三部作になる始末。
自己表現が苦手(自称)という明石に練習の場を与えるぐらいのつもりが、
とんでもない鬼才を生み出してしまいました。

方向性の違いはあれども、伊織や隈川と同じ長さの才能を感じます。
何か彼のセンスを活かす土俵はないものか…。
如何にすればこのモンスターの能力をのびのびと開花させられるでしょう。

映画が好きな様なので「劇場版 的場の山小屋」を撮らせるか、
それともクルーザーに乗せてマグロを釣るところから捌くところまで動画にするのか?
明石脚本を執事歌劇団が朗読するのもよろしいですね。

夢は広がるばかり。
執事歌劇団にひけを取らない様な活躍をしてほしいものでございます。
これからも明石先生の作品にご期待下さいませ。

それでは本日はこれにて。

怖い話

明田 太郎(仮名)さんの投稿

 これは数ヶ月前の出来事です。

 その日は珍しく仕事が定時で終わり、帰って一杯やろうかと考えていました。ただお酒だけでは物足りないので、「つまみに映画でも」と思い立ち、近所のビデオ屋に寄ることにしました。

 私は映画好きだったこともあり、そのビデオ屋にはよく通っていて、店長とも仲良くなり映画について語り合ったりしていました。

 しかしその日は、いつもレジカウンターにいるはずの店長がおらず、代わりに見たことのない30代後半くらいの男がレジカウンターで俯きながら何か作業をしていました。

「あれ?今日は休みかな」と思いつつも、その男に「店長、いらっしゃいますか?」と聞いてみると、男はゆっくりと顔を上げ、ボソッと「いいえ」とだけ答え、また俯き作業を始めました。普段なら「愛想悪いなぁ」と思うのですが、その時だけは変な違和感を覚えました。

 まずその男の顔ですが、とても特徴のない顔で肌は青白く、目も虚ろで焦点がどこにも合っていない印象を受けました。さらによくよく店内を見回すと他のお客さんが一人もいないのです。

 確かに、このお店は大型チェーン店などとは違い、この地域にしかない小規模なお店でしたが、それでもこの時間帯ならそれなりにお客さんもいるはずなのです。

 何か冷ややかな空気を感じましたが、気にしてもしょうがないので借りる映画を探し始めました。5分くらいして「あっ!そういえば前借りれなかった映画あるかな」と前回の記憶を思い出し、置いてある棚に向かいました。

 見てみると空のケースしか置いておらず、「もしかしてずっと返し忘れてるんじゃ、、」と思い、気は進みませんでしたが、あの店員に聞いてみることにしました。レジカウンターの方へ振り替えると、
私は思わず”ギョッ”としてしまいました。

 そこにはあの店員が、体は正面のまま頭だけが違う方向を向き、一点を凝視していました。その時だけは焦点が合っていたような気がします。

 その光景に一瞬固まってしまいましたが、何を見ているのか興味が湧き、店員が見ている方向に目をやりました。そこには(中古品販売)と書かれた棚に古いDVDが置いてありました。

 私は店員のことなど忘れ、何かに魅入られたようにそこに近づきました。その時点であのDVDを手に取るのは必然だったのかもしれません。

 置いてある品はB級映画や聞いたことのないアーティストのライブ映像など様々ありました。なんとなくその棚を見ていると、一つ奇妙なDVDが目に留まりました。真っ黒なケースに赤い文字で「怖い話」と、書いてありました。

 私は斬新なパッケージに興味を惹かれ、購入することに決めました。レジカウンターに向かうとあの男はまた俯いていました。「すみません。これ下さい」そう言うと店員はゆっくり顔を上げ、「○○円です」とバーコードも読み取らず、ボソッと呟きました。

 その瞬間、「この店員が見ていたのは棚全体ではなく、このDVDだったのではないか」と思い、借りるのを躊躇しましたが、なおさら何が映っているのかという好奇心の方が勝り、会計を済ませました。

 家に帰るとまずお風呂に入り、軽い晩御飯を済ませ、あのDVDを見ることにしました。買ってきたビールを開け、「怖い話、、、ホラーだよな」そう思いながら再生し始めました。私はホラーが苦手ではなかったのですが、ビデオ屋での出来事と相まって、ちょっとビビっていました。

 映像はメニュー画面も何もなく、いきなり本編が始まりました。

 映っていたのはどこかの森の映像、よく見ると真ん中に古い井戸があり、思わず「リ〇〇?」と声を出してしまいました。しかしその有名な映画とは違って、一向に何も起こりません。一応時間は経過しているようで、静止画ではありませんでした。

