エイス・アニヴァーサリー。

お嬢様、お坊ちゃま。ご機嫌麗しゅうございます。
本日でギフトショップも8周年を迎えることができました。
これも一重にいつも足を運んで下さるお嬢様、お坊ちゃまのおかげでございます。

私もギフトショップへ赴いてから、かれこれ5年半が経過致しました。
色々な事がございましたね。

新しいお品物もたくさん増えました。
洋菓子の入れ替わりも盛んになり、2年前からはフットマンスイーツも登場致しました。
今では生菓子もフットマンがご提案させていただいているものが様々ございます。
彼等とはなかなかティーサロンで一緒にお仕事をする事が叶わない間柄ではございますが、
こうして毎月フットマンスイーツを考案してくれる事で繋がりが生まれている感じが致します。

現在並んでいるアクセサリーやソムリエナイフなど、お屋敷オリジナルのグッズもたくさん増えました。
万年筆やトートバッグなど、こちらも使用人が考案したお品物をお出しする機会もございました。

執事歌劇団は多くのイベントを行い、CDやDVDもおお嬢様、お坊ちゃまに喜んでいただいていることかと存じます。
その水面下で八幡率いる歌劇団以外のメンバーも「執事たちの休日」という企画でDVDをお出し致しました。
今月の終わりにも久々に万を持して第3弾がお披露目されますね。
歌やダンスだけではなく、イベントもバラエティができる使用人が増えてまいりましたね。
私と能見の漫才も負けてはいられません!

8年間「ここまで登ってきたなぁ」という実感と、周りの使用人との思い出や絆にじんわりする気持ちと共に「まだまだこれからもっと!」という気持ちが鎌首をもたげてまいります。
ギフトショップでお仕えするバンドゥールの仲間たちと共に更に熱いギフトショップにしてゆく為に日々邁進してまいります。
9年目もお嬢様、お坊ちゃまの温かいご声援を頂戴できればと存じますので、今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

紅茶のススメ

お嬢様、お坊ちゃま。
奥様、旦那様。
ご機嫌麗しゅうございます。
才木でございます。

先日ティーサロンの日誌を読んでおりまして、
百合野の紅茶の入れ方についての話が
使用人としてもとてもいいものだなと感じました。

私もギフトショップのヴァンドゥールとして、
またティーサロンにて紅茶係を拝命する一使用人としても、
皆様に紅茶の入れ方というものについて
お話させて頂くことも多くございます。

素晴らしい入れ方というものもあるかと存じますが、
的場などがよく申し上げるような
水出しアイスティーにしてしまうというのも
手軽でよろしゅうございますね。
家庭用の一リットル程度のボトルに、
底が見えなくなる程度(グラムとしては通常の2~3倍)を
使用して半日程度放置するだけです。
茶葉をこすのが面倒な場合は、
手に入りやすいお茶出し用のパックなどを
ご使用いただくのもよろしいかと存じます。

とはいえ寒さが増す季節にございますから、
ホットティーを楽しまれたい機会も多いと存じます、
茶葉入りで味を調整するというのは、
百合野がご提案しておりました。
ですので私が紅茶を入れる際に
最低限気を付けていることなど、
認めさせていただければと存じます。

===

1、茶器を温める。

ティーサロンにおいては専用のウォーマーを使用しておりますが、
ご別宅では、簡単に湯通ししていただくのがよろしいかと存じます、

ティーカップやポットに少量のお湯を入れてから、
茶葉の計量に取り掛かりましょう。
軽量後にお湯を捨てていただければ、
程よく温まっていますので、お湯は捨ててください。

紅茶の抽出の適温は、
出来るだけ100度に近い、沸騰したてのお湯と言われます。
茶器を温めることで、あまりお湯を冷まさず抽出出来ますし、
より温かいままで紅茶をお召し上がりいただけます。

余談ですが、この抽出の際の湯温には諸説あります。
使用人間でも意見の分かれるところでして、
使用する茶こしも温める者もおりますし、
抽出時にティーポットにコージーを被せる者も。
修業時代に教官から聞いた話によると、
やかんからティーポットにお湯を注ぐその間にも、
湯温が下がるという考え方もあるそうです。

紅茶というのは嗜好品でございます。
こだわりも人それぞれですし、
ある意味それも楽しみ方の一つでもあります。
興味あれば、色々とお試しください。
(締めのようですが、まだ続きます)

(1.5、沸かしたてのお湯を使用する)

何を隠そう一番面倒(と私は思います)。
この沸かしたてのお湯というのが曲者で、
可能であればやかんを使うのが適切です。

湯を沸かすことで、
程よく水に空気を含ませる目的があるという点。
沸かし過ぎも厳禁なので、
調整がしやすいという点で、やかんがベターです。

(これもステンレスのやかんのほうがいいだとか、
 少し使って馴染んだものがいいですとか、
 色々なことを言う人がいますね)

またこれは百合野も申しておりましたが、
水の鮮度も大事であるという点。
入れる直前に汲んだ水を沸かして、沸かし直しはしない。

先程から申し上げている湯温100度に近い状態は、
「グラグラと煮立った状態」のことを言います。
より正確に言いますと、
5円玉超の大きな気泡がぼこぼこと
浮かび上がってきている状態を指します。

ですが今の世の中電子ケトルなど、
便利なものもありますし
使っていただいてもよろしいかと存じます。
私も部屋で飲む時は、もっぱら頼りにしております。

面倒な入れ方は、
私も含めた紅茶係を務める使用人たちに、
お任せいただいてもよろしゅうございます。
ですので、「1.5」にさせていただきました。

2、茶葉の計量と湯量と抽出時間。

紅茶協会のすすめでは、
茶葉を抽出する場合
【5g/300ml/3分】とされています。
細かいことを申し上げますと
茶葉によって様々あるのですが、
概ねこの通りでよろしゅうございます。

ハーブティーは個々の違いが
茶葉以上に多くございますので、
難しい部分がございます。
ご興味あれば、お尋ねください。

この【茶葉の計量・湯量・抽出時間】が、最も大事です。
これさえ押さえていれば美味しく入ります。
他の部分は、より美味しくする為のものです。
(特に「こだわり」と申し上げているのは
 100点により近づける為のもの)

茶葉の計量について、はかりがあればいいですが、
なければティースプーンで2.5杯弱。
(山盛り2杯と少しです)
目分量なので何度か入れていただいて、
丁度いいあんばいをお探しくださいませ。

湯量に関しては、
一度300mlを計ってティーポットに入れてみてください。
注いだ際の大体の水位が分かりますので、
以降はそれを目安にお試しくださいませ。
実際の湯量は茶葉を含みますので、
お湯のみの水位より、気持ち高めに考えると
上手くいくかと思います。

抽出時間はタイマーなどで計ってください。
抽出後は、茶こしをかませてセカンドポットに。
茶葉は出していただいた方が
余分な渋みやえぐみが出ません。
面倒であれば、茶こし付きのガラス製ポットがお勧めです。

ちなみに使用人の中には、
セカンドポットに移すまでを3分と考える者と、
抽出開始からが3分と考える者がおります。
ここもこだわりポイント! ですね!

3・4、湯を注ぐ、抽出する、セカンドポットに移す。

湯を注ぐ一つとっても、
ジャンピングが云々、やれ優しく注ぐ、
いや高い位置から注ぐべきだ、
いやそんなものは意味はないetc…
様々なことが言われます。

私としては、
香りを立てたいときは
少し高い位置から強めに注ぎ、
ピュアティーなどは優しく注ぐようにしております。
とはいえこれも、
良くなる気がするといった部分ですので、
精進が必要ですね……。

セカンドポットに移す際も、
同じイメージが私にはあるのですが、
伊織などは普通に移しているので、
あまり関係がないのかも。

カップに直接注ぐのであれば、
高めから注ぐと香りは広がりやすいはずです。

この辺りは人それぞれ千差万別の部分ですので、
機会があればまたお話いたします。

===

美味しい紅茶はお楽しみいただけたでしょうか?
長くなりましたが、以上です。
まだまだ若輩者ですのに、語りすぎてしまった気も。
口だけにならないよう精進いたしますね。

是非、使用人たちの考案いたしましたブレンドを、
ご別宅でもお楽しみくださいませ。

あ! お勧めのブレンドですよね!

入れやすいのは圧倒的に、リリスと眠り姫です。
物腰の柔らかい百合野らしい柔らかな味わいと、
どんなに入れ方をしてもしっかりと芯がぶれません。
ストレートでもミルクでもよろしゅうございます。

フレーバードティーですと、
フリグが入れやすくてお勧めです。理由は言わずもがな。

少しこだわって入れてみたい方には、
ストレートなら姫睡蓮・アレキサンドライト。
姫睡蓮はステビアをしっかり入れるのが大事。
アレキサンドライトは私のイメージだと、
ジャスミンの味わいとフレーバーのバランスを
上手く出すのが難しい印象です。

ミルクティーですと、
PSG・メドゥアダラク・ゴシックあたり。
PSGは、当家のブレンドで1・2を争う難しい茶葉(私調べ)。
香りが繊細で消えやすい。しっかり出せたら素晴らしい。

メドゥも雑に入れると香りが弱いので難しさが。
ただチャイティー的な楽しみ方と考えると、
気にしなくてよろしいかも知れません。

ゴシックは甘い香りの部分をしっかり立てませんと、
アイリッシュウイスキーのフレーバーを感じにくいので、
バランスが意外に難しいので、出せると嬉しいです。

……ニルスはどうなのか?
作った本人なので簡単なのです……。
ジュニパーベリーを多めに入れるよう、
意識してみてくださいませ。

止め処ないので、この辺りで。
紅茶のお話も是非致しましょう!

才木

カサゴのギョナサン2

ギョナサン・ブライトストンは泳ぎの研究を再開した。さしあたって次なる目標は曲技飛行ならぬ曲技遊泳の会得だった。

 ギョナサンは「なぜ魚は直線的にしか泳ごうとしないのか」と、昔から思っていた。上下左右ジグザグに泳いでみたり、後方に進んでみたり、可能性は無限大にあるはずなのだ。

 ギョナサンは練習を始めた。そして今回は他の生物の観察も同時に行った。クラゲ、えび、たこ、イカ、色々な生き物の泳ぎ方や動き方を参考にし、次々と新技を開発することに成功した。さらに今までの経験と練習によって、それらの技を簡単に体現できることにギョナサンは深い喜びを感じた。

 この広大な海の中で、水中宙返り、スクリュー、後方一回転、ギョナサン流キューバンエイトを決められる魚はギョナサン以外一匹もいなかった。

 ある日ギョナサンがいつものように練習に勤しんでいると、ある変化に気づいた。若いカサゴ達がこちらを見ていたのだ。勿論、蔑むような目で見られることは昔からあったが、それとは様子が違うようだった。好奇の眼差し、さらには憧憬の念を抱く者もいた。

 その数は日に日に多くなっていった。10匹、20匹、30匹と、、、ギョナサンは思った「曲技遊泳はエンターテインメント性に富んでおり、傍から見てもきっと楽しいものなのだろう」
 
 そしてある時、一匹の若いカサゴが話しかけてきた。「僕にもその技術を教えてください」ギョナサンは驚いた。「ダメでしょうか?」彼はギョナサンの返答を待たずに尋ねた。

「、、、わかった、いいだろう。しかし曲技遊泳は極めてきけn、、」「待ってください!!」
 なんと、そのやり取りを聞いていた他の若いカサゴ達も一目散に集まってきたのだ。

「僕も!」「俺も!」「私も!」
「待て待て落ち着け」「いいか君達、曲技遊泳は極めて危険だ。つまり練習は相当ハードになると予想される。それでも耐えられるのか?」ギョナサンは冷静に答えていたが、内心は少し喜んでいた。初めて自分以外に泳ぎを極めたいと思うカサゴに出会えたことに。

「はい!もちろんです!」そしてギョナサンによる泳ぎの指導が始まった。

 初めはヒレの使い方や水平遊泳など基礎から教えていった。最初は地味な練習に不満を漏らす者も現れたが、そんな声も次第に無くなっていった。若さゆえか皆真面目に練習し、新しい課題を求め、どんどん覚えていった。

 ギョナサンは嬉しかった。自分の教えた事を熱心に取り組み、広まっていく。なにより自分と同じように泳ぐことが楽しいと思うカサゴ達がこんなにいたことに感激した。

 数週間後。ここら一帯の若いカサゴ達は、曲技遊泳を身につけていた。彼らは一匹一匹個性があり、時にはギョナサンをも驚かせるカサゴもいた。

 例えばクリス・マートンは曲技遊泳の才能が著しく、最も難易度が高いギョナサン流キューバンエイトを最速で成功させ、今ではギョナサンさえも考えつかなかった技を開発していた。

 やんちゃなアニー・キーディスは最もギョナサンに怒られた生徒と言えよう。しかし彼はあの最速遊泳記録を樹立した様子を隠れて見ていたらしく、それに憧れてスピードばかりを追及していた。アニーが自分の持っている記録を塗り替えた時は悔しかったが、嬉しくもあった。

 そして一番初めにギョナサンに声をかけたトム・ヨースターはとても勇気があるカサゴだった。海流を使った訓練など誰もが躊躇してしまう場面で、先陣を切って取り組んでいた。またギョナサンの補佐を率先して行っていた。トムとはこの期間で一番話したかもしれない。

 ギョナサンは一人で訓練していた時とは違う感動で溢れていた。そして最も充実した日々を過ごしていた。

 ギョナサンの指導が板についてきた頃、群れの長から呼び出された。「多分、最近の活動が評価されたのだろう」ギョナサンは嬉々として長のもとに向かった。
 
「来たかギョナサン・ブライトストン」
「族長、おまたせしました」そこには長以外にも幹部と呼ばれる大人たちも集まっていた。
「今回君を呼んだのは他でもない最近の活動についてだ」
「はい!」ギョナサンの声は歓喜に満ち溢れていた。

「ギョナサン、今行っている活動を即刻中止しなければ、君をこの縄張りから永久に追放する」

ギョナサンは頭が真っ白になった。
「え!?いったいなぜですか?」
「君の活動は今後群れに危険を及ぼすと判断されたのだ」
「、、、、」
「つまりこのまま活動を続けると、、、」ギョナサンは放心状態になりながら、長の話を聞いていた。

15分後
「先生、どうかされました?」いつもと雰囲気が違うギョナサンにトムが心配そうに声をかけた。
「、、、トムか、いや何でもない。すまんが今日は自習練習をしててくれ」
「わ、わかりました」トムはあえて何も聞かずに快諾した。
「悪いな」

 その夜ギョナサンは眠れずにいた。

 ギョナサンは落ち着きを取り戻していたが、そのせいか「長の言っていたこともあながち間違っていないな」と、感じていた。

 長が言うには、このまま自由にたくさんのカサゴ達が泳ぎ回っていたら、サメなどの天敵に見つかってしまう恐れがある。ギョナサンと共に早く泳ぐ術を身に付けた者はいいだろう。しかし生まれたての幼い子供や長のような老魚はそんなわけにもいかない。
 さらにはそんな生物がやってきたら他の種族にも影響を及ぼし、我々だけではなく、この楽園そのものが危険にさらされる。

 少し前ならそんな事に聞く耳を持たなかった。しかし、トム達との出会いでギョナサンの心も大きく変化しており、それが彼を迷わせていた。
 期限は明日の朝。ギョナサンは決めなければならない。活動を中止し、普通のカサゴ達のように生きるか、それとも永久追放か。

 次の日

「族長!いったいどういうことですか!?先生が、いやギョナサンが永久追放されたというのは」
「聞いたかトムよ」

「あんなに偉大な方を追放するなど、おかしいじゃないですか!」
「もう決まったことだ。彼はもう帰ってはこない」
「、、、」
 その後、長から全てを聞いたトムは、共に泳ぎを学んだ仲間たちに伝えた。

「そうか、そんなことが」
「仕方ないとはいえ、酷い話じゃないか」
「先生も僕たちに相談してくれればよかったのに」

「でも、先生は何か新しい目標ができたんじゃないかな」
「トム、それはどういうことだい?」
「ほら族長が言っていた、先生の最後の言葉」

”この泳ぎで世界を見て回ります”

「だから僕たちも先生から学んだことを、なんとかして伝えていこうよ!」

 ギョナサンから学んだ生徒たちはギョナサンの意思を他のカサゴ達にも伝えるよう努力した。ギョナサンのことを完全に否定する者があまりいなかったこともあり、それは徐々に広まっていった。
 そして数年後、ついに長や幹部たちを説得し「法と制限の範囲であれば自由に泳いでもよい」と自由への一歩を踏み出した。

 時を同じくして世界中の海域で、あるカサゴの噂が流れ始めた。

後編完


                    

           われらすべての心に棲むカサゴのギョナサンに

後日譚

 今日もカサゴのポコピーは泳ぎの特訓をしていた。

 ポコピーはあるカサゴの伝説を信じ、いつも一生懸命泳いでいた。しかし周りのカサゴ達はそんな彼を、いつも小馬鹿にしていた。

「おいポコピー!今日もくねくね泳ぎの練習かい?笑」
「そんなことして何になるってんだい!笑」

「うるさいぞ!君たちは伝説のギョナサン・ブライトストンを知らないのか!」ポコピーは精一杯声を張り上げて言った。

「お前そんな伝説、信じているのか?」
「馬鹿な奴だなぁ笑」
「大人たちはみんな言っているぜ、あれは昔からある、おとぎ話だって」

「そんなことない!伝説は本当さ!」

「どこの世界に回遊魚より速く泳げるカサゴがいるってんだ!」

「いたさ!それにギョナサンは速いだけじゃないぞ」
「例えば、え、えーと、、、そうだ [きょくげいおよぎ]だってできたんだ!こんな風に」ポコピーはしっぽをピョコピョコ動かしジグザグに泳ごうとした。

「わはははは!」
「またくねくねしてるぞ!」

 ポコピーが必死に泳いでいると”ゴツン!”何かに頭をぶつけた。
「いてててててて、、あっ、ごめんなさい」どうやら別の泳いでいたカサゴにぶつかったらしい。

「ポコピー、そんな変な泳ぎをしているからぶつかるんだよ笑」
「でも、あんなカサゴ見たこと無いな。それに体中ボロボロだぞ」そのカサゴの鱗は剥がれており、ヒレも所々傷ができていた。

 ポコピーも驚いていたが、なぜかその姿に懐かしさを感じていた。
「あのー、どこかであったことありますか?」ポコピーが聞いた。

「いや」「君は泳ぎの練習をしていたのかい?」
「は、はい。あのギョナサン・ブライトストンのようになりたくて」

 するとそのカサゴは静かに笑った。そして次の瞬間、目の前から一瞬で消え、いつの間にか水面ギリギリまで移動していた。

 遠くで見ていたいじめっ子のカサゴ達は何が起きたのか分かっていなかった。しかしポコピーは確信していた。
「今、絶対に泳いでいた!!!」「あ、あなたは何者なんですか?」大声でポコピーは聞いた。
 
 すると今度は海底にものすごいスピードで泳ぎ始めた。しかも途中で前後左右、何回転も回り、渦巻き状にも泳いでいた。そしてまた一瞬の内にポコピーの前まで来ていた。

「どうやったのですか!?」
「今のはただの戯れさ。カサゴの限界を突破し、途中で[曲技遊泳]を組み合わせただけのこと。君もやってみるかい?」
「はい!」そしてポコピーはある確証と共にその者の名前を尋ねた。

「私かい?ギョナサン・ブライトストン。ギョナサンとでも呼んでくれ」

                       完

ハロウィンのすすめ

お嬢様、お坊ちゃま。
奥様、旦那様。
ご機嫌麗しゅうございます。
才木でございます。

皆様、ハロウィンはお楽しみいただけておりますか?

この度は「お屋敷」がテーマでございます。
三カ国の使用人達がティーサロンに集い、
パーティーが催されるというストーリーです。

しかしハロウィンに集う使用人達でございますので、
一筋縄では参りません。
使える主人のの幸せを守る為、
荒事も辞さない輩共にございます。

そんな彼らが一堂に会する時、
穏便に済むような謂れなどございますでしょうか?
それぞれのお屋敷の誇りをかけて、
三つ巴【Triangle】の争いが巻き起こります。

……

そんな使用人達の姿を!
収めた一冊をご用意しております!
それが
【Swallowtail Halloween Photobook「TRIANGLE」】
にございます!

この度は、
ハロウィンの配信イベントも
合わせてお楽しみいただけます。
フォトブックとして仮装姿を楽しむもよし。
配信の副読本として楽しむもよし。
一粒で二度美味しいものに仕上がっておりますよ!

なお配信の内容なのですが……。 
使用人達のゲーム対決ですとか、
彼らの日常の記録をミニシーンとして撮影いたしましたり
様々、楽しんで頂けるようにお作りしております。

それぞれのキャラクターの設定などを
フォトブックにて予習いただきますと、
より楽しめるかと存じます。

数に限りもございますので、
是非お早めにお手に取ってくださいませ!

色々と申し上げましたが、
使用人一同、皆様にお楽しみいただけるよう、
精一杯考えたハロウィンでございます。
お楽しみ頂けますと幸いです。

才木

カサゴのギョナサン

夕暮れだ。今日も騒がしい海に、夜の帳が下りようとしている。

 ここら一帯の沖合は、水面から大きく飛び出すほどの岩礁がいくつもあり、常に潮の流れが活発であった。プランクトンや甲殻類は豊富で、それらを食べる小魚にとっては絶好の海域であり、さらにそれを食べる大きな魚達はここを楽園と呼んだ。

 岩礁は住処としても優秀であった。魚達は知る由もないが複雑な潮流は漁船を決して近づけず、岩礁の岩陰や無数の珊瑚は絶好の隠れ家となっており、サメ等の天敵からも守られていた。

 つまりこの楽園に住む大きな魚達は、毎日安心して美味しい餌を食べ生きているのだ。ただ一匹を除いて。

 今日もカサゴのギョナサン・ブライトストンは眼下に広がる餌には目もくれず泳ぎの練習に夢中になっていた。
 普通、魚は食べるため、逃げるため、生きるために泳ぐものだが、ギョナサンにとって重要なのは泳ぐことそれ自体だった。彼は泳ぐのが好きだった。

 ギョナサンは特に速度を追及しており、「どうすればよりスピードが出るのか」という事ばかりを考えていた。普通に泳いでいてもカサゴの域を抜け出せない、ではどうすればよいか。

 まずギョナサンは、しっぽの振り方や背ビレの角度を変えながら、朝晩問わず何度も泳いだ。するとある日を境に、だんだんと速く泳げるコツを掴みだした。
 どうやらしっぽの動きは振る回数よりも、一定のリズムを崩さない事の方が大切らしい。そして背ビレは、速度によって角度を微妙に調節することが重要であるという事を彼は知った。

 次に、ギョナサンは海流を利用しようと考えた。これはとても難しく、気を抜くと流されてしまう。さらには、ただ泳いで乗るのではなく、先ほどの動きを取り入れなければならない。何度も失敗した。しかし彼は諦めなかった。

「要はバランスが大切なのだ。バランスが崩れると体が傾き、泳ぐどころではなくなる。つまり最も水の抵抗を受ける頭を正確に保てれば、バランスを失うこともないはずだ」そこからの上達は恐ろしく早かった。
 そしてついにギョナサンは海流での泳ぎをマスターし、カサゴ界の最速遊泳記録を大幅に更新した。

 しかし成功の裏には大きな犠牲もあった。ギョナサンの体はハードな練習によりボロボロになっていたのだ。鱗は所々剥がれ、ヒレも傷ができていた。また、ろくに餌を食べずに練習していたので体はやせ細り、そして群れの仲間達からは距離を置かれていた。

 ある日、群れの長から「ギョナサン、少しは他の仲間達を見習って、海底でじっと餌を待つことはできないのか」と怒られた。それからの数日間ギョナサンは素直に従い、海底で餌をじっと待ってみた。
 だが、やはりギョナサンには耐えられなかった。

「小魚や小さいカニを待って現れなければちょびっと移動して、また待つ。それの繰り返し。これに何の意味があるというのだ。時間の無駄だ!」ボケっと口を開けている仲間達を余所に、ギョナサンはまた泳ぎ始めた。

前編完

今回も長くなってしまい、勝手ながら途中で区切らせていただきます。申し訳ございません。
そして今回の内容に関しても、「ぱk、、、パロディかな」と察してくださったお嬢様、温かく見守っていただければ幸いでございます。

終わり。

拉麺。

お嬢様、ご機嫌麗しゅうございます。
本日は歴史の勉強を致しましょう。

お嬢様は「辮髪」をご存じでしょうか?
「べんぱつ」でございます。

言葉では聞きなじみがないかと存じますので、私が描いた絵でご覧になっていただければ
きっとお嬢様もどこかでご覧になった事のあるヘアースタイルかと存じます。

前期。
一般的にイメージされるのはこちらかもしれません。

後期
あまり見覚えがないかもしれませんが、的場はこちらの方が格好良いと感じております。

昔の中国人男性の頭髪で、現代では見ることができませんが、
日本で言うところの「ちょんまげ」に近い感覚のものだそうです。

馬に乗る時、戦う時に邪魔にならない様にこういう髪型にしたそうでございますよ。
「じゃあこんなに前や上をたくさん剃る意味があるのか!?」とも思いますが…。

日本の江戸時代ぐらいの時期に中国ではみんなこのヘアーだったそうです。
非常にナウい感じがして気分が良いですね。

今見ると「とても変な髪型だなあ」という感じも致しますが、
何故か一周回ってノスタルジィというか、古き良き時代の浪漫を感じたり
現代の俳優が辮髪にしていると凄く格好良く見えたり致します。

つまり何かと言えば、私は辮髪にとても魅かれた、という次第でございます。

ギフトショップではハロウィンの使用人がたくさん!
私のお勧めはフォトブックでございます。

それでは本日はこれにて。

肌色ハロウィン。

お嬢様、ご機嫌麗しゅうございます。
的場でございます。

先日大旦那様より呼び出しがございました。

「…どれがバレたのだ…っ!」

心中穏やかではおれず、震えながら大旦那様のおられる大広間へ向かいました。

しかし蓋を開けてみれば意外な事にお叱りではなく、メートルドゥヴァンドゥールとしての新たな使命を頂戴致しました。
私に下された新しい使命とは!

「今年のハロウィンは顔の色を肌色でやりなさい」
との事でございました。

…!!!!!!

「顔を塗らない的場(ハロウィン時のみ)なんて!」

私はショックを隠せませんでした。
肌色のハロウィン的場など、
歌を忘れた百合野!
ダジャレのない隈川!
ノンアルコールの時任の様なものでございます。

私が涙を流して塗りを懇願すると
「どうしてそんなに顔を塗りたいんだ!」
と仰られました。

!!!!!!!!!!!!!!!!!!

…し、至極当然の理由だ…!
理由など、「心が塗れと叫んでいるから」以外の理由がない…。
私はこうべを垂れ、泣く泣く大広間を後にしました。

床に着いた時に少し落ち着き考えました。
大旦那様は私にもっと後輩達の見本になる様に、との想いを託して下さったのでしょう。
今以上の使用人になるには必要な事だと教えて下さったのだと感じました。
自己中心的な考えを恥じ、深く反省を致しました。

お嬢様、そしてカラフル的場ファンの皆様。
今年から的場はドウラン(顔を塗るアイテム)に頼るのをやめに致します。
普通の男の子に戻ります。
少しだけ淋しい気持ちはございますが、ゆるりとハロウィンを楽しむことに致しましょう。

それでは本日はこれにて。

…フフフ。

秋の一日

秋分の日

日本国民の祝日の一つであり、祝日法により天文観測による秋分が起こる秋分日が選定され休日とされる。通例、9月22日から9月23日ごろのいずれか1日。

しばしば昼が短くなって「昼と夜の長さが等しくなる日」といわれるが、実際は昼の方が少し長い。

執事ペディア

「ふむふむなるほど、、、つまりまだお昼の時間が長いのか」
 秋分の日を調べ終えると、明石太郎(あかしたろう)はふかふかの布団に寝ころんだ。
「お昼の時間が長いということは、日が昇り暑い時間帯もまだまだ長いということ、、、」
「最悪ではないか!!!」
「ん?デジャブか!?前にもこんな事があったような、、、」時間は午前一時を回ったところ。

「とは言えこれからは、気温が下がっていくだろう。つまり寒い日に着る服を買わなければならない」
 明石太郎はふと茶棚に目をやった。ガマちゃんは今日もぺちゃんこだった。

「ふっふっふ。想定済みよ!」明石太郎は落ち着いていた。
「こんな事もあろうかと、夏の間にへそくりを貯めておいたのさ!」
「甘いよガマツグ、私を残念がらせようとしたって」

「アリとキリギリスって知ってるかい?遊んで暮らしているだけじゃダメなのさ!今どきの男は冬に向けて準備しているのが格好いいんだ」明石太郎は押入れの奥底からへそくりを取り出した。
「へへへ、8千円もある。これだけあれば洋服以外も買えちゃうぞ!早速明日お勤めが終わったら、買い物に行こうかな」明石太郎は遠足前の小学生の気分を久しぶりに味わっていた。

「なんだかテンションが上がってきたぞ。そうだ、先日染瀬に頂いたお酒を飲もう!」
部屋の隅に置いてあった一升瓶を手元に引き寄せ、小さなガラスのコップに注いだ。

「とても飲みやすい」と言っていたけれど、どうだろうか?
 明石太郎はお酒が得意ではなかったが、ゆっくりと口を近づけた。
「ズズズズズ、、、ん!?ゴクゴク、、、プハ~」
「すごい!水みたいだ。フルーティーな風味でさっぱりとしている一方、味に深いコクがある」どうやら明石太郎は気に入ったようだ。そしてガマツグと酒盛りを始めた。

10分後
「おいガマツグ、今更そんな顔をしてもお金を入れてやらないよ」

1時間後
「いや、実に美味しいお酒だ、、、何?君も何か飲みたいのか?」
「ではこの百円玉をお口に入れてやろう!がはははは(笑)」

2時間後
「君とは何年の付き合いになるだろう、、、今までありがとな。グスン(泣)」
「これからは頑張って君を太らせてやるからな(泣)」

3時間後
「やはり君が悪いんだ!君がもっと固く口を閉じていれば私は浪費せずに済むのだ(怒)」
「明日、貯金箱を買ってきて、君なんてインテリアにしてやる!!」

、、、そして数時間後
「むにゃむにゃ、、、どうやら寝てしまったか」「、、、今何時だ」

「、、、、、13時」「!!!!」

「やばい!遅刻だ!!急がなきゃ!」
 そんな明石太郎をよそ目にガマツグは、ぷっくりと佇み、心なしか笑っていた。

その後、明石太郎はとびっきりの言い訳を考えてお勤め先に臨んだが、真っ赤な顔と酒臭さの前には、どんな言い訳も通用せず、上司の顔を何倍にも膨らませた。

終わり。

※明石太郎と明石は別人でございます。

初めまして

お嬢様、お坊ちゃま。
奥様、旦那様。
新人ヴァンドゥールの才木でございます。

9月より大旦那様にお許し頂きまして、
ギフトショップにてお仕えしております。
まだ慣れぬ点もございますので、
ご迷惑をおかけすることもあるかと存じますが、
今後ともよろしくお願い致します。

……などと申しましても、
疑問符が浮かぶ所ではあるかと存じます。先に申し上げた通りギフトショップでも
皆様のお世話を任せられることになりました。
今一度新人の気持ちを思い出し、
新たな気持ちでお仕え出来ればと考えております。

今までは後輩と考えておりました
赤井・明石ですが、
右も左も分からないギフトショップで
こんなにも頼りになる2人はおりませんでした。
的場も今まで様々な場面で
共にお務めを果たして参りましたが、
改めてギフトショップにて
とても頼りになるということを実感致しました。
桐島もティーサロンにて長く一緒に務めて参りましたが、
見えなかった一面があるなと
感じるところが多くありました。

ということで!
私の独断と偏見によるヴァンドゥール紹介を
させて頂きたく存じます。
どうか生温かい目でご覧くださいませ。

―――

⚫赤井
ギフトショップ的場一家長男赤井にございます。
洗練された焼き菓子や紅茶の知識は
舌を巻くものがございます。

また日頃はあまり意識しなかったのですが、
身長が180ございまして
近寄りますと想像より大柄です。
桐島や的場がおりますので目立ちませんが、
私や明石の隣に立ちますと一目瞭然。
日頃の柔和な喋り口調からは想像出来ないところです。

ギフトショップ愛に関しては
的場に張るものがあると存じます。
日々お嬢様により良いものをお届けする為、
研鑽に励んでおりまして、
私自身も様々なことを教わりました。

特に皆様にお見せするPOPを描く才能は秀逸です。

当月のオススメは
「マロンケーキ」にございます。

⚫明石
私の中で一番イメージの変わった使用人かも知れません。

宿舎などでも言葉を交わすことはございまして、
面白い使用人だとは感じていたのですが、
胸に秘めた熱いパッションを感じとれていませんでした。

皆様と快活にお話する彼の姿を見て、
その話題の広さや使用人としての資質は
素晴らしいものだと感じました。
(私ごときが何をというのはありますが)

このブログも拝見したところ
その文才にも触れまして、
これは何かをやってもらいたい。
出来れば一緒にやってみたい。
そう感じております。
……大旦那様、皆様いかがでしょうか?

当月のオススメは
「ハニーミルククッキー」でございます。

⚫桐島
ギフトショップで見ると何倍にも大きく見えます(物理的にも)。
近頃のバンプアップの成果でもあるかと存じます。

冗談はともかくと致しまして、
桐島は皆様を楽しませようという
奉仕の心が強い使用人でございます。
それは日頃のお給仕や
ギフトショップのお務めにおいても、
発揮されております。
またデザインなどの側面においても
感じられるところにございます。

ティーサロンにて給仕していると、
他の使用人の給仕を横で見ることは
中々難しゅうございますので、
改めて感じたことでありました。

全く話はズレますが
桐島と明石の絵本でもお作りしたら、
面白くなりそう気が致します。

当月のオススメは
「テリーヌショコラ(冷凍スイーツ)」にございます。

⚫的場
ご存知メートゥルドゥ・ヴァンドゥールでございます。
今までフォトブックDVDなど様々な場面で、
会話を交わすことはございましたが日常のお務めを共にするのは初めてのことでございます。

皆様とお話しされている様子を拝見致しますと、
焼き菓子や歌劇団に関する愛情が
よく伝わって参ります。

ギフトショップ愛において、
右に出るものはいないと
自信を持って申し上げられます。
使用人として追いつけ追い越せではないのですが、
的場に1歩でも迫れるよう努力を
していきたい所存です。

当月のオススメは
「和梨のクリームタルト」にございます。

―――

以上メンバー紹介でございました。

ちなみに私の当月のオススメは、
勿論「ペンギンクッキー」でございます。

まだまだヴァンドゥールとしては
新人でございますので、
1日でも早く皆に追いつけるよう、
誠心誠意努めて参ります。

皆様におかれましても
改めてではございますが、
是非ギフトショップにもお立ち寄り頂ければと存じます。
美味しいもの楽しいもの一杯ご用意して、
皆様のお戻りを心よりお待ちしております。

才木

オータムハム

いかがお過ごしでございますか。桐島でございます。

秋。様々な事が活発に行える季節でございます。

私は年がら年中筋トレの秋でございますが、皆様はどの様にお過ごしでございましょうか。

勉学に勤しむもよし、食に奔走するもよし、運動に明け暮れるでもよし…

おや?決めかねていらっしゃいますか?

ではここで富田にアドバイスを頂きましょう。

うん知ってました。

是非とも美味しいものが欲しい時はギフトショップに足を運んで下されば幸いでございます。

それではまたお会い致しましょう。