クリスマス

12月中旬、街は色とりどりなイルミネーションに彩られていた。それに引き寄せられるように辺りにはプラトニックな男女が溢れ、寒風吹きすさぶ冷たい季節に、安らぎの温かさをもたらしていた。

 そんなクリスマスシーズンに期待を寄せる町や人々を余所に、「我、浮いた催しには一切関せず」といった面持ちのアパートが町外れに建っていた。ごつごつとした錆びれた外壁には部屋の窓ガラスが等間隔に設置されており、全ての窓が色あせたカーテンで閉め切っていた。それは多分ここの住人も、このアパートに相応しい、孤独に打ち勝てるもののふしかいないのだろうと一目で感じさせた。ちなみに明石太郎(あかし たろう)もその一人である。

 そんな女っ気が一切無いアパートだが、うっすらと華やかな雰囲気に包まれる時が2つある。

 まず一つ。この辺りには素行の悪い野良猫が多く、近辺のお店の魚を盗んだり、ゴミを漁り散らかしたり、一昼夜喧嘩したりと、この地域の住人たちを困らせていた。そして何故だかは分からないが、偶にアパートの前に多くの野良猫が集まる時がある。そしてニャンニャンゴロゴロと、まるで皆で論争しているかのように鳴きだすのだ。

 住人たちには迷惑な話だったが、その猫たちに興味を惹かれた人々がいた。通行人の女性と子供である。どうやら猫たちがしゃべるように鳴いている姿に心を奪われたらしい。そして誰かが猫に近づこうとすると決まって猫たちは「シャー!!」と威嚇する。しかし彼女たちには全くの逆効果だった。より一層猫をもふもふしたい衝動に駆られ、最終的に猫たちは逃げるか、されるがままにもふもふの刑に処されるのだった。

 それでも猫たちは定期的に集会をし、さらに多くの女性と子供を魅了した。初めはアパートの住民たちは迷惑がっていたが、女性、子供、猫という錆びれたアパートに訪れるひと時のオアシスに惹かれ、散歩をするフリをして見にいった。ほとんどの者が実際は「女性と話したい」という理由だったが、誰一人として歴史的一歩を踏み出せずにいた。少し話が逸れてしまったがこれが一つ目だ。そして二つ目は染瀬清一(ぬりせ しょういち)の存在である。

 
 その日、染瀬清一はこたつでぬくぬくしながら感慨に耽っていた。
「今年もあっという間だったなぁ。しかしこの一年も色々なことがあった」「とりわけ思い出すのが明石君と大家さんとの家賃戦争だな」

 染瀬清一。好きな言葉は「和を以て貴しとなす」彼はすらっとした細めの体型で争いを好まず、人当たりの良さが体中から醸し出されていた。さらに至誠な眼の奥には知的な脳みそが隠れており、先の家賃戦争では、明石太郎の大立ち回りの裏で的確なサポートを施していた。

 ”どんどん”突然、染瀬の住む102号室の扉が叩かれた。
「おーい染瀬、いるかい?」今度は扉の向こうから屈託のない声が聞こえてきた。
「鍵は開いているよー」染瀬がそう言うと、満面の笑みの明石太郎が入ってきた。
「おっ!こたつかい?いいねぇ、私にくれよ」
「残念ながらそれは出来ない相談だ。このこたつは僕が知る限り最もぬくいこたつだからね」「まぁ温まりに来るのはいつでも歓迎するよ」「それより明石君、君の表情から察するに、また何か面白いことでも見つけてきたのかい?」
「そうだった!今年最後の交流会の日時が決まった。是非、染瀬にも参加してほしい」
 このアパートでは年に数回、住民同士の交流会が行われていた。お酒を飲みながら談笑したり、時には麻雀や、鍋をつついたりしていた。最近では改心したアパートの大家さんも参加していた。

「勿論参加するよ。で、日時は?」
「12月24日、23時から」
「クリスマスイブじゃないか。今年も皆、浮いた話はないらしいな」
「あたりまえだ!我々をなめるなよ!」
「いや、自信満々に言われても、、」
「だから今回も染瀬の”必殺話”を皆期待している!」
「分かった、楽しみにしていてくれ!」そう、この染瀬の”必殺話”こそが前述の二つ目であった。

 染瀬清一の良き人柄は少年時代から発揮されていた。それは男友達だけでなく女の子からも評判で、それが時に恋愛感情に進展することもあった。つまり染瀬清一は今でこそ特別な人はいないが、このアパートでは珍しい、人並みに恋愛経験がある男だった。
 そして皆が熱望している”必殺話”とはその体験談を語るいわゆる”恋バナ”であった。

「では染瀬よ、詳しいことが決まり次第また報告しに来るから首を洗って待っていたまえ」そう言うと明石太郎は去っていった。

前編完

※ちなみに、ぬりせの「ぬり」に「塗」ではなく「染」という漢字を使っているのは、私が漢字の読み方を勘違いしていたから、というのはここだけの話です。

終わり。

カウントダウン先生。

お嬢様、ご機嫌麗しゅうございます。
カウントダウンのお知らせが発表されましたね。
早くお目にかけたくて仕方のうございます!

あまり詳しくはお話できませんが、
今年は新しい事にチャレンジして
かなり練習を重ねております。

内容は申し上げられませんが、
誰と出し物の練習をしたかを少しだけお伝え致します。

その使用人は何と古谷でございます!!

古谷と的場…
少し意外な組み合わせではございませんか?
古谷とは対等に何かを練習したという事ではございません。
古谷先生に私が様々な事を学びつつ練習致しました。

古谷は執事歌劇団に入ってからというもの、自身が学んだ事をとても大切に積み重ねておりました。
最近の事は勿論、昔の事も学びたての様に覚えており、とても丁寧に教えてくれております。
ずっと一人で練習している姿は度々見かけておりましたが、一度教わった事を何回も大事に反芻していたのでしょうね。

そして教え方も非常に優しい!
古谷先生が褒めて伸ばすタイプだとは…。
(いや、別に厳しい冷たいイメージがあった訳ではございませんが)
何となくクールな印象だったので、少々感動した様なリアクションと共に
「すごく上手になりましたね!」
と言ってくれる古谷は新鮮でございました。

会話をする時に緊張するのか照れくさいのか、あまりしっかり目が合わないところもチャームポイントでございます。
一つ一つ言葉を慎重に選びながら教えてくれる姿も、舞台に上がっている時とは違ってギャップがございました。

カウントダウンは毎年お嬢様に楽しいものをお届けする為に邁進してはおりますが、
今年、私にとっては思いのほか使用人の新たな魅力を感じる事ができた良い年末になりました。
あまり詳しい事をお伝えできないのはもどかしゅうございますが、年末の使用人達の宴を是非!
楽しみにお待ち下さいませ。

釣り

ご機嫌麗しゅうございます、お嬢様。

最近鑑賞した映画は「恋におちたシェイクスピア」明石でございます。
久しぶりのロマンティックコメディは良いものでございました。

先日、私は海へ行ってまいりました。理由は勿論「釣り」でございます。

”いやぁ~、今回もとても面白うございました”

いったい釣りの何が面白いのか(特に私は海釣りが好きなのですが)
やはり一番は魚が餌に食いついた瞬間でございます。一体どんな魚が掛かったのか?その魚の引き具合や投げたポイントによって「あれかな?これかな?」と想像し、そして釣り上げた時に想像を超えた魚が掛かっていた時が最高の瞬間なのです。
この何が釣れるか分からないドキドキ感は、お嬢様も分かってくださるのではないかと存じます。
(ランダムブロm、、、ゴホン、ゴホン。失礼いたしました)

そして先日の釣りでもこの瞬間がございました!
それはその日一番の引き。少しでも力を緩めると、あっという間に岩陰に逃げられてしまいます。そういう時は釣り竿を90°にして保ち、潜られないようにとにかく我慢!そして魚がおとなしくなった瞬間全力でリールを巻きます。

長いようで短い、魚とのファイト。私はなんとか釣り上げる事に成功しました。
その時釣り上げた魚が下の写真です。

これはアイゴという魚で、防波堤で釣れる魚では比較的大きく(この写真は30㎝前後)力も強いのでアイゴとのファイトはとても面白いのですが、実は釣り人達からは人気が無い魚なのです。

何故かというと一つは臭みが強く食べるなら下処理が必須という事。そしてもう一つ、写真でもわかる通り背ビレ、腹ビレ、臀ビレに鋭いトゲがあり、しかも刺されると激しい痛みに襲われる毒があるからなのです。
つまりアイゴは釣るまでは良いが、釣った後の処理が非常に面倒くさい魚なのです。

しかし「釣った魚を食べる」というのも釣りの醍醐味でございます。なので私はアイゴの下処理をする事にしました。まずアイゴが暴れないように気を付けながら、毒ビレをハサミで切り始めました。もし刺されれば折角の楽しい一日が台無しになってしまいます。
ザクザクとハサミを進め、背ビレが終わると臀ビレを、丁寧に処理していきました。