 5分経っても何も起こらず、気持ちも冷めてしまい、「消そうかな」とリモコンのボタンに手を伸ばした時「ペタ」と何かの音がテレビから聞こえてきました。

 慌ててテレビを見ると井戸の縁に手が掛かっておりました。そして次第に井戸の中から白いワンピースを着た女性が這って出てきたのです。
「うわっ!!!」私は声を荒げてしまいましたが、一旦落ち着いて見届けることにしました。

 女性は少しづつ井戸から出てきており、完全に出ると今度はゆっくりとこちらへ近づいてきます。

「、、、まさかな」

 画面の中の”それ”は、おぼつかない足取りで近づいてきます。一歩、二歩、、、

 残り十歩ほどの所まで来てしまいました。

「まさか、、偽物だよな、、、、」

 九歩、八歩、七歩、、、そのあたりから何か本物めいたものを感じ始めました。

「ま、ま、待ってくれ」しかし”それ”は止まりません。そしてゆっくりと青白い手がこちらに伸び始めました。

「もう無理だ!!!止めよう!!」そう思い、停止ボタンを押そうとした瞬間

「ガガガガガ、、、、」と、テレビから故障音が鳴り出し、そこで画面も止まってしまいました。
「、、、こ、故障?」「それとも、終わった、、、のか?」「何はともあれ助かった」
 
 丁度”それ”が画面に触れるくらいで映像は止まっていました。

 私は落ち着きを取り戻し、気が抜けると、何だか催してきました。「取り合えずトイレに行くか」そうしてビデオをそのままにし、部屋を後にしました。

 帰ってくると映像はまだ井戸の画面で止まったままです。
「ふー。今日はもう寝よう、、、、、、、、あれ?、、あの女性は?」テレビには森と井戸しか映っておらず、あの女性はいませんでした。
「まだ続きがあったのかな?」私は深く考えるのをやめ、眠りにつきました。

 次の日、私は朝早く出社すると、早速同僚のAに昨日の出来事を話しました。
私「本当なんだって!〇〇グみたいな映像でさぁ」
A「どうせ、誰かが作った偽物だろ」
私「まぁそうだけど、本当リアルなんだって!そうだ今日仕事終わったら、うちに見に来いよ!」
 Aは中々首を縦に振りませんでしたが、私の熱弁に負け、泣く泣く承諾しました。

A「わかったよ、終わったら行くから。そのかわり酒でも奢れよ」
私「よし!絶対面白いから、期待しとけ!」昨日の出来事が嘘のようにわくわくとした気持ちで、仕事に取り掛かりました。

 思ったよりも早く仕事が進み、今日も定時くらいで帰れそうでした。
私「A、終わりそうか?」
A「まだもう少し掛かりそうだ。まぁ、切りの良い所で終わらせるから、先帰って準備しててくれ」
私「わかった!酒も買っとくよ!」そう言い残し、会社を後にしました。

 スーパーでお惣菜やビールを買い込み家まで歩いていると、途中あのビデオ屋の近くを通りました。
「そういえば今日は店長いるかな?いたらあのビデオについて聞きたいな」そう思い、立ち寄ろうかと考えましたが、今日はAが来るのでまた時間のある時に寄ることにしました。

「ガチャ」鍵を開け家に入ると、早速買ってきたお惣菜を用意しました。「いやぁー見てたらお腹空いてきたな、、Aには悪いけど先に一杯やろうかな」私はビールを一本取り出し、先に頂くことにしました。

「ゴク、ゴク、ゴク、、ぷはぁ~」「仕事終わりのビールは最高だ!」

「ゴク、ゴク」「ゴク、ゴク」「ペタ」「ゴク、ゴク」「ペタ」

「あれ?」ビールを飲む音の合間に何かが歩いている音が聞こえてきました。その音は隣の部屋から聞こえてきます。そして、こちらへ近づいていました。「ペタ、ペタ」「ペタ、ペタ」「ペタ、ペタ」

「ガチャリ」

 その音は明らかに隣の部屋を開けた音でした。そしてその音と共に汗がブワッと吹き出しました。
「嘘だろ!!、、、まさかあの時」考えたくはありませんでしたが、「昨日画面から女性が消えていたのは、映像が進んだからではなく、画面から出てきたってこと!?」

「ぷつん、、、」そんな事を考えていると今度は部屋の明かりが消えてしまいました。
「うっっっ、、、」いきなりの停電に叫びそうになりましたが、今叫ぶと位置がばれてしまうと思い、声を押し殺し、慌ててテーブルの下に隠れました。

「ガチャリ」今度はこの部屋の扉を開ける音がしました。
 そして「ペタ、ペタ、ペタ」もう、すぐ近くにいるような気がします。「やばい、、逃げないと」しかし足が震えて力が入りません。「くそ、動いてくれ」そう思った刹那

「プルルルル!」近くに落ちていた携帯が鳴り出しました。件名はAと表示されていました。

「A!!」そう喜んだのも束の間、携帯の光に照らされた”あれ”が、目の前に現れたのです。

 真っ赤な口がニヤッッッと笑っており、目は白い部分が無く、真っ黒で穴が開いているようでした。しかし焦点は私と合っているような気がしました。

「うわぁぁぁぁぁ!」私は急いでそこから走り出しました。「早く外へ出なきゃ!!!」体中を壁にぶつけながら、玄関に向かいました。

 ところが玄関に向かっているはずが、違う部屋に辿り着いてしまうのです。
「あれ!?なんでだよっ!」
 寝室、トイレ、洗面所、そして最初にいたリビングと、いつまでたっても着きません。

 さらに「ペタ、ペタ」と、ゆっくりとした足取りのはずの”あれ”が、常にすぐ後ろにいるような気がします。「dzxぇxyあ」と、何か言葉らしきものも聞こえてきました。

「もう、、無理だ、、」そう諦めかけた時、「ピンポーン」と、インターホンが鳴りました。
「ハッ」と、その音で我に返ると、手で何か金属に触れているのに気づきました。それは、玄関のドアノブでした。いつの間にか扉の前まで来ていたのです。

 私は急いで鍵を開け、外へ出ました。
A「どうしたんだよ、部屋も真っ暗で。電話したんだぞ!」
私「A!!あ、あいつが、、あれが、、」「お前の家に泊めてくれ!」「きょ、今日は!!」
 
 その時のAは私が何を言っているのか、さっぱり分からなかったそうですが、私の様子があまりにも変だったので、私を取り合えずAの家に連れていってくれたそうです。(その事は全然覚えていませんでした)

 翌日、私はずっとAの家に居るのも申し訳ないので、あのビデオ屋に行くことにしました。ビデオ屋に着くとその日は店長がいました。

店「あれ、久しぶりじゃない」
私「あの、、今日はお聞きしたいことがあって」私は一昨日ビデオ屋に来てからの事を店長に話しました。

「ん~、おかしいなぁ、そんなDVD置いて無かったと思うが」そう店長は言うのでした。そしてあの時いた30代後半くらいの店員のことも、知らないと言うのです。

 その後、私は店長を連れて自宅へ帰りました。扉を開ける瞬間「あの顔がまた目の前に現れるのでは」と思いましたが、それも杞憂に終わり家には誰もいませんでした。DVDはまだ置いてあり、再生してみましたが、砂嵐の「ザザザ」という画面しか映りませんでした。

店「確かにパッケージには、うちで取り扱ってるマークが刻印されてるな、、、」「取り合えずこれ、近くのお寺に持っててみれば?」私は頷き、お寺で供養してもらうことにしました。
 
 お寺に着きお坊さんに渡し事情を話すと、すごく怪訝な顔をされました。ですが供養が終わると「もう大丈夫です」と言われ、さらに「しかし一年くらいは、あなたが見た”何か”が近寄らないように、これを持っていてください」と、紐の束のような物でできた人形を渡されました。

 それからは人形の効果もあってか、普段通りの生活をしております。

〈追記〉

 そういえば二つほど話してなかったことがあります。

 一つは、あの時Aがすんなり私の事を受け入れてくれた理由ですが。私の様子の他に、私が扉を開け出てきた瞬間、聞いたことのない掠れた女性の声で「で、れ、た」と聞こえ、今私の家に入るのは、まずいと思ったからだそうです。

 そして二つ目は、「何故、数ヶ月前の事を今になって書いているか?」という事ですが。

 最近、あの人形が何処かへ消えてしまいました。そして外を歩いていると、あのビデオ屋の男に似た何者かを目撃する事が多く、必ず真っ黒の目でこちらを見ているからです。

終わり。

走れ明石3

役所入口
明「やっと着いたか、急がなければ」
19時15分を刻んだ時計を横目に、受付カウンターへ走っていった。
明「すみません。〇〇アパートか〇〇さんの名前で、多目的ホールなどの予約ありませんでしたか?」
受付の女性「!!!」「あなた何て恰好してるのですか!破廉恥極まりない!」
明「そんなことはどうでもいい!時間がない、早くしないと取り返しのつかないことになってしまう!」
受付の女性「〇〇様なら3階の中央ホールを只今ご利用中ですが、、」「あなた、その恰好では中へ通しませんよ!」
明「3階だな!」
受付の女性「ちょ、ちょっと!待ちなさい!」
その声を余所に明石太郎は走り出した。

 階段を上り、周りを見渡すと(中央ホール入口)の文字を見つけた。
明「はぁはぁ、中央ホールはあれか!」
明石太郎は入口まで駆け寄ると、扉を勢いよく開け放った。

明「大家!!!」

住民達「!?!?」
大「あれー、明石君ではないですか。今更どうしたのです?もう署名は終わりましたよ(笑)」
弁「あれが例の住民ですか。あの恰好、噂にたがわぬ阿呆のようだ(笑)」
住民達「明石くん、、、」
明「………」
明石太郎は無言で二人に近づいた。

弁「丁度いい、君も署名してください、、、ああそれと明石君の書類を見せていただきましたが、ここ数年にわたる数々の規約違反。騒音問題、ペット問題。最近では銃刀法違反で警察の方々にもご迷惑をかけたとか、、、」「まさか断るとは思いませんが、その時は分かりますよねぇ?」「早く署名したほうが身のためですよ。今だって公然猥褻で罪を重ねてるんですから(笑)」
大&弁「さあ早く!」
明「………」

役所受付
受付の女性「本当なんです!全裸の男が3階へ上がっていったんです!」
受付の男性「、、、はぁ。何かの見間違いではないですか?」
受付の女性「そんなことありません!この目で見たんですから!!」
???「あの、すみません」
受付二人「!?」

受付の女性「は、はい。なんでしょうか?」
???「全裸の紳士を見掛けませんでしたか?」
受付の女性「えっ?」「まさかお知合いですか!?」
???「はい。友人です」男は自信を持って答えた。

受付の女性「ぜ、全裸の阿保ならここへ来た後、3階の中央ホールへ行きましたよ」
???「ありがとうございます」男は速足で3階へ向かった。

受付の女性「ほら!言ったじゃない!私たちも行きましょう!」
受付の男性「そ、そうだな」

                   中央ホール

          ”バチーーン!!”ホール内にビンタの音が鳴り響いた。

 弁護士は頬に真っ赤な紅葉を咲かせ、気絶した。
住民達「!?!?」
大「な、なにをしているのだ!」
明「やかましいわ!!!」
大「!?!?」

明「家賃の問題に今までの悪政。住民や私を馬鹿にしたこと。おまけに不良達に殴られるわ、婦女子に裸を見られるわ、今日は散々な一日だ!」「それもこれも全て貴様のせいだ!覚悟しろっ!!」
大「ちょ、ちょっと待て!暴力的な解決は何も生まないぞ」「そ、それに半分くらい私には関係ないじゃないか!?」
明「うるさい!必殺の往復ビンタにて、貴様に天誅を下したる!!」
大「待て!落ち着け!!!」
明「もう遅い!!」
 明石太郎の怒りのビンタは左右に、そして上下に往復し、色々な角度から大家の顔をはたき、数分後には顔が3倍もの大きさに膨れ上がった。

???「あちゃー。平和的解決策を持ってきたのだが、少し遅かったか」
???「明石君、そのくらいで許してやりな」明石太郎は無我夢中ではたいていたが、その声でふと我に返った。

明「染瀬じゃないか!来たのか」明石太郎は手を止めて、染瀬の方へ振り向いた。
染「ああ!これを渡すのをすっかり忘れててね」
明「なんだいそれは?」
染「これは今までの悪政の契約書さ。注意深く見直してみると法律的にグレーな一文が結構あってさ。全部この弁護士が関わっているなら、悪逆を暴く良い証拠になるよ」「それとこの前のファミレスの会話を録画したテープ。平和的解決を望むならこういった物も役に立つからね」「まぁ今回は大家さんの方が早く欲しかったかもしれないね」
明「ふん!たまには痛い目に合った方がいいんだ」

染「何にせよこれで一件落着だ。この証拠を突きつければ住民達の家賃も元通りにしてくれるだろう」
明「よかったな、みんな!」
住民達「二人ともありがとう」「良かったー!」「やっぱ頼りになるなぁ」
染「でも、なにか忘れてるような、、、」

          ”バチーーン!!!”ホール内にまたビンタの音が鳴り響いた。

「この変態!!」
 声と共に明石太郎の頬に衝撃が走り、勢いよく転倒した。
明「ぐはっ、、なんだ一体!?」明石太郎がゆっくり起き上がると、見たことのある女性が軽蔑の表情でこちらを見ていた。

明「ハッ!」「ま、待て!落ち着くのだ!!!」
受付女性「もう遅い!貴様に天誅を下す!!!!!」
染「明石君、取り合えず僕の上着で下半身を隠せ!さもなければ今度は君が痛い目にあうぞ!」

 アパートのヒーローは改めて自分の姿を見直すと、その阿呆な姿にひどく赤面した。

                     完

お嬢様、お坊ちゃま、ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
まさか3回に分けて掲載するとは思ってもいませんでした。
やはり文章というのは難しいものですね。

それと最後に、、、、

            太宰治先生、申し訳ございませんでした!!!

終わり。

走れ明石2

役所
住A「いやぁ心配だなぁ」
住B「大丈夫だよ。皆で反対すれば、分かってくれるよ」
住A「そうだよね、でも大家さん怖いからちゃんと言えるかなぁ、、、」
住C「怖いけど皆で頑張ろうよ」

大「皆さん!!!そろそろ席についてください!!!」
住ABC「ビクッ!」

 明石太郎は走っていた。大家に対する今までの恨み辛みを原動力とし、憤怒の形相で走っていた。

 15分ほど走り続けると、目の前に公園が現れた。この公園はとても広く、遠回りするとかなりの時間ロスになってしまう。明石太郎は迷いもせず公園内を突き進んだ。
 途中ベンチや自動販売機がある休憩所に差し掛かった時、高校生らしき少年達が煙草を吸っていた。
普段なら注意するとこだが、急を要する為そのまま横を通り過ぎようかと思ったその時、一番体格の良さそうな少年が不意に振り向き、目が合った。

「やばい」
その時の明石太郎の顔は、憤怒の形相に少々の疲労が足され化学変化が起き、その形容しがたい表情は、少年が煽られたと感じても致し方なかった。
少「喧嘩売ってんのかぁ!!」
その声を合図に他の少年たちも一斉にこちらを振り向き、明石太郎の前に立ちはだかった。

「くそう、何故会いたい時には現れず、会いたくない時に現れるのか。こうなればやけくそだ!」
 明石太郎は強引に突破すべく、少年たちに突っ込んだ。
「どけ!邪魔だ!」
明石太郎は降り注ぐパンチとキックの雨あられを必死に耐え、服を引っ張られては強引に振りほどき、倒され泥だらけになっては立ち上がり、その場を辛くも脱出した。

「体中ボロボロだ、服もほとんど破けてしまった。疲れたなぁ、、、、」
「もう間に合わないかもしれない」明石太郎は次第に弱気になっていった。
「お腹も空いてきた、そういえば朝から何も食べていない。少し休もうかな、、」
 明石太郎が諦めかけ、道端に突っ伏してしまおうかと考えた時「チリンチリン」と何処からともなく自転車のベルの音が聞こえてきた。そしてその音は「明石君、明石君」と自分を呼ぶ声に変わっていった。
「染瀬!」
「明石君、大丈夫か?洋服はどうした?」
「色々あってな。それよりどうしてここに?」
「君が無茶していないか心配だったから追いかけてきたのさ。愛と平和も良いがやはり一番は友情さ」
「さあ明石君、この自転車を使ってくれ!」
「すまん染瀬、恩に着る。」
明石太郎は最後の力を振り絞り向かうのであった。

役所
大「皆さん、お手元の契約書に目を通していただけたでしょうか?ご確認が出来次第、順次署名をお願いします」
住A「あの~、やっぱりサインしなければいけないでしょうか、、、、、」
大「別にしなくても構いませんよ。ただし、その場合は次回の更新は行わず即刻立ち退きを命じます」
住A「そ、そんな、、、いきなり言われても」
大「いきなりではありません。そうですよね弁護士さん」
弁「ええ」「Aさん、あなたの次の賃貸契約更新は7ヶ月後ですよね。借地借家法第26条では立ち退きを要求する場合、賃貸契約更新の1年~半年前に行えば問題ありません」
住A「で、でも、、立ち退きを拒否することもできるのですよね、、、」
弁「はい。ですが賃貸人、つまり大家側に正当な理由があれば拒否することは出来ません。確かあなたは一年前、ペット禁止の催告をしたにもかかわらず、数ヶ月の間犬を飼ってらっしゃいましたよね」
住A「それは、大家さんが(飼い主が見つかるまでの間、飼ってもいいよ)と、言っていたから!」
弁「大家さん、本当ですか?」
大「いえ、そんなことは一言も」
住A「嘘だ!言ってたじゃないか」
弁「証拠はあるのですか?」
住A「いや、それは、、無いですけど」
弁「では証拠不十分という事で。それとペットを飼っていたという契約違反で立ち退き料は発生せず、逆にペットによる匂いや傷が見つかれば数万~数十万の賠償費用を払っていただきます。いかがなさいますか?」
住A「、、、」「、、、サインします」
大「ありがとうございます。では皆様も質問・不満等なければ署名をお願いします」
住民達「、、、」

中編完

申し訳ございません。今回で終わるかと思ったのですが、また長くなってしまいました。
続きは出来るだけ早く掲載いたします。

終わり。

中華なまとば。

ご機嫌麗しゅうございます。
的場でございます。

私は今、港町の中華街に来ております。
遊びに?いやいや違います!
買い出しでございますよ。
朝から小籠包はいただきましたけれども!
業務の一環でございます!

いつも賑やかな通りも、この情勢下で何軒もなりを潜めております。
営業を停止する貼り紙があったりなかったり。
閉店しているのか店を畳んでしまったのかわかりませんね…。
おや、肉まんを売っているお店がございました。
買い出しのついでに折角ですからいただくと致しましょう。

どんどん進んで行くとおや、店の中で洗濯物を干している店員がいますね。
商売しているのか生活しているだけなのか?
…営業中の札は出ている様ですが怪しいですね…。
入るのは見送りましょう。
でも隣で売っているゴマ団子はいただいておきましょう。

おお、杏仁ソフトクリームがございますよ。
杏仁豆腐は私の大好物でもございます。
お札で支払いを済ませようとしたら
「細かいお金あるか?」
と聞かれました。

!!…おのれ…!客に対して何と無礼な!

などと怒ってはいけません。
同じ内容の中国語を話せるかと言われたら赤井以外の使用人は話すことができないでしょう。
彼らが生活の為に必死で身に付けた日本語なのです。
そしてそんな大味なところが中華街の魅力の一つであると私は思うのでありました。

ああ!お腹も一杯になったところで帰りましょうか!
え?ただ食べ歩きをしただけじゃないかって?
滅相もない!
今回買い出した物品はお嬢様には内緒でございます。
またお披露目する機会がございましたら是非…。
本当に飲茶しに出掛けただけではこざいませんよ!

…これは隈川のことを食い意地がはっていると馬鹿にできませんね。

それでは本日はこれにて。

常夏ヴァカンス

如何お過ごしでございますか。桐島でございます。

夏が始まり世間もギフトショップも大いに盛り上がっております。

そんな中富田でございますが。

パパイヤを食べております。

なにを隠そう富田は南国フルーツもすごく好きなのでございます。

主にバナナ、マンゴー、パパイヤ、パイナップルなどを与えておりまして、子供のころから豆腐と共に好みのものでございます。

正直私よりも夏を満喫しており、連日砂のプールに入っては砂をまき散らして暴れまわっております。

元気なことは良い事ですがこれ以上暴れるならフルーツの量を少なくしてやろうかとふと考える私でございます。

お嬢様もどうかほどほどに夏を満喫してくださいませ。

それではまたギフトショップでお会いいたしましょう。

夏の思い出

※前回の続きは後日掲載いたします。

                  明石太郎14才 夏

「ゴク、ゴク、ゴク、、、プハ~!夏はラムネに限るな!」
その日、明石太郎(あかしたろう)は地域の小学校で開催されている夏祭りに足を運んでいた。
普段ならこんな暑い季節に外出などしないのだが、お祭りは別であり理由は幾つかあった。

中学生時代は少し大人ぶるところがあり「風物詩を重んじる老齢のような楽しみ方が格好良し。だから祭りも楽しむのがカッコいいのだ」という持論を展開し、「14才にもなって祭りではしゃぐなんてダサいぜ!」という思春期特有の流れに一石を投じていた。
他にも屋台のお菓子が大好きだったり、あわよくば淑女の浴衣姿を拝見したい等の思いもあったが、あえて話す必要もないと心の内に秘めていた。

「次は何を頂こうかなぁ」
 明石太郎はラムネを飲み終えると、子供の笑い声や太鼓の響く音を楽しみながら、ゆっくりと屋台を見て回った。
 かき氷、杏飴、チョコバナナ、焼きそばと、見るもの全てが美味しそうに感じ、次は何を食べようかと迷っていると、ふと嫌な予感がした。
「そういえば先ほどラムネを買った時、ガマツグがぺちゃんこになっていたような、、、」
 ガマツグとは明石太郎のガマ口財布であり「お金をたくさん入れ膨らませると可愛いくなる」と評判の~財布っくらシリーズ~第一弾である。ちなみに第二弾の「フグ太郎」までは人気であったが、メーカーが何を血迷ったのか第三弾で「血ではなく、金を吸うマダニのダニエル」を発売してしまい、全国の女性ファンから苦情が殺到し、あっけなくシリーズの幕を閉じた伝説の財布でもあった。

 まあそれはさて置き、明石太郎である。ポケットから出してみると、やはりしぼんでおり、中には100円玉が三枚しか入っていなかった。
「これはまずい。ここで消費していては大事な戦いができなくなってしまう」明石太郎はお祭りに行くと、必ずやる事があった。
 そう、金魚すくいである。

「金魚すくいは大事だ、背に腹は代えられん!大人になったら欲しい物を片っ端から買おう。その時にはガマツグもふっくらしているはずだ」
そう自分に言い聞かせ、金魚すくいの方向へ歩き出した。

「着いたか、、、戦場に」
明石太郎はキリっとした目つきに変わっており、金魚のプールをじっくりと見渡し一番良い席に座ると、おもむろに300円を取り出した。
「おっちゃん、三回分頼むぜ」
そう言うとポイを3つ受け取り、大きいサイズの金魚を探し始めた。
「あの赤いのもいいが、こっちの黒いのもよさそうだ」
何匹かに狙いを定めると、ポイを金魚に近づけはじめた。
 数センチの所まで寄せるとポイの動きを止め、「ここで焦ってはいけない、金魚の位置が水面ギリギリに来るのを待たなければ」と、機を伺った。
15秒ほどするとターゲットが徐々に上がってきた。
「今だ!」
明石太郎は素早く、そして水面を揺らすことなくポイを金魚の下に忍び込ませ、水を掬いすぎないよう細心の注意を払った。
 ゆっくりポイを持ち上げる。金魚は気づいていないようだ。「いける」そう思いボウルを金魚に近づけようとした直後、
 
「とれた!!」

 隣の小学生の声が辺りに響き渡った。その瞬間、ポイの上の金魚が暴れだし、穴を開けプールへと逃げてしまった。
「このあんぽんたんが!!!」と、喉まで出かかったが、平静さを装った。
「相手は小学生だ、ここは我慢して次に切り替えよう」そう決心をした。
しかしターゲットの金魚は落ちた後、プールの反対側まで逃げてしまっていた。
「仕方ない、並んでいる人達もいるし、近くの金魚を掬って今日は帰ろう」
そうして明石太郎は残りのポイで、赤い金魚を2匹と黒い金魚を1匹掬い、持ち帰った。

 家へ帰ると、早速ビニール袋から金魚鉢へと移し替えた。
「まだまだ修行が足りんな。しかしよく見ると小さいサイズも可愛いではないか」
 
「これも良い夏の思い出だな」明石太郎は満足した。

終わり。

私がやるならきっと教頭。

お嬢様、ご機嫌麗しゅうございます。
的場でございます。

お嬢様、もう執事歌劇団のおでかけ執事「学校へまいりましょう」はご覧になりましたか?
七夕の日に産声を上げた新しいDVD でございます。

伊織先生率いる●年●組の生徒?達が繰り広げる授業型のエンターテイメントでございます。
内容のお話で盛り上がりたい気持ちは山々でございますが、
まだご覧になっていらっしゃらないお嬢様には所謂ネタバレになってしまいますので、
鑑賞中の私の心の声を以下に記します。

「あれ!許可した覚えがないのに的場が使われている!訴えよう!」

「夢野久作も凄いけど、授業展開の構成が秀逸だなあ」

「何か転校生は古谷君にだけ強くない?」

「これ以上は出ないだろう…ああ!ホームランっていう手があったのか!」

「絵が上手くないっていう時点でまず面白いよなあ」

「植物っていう発想はなかったわ!」

「くそ~みんな個性があって面白いなあ。」

「最後は全然感動しないけど伊織先生のエンターテイメント性に嫉妬心を感じる…っ!」

伊織先生が全体の構成を作っているとの噂を小耳に挟みました。
考えてみたら伊織がバラエティーを構成しているのを目の当たりにするのは初めてかもしれません。
こんな事もできるのか…。すごい…。

…ハッ!
いやいや伊織先生が黒幕であるならば、肖像権侵害で訴訟を起こす準備をせねば!
決して嫉妬に狂ったからではございませんよ?

何が肖像権侵害なのかは是非本編をご覧下さいませ。
この作品のプロローグであるART体験もまだお手に取っていただけます。

それでは本日はこれにて。

富田、砂にまみれる。

いかがお過ごしですか。桐島でございます。

さて始まりました今月の富田のお時間でございます。

私がいるときは極力表に出ない彼でございますが。実はすごく砂遊びが好きなのでございます。

しかし楽しんでる様子を見られたくないのかちょっと遊んだらすぐに引っ込んでしまうのでございます。

ある日執務から帰ると全力で遊んでおりました。しかし私に気付くとすごく睨まれてしまいました。

朝顔の種の様な目です。

怖いのか怖くないのか、、そんなへんな顔の富田でございました。

走れ明石

明石太郎は激怒した。
必ず、かの邪知暴虐のアパートの大家さんを除かなければならぬと決意した。

「家賃の値上げだと、、、許さん!」明石太郎は邪悪に人一倍敏感であった。

 その昔、悪を討つ為侍の出で立ちで木刀を振り回しながら町へ駆けたことがあったが、何も起こらぬままお巡りさんに見つかり怒られてしまった。
 今回は失敗を繰り返さないよう情報収集から始めた矢先、そんな噂を耳にした。
「まずは情報の正否を確認しなければ」部屋を出て明石太郎は102号室の扉を叩いた。
「染瀬(ぬりせ)開けてくれ」するとガチャリと鍵が開き、扉の隙間からほっそりとした優男が顔を覗かせた。
 染瀬は明石太郎と同い年で唯一気の合う住人だった。この男はLove&Peaceを信条とし慈愛の心で他者と触れ合い、常に戦争の平和的解決を模索していた。

「明石君か、来ると思ったよ。さあ上がってくれ」明石太郎は促されるまま部屋へ入ると、さっそく例の噂を確かめた。
「家賃を上げるというのは本当なのか?」
「残念ながら本当だ」
「実際に聞いたのか?」
「あぁ、先日ファミリーレストランでお昼ご飯を食べていたら、聞き覚えのある声が後ろから聞こえてきて、そちらを向くと大家さんと弁護士風の男がなにやらお金のことで話しをしていたんだ。嫌な予感がして聞き耳を立てていると」

大「先生、お願いしますよ」

弁「法律上の事はお任せください、家賃を必ず上げれるよう裏から手配いたします。それより問題はアパートの住民を言いくるめる事ができるかです。大家さん大丈夫でしょうね」

大「勿論ですとも!うちのアパートにはおバカか気の弱い住人しかおりませんから。こないだも住人の一人が侍の真似して警察の厄介になってましたから。まったく意味が分かりませんよ(笑)」

「まぁこんな感じだったかな。あとはお金の配分がどうとかこうとか」
「ぐぬぬ、、許せんな。値上げをし、あまつさえ私の事もバカにするとは」
「前回の生類憐みの令といい最近はやりたい放題だね」
(生類憐みの令とは、去年このアパートで新たに出来た決まりで犬や猫は勿論のこと、小動物に鳥、魚や虫と、生き物を飼うのは一切禁ずるという悪政である。ちなみに明石太郎はそれを無視し続け、留守の合間に殺虫剤をまかれ、帰宅すると3年飼っていたクワガタが全員ひっくり返っていた。という苦い思い出があった)

「染瀬!私は今度という今度は大家に鉄槌を下すぞ!!」
「わかった。ただ無理はするなよ、君は少々空回りするところがあるからね。それともう一つ、住民達との最終的な話し合いは今日の19時から町の役所を借りて行われるそうだよ」
「なにっ!そんなの聞いてないぞ。それにあと30分で始まるじゃないか」
「君がいたら話し合いがまとまらないと思ったのかもね」
「家賃交渉を住人抜きで行うなんて、そんな馬鹿な話があるか!ていうか君は行かないのか!?」
「僕は事なかれ主義だから、争うくらいなら喜んでお金を差し出すさ」
「あいかわらずだな。時間がないから私は行くぞ!」そういうと明石太郎はアパートを飛び出し、走り出した。

「大家なんかの口車に乗らないでくれよ。みんな気が弱いから心配だなぁ」
 明石太郎は呟いた。

前編完

今回は長くなってしまい、勝手ながら途中で区切らせていただきます。申し訳ございません。
そしてタイトルとお話しの冒頭で察してくださったお嬢様、温かく見守っていただければ幸いでございます。

終わり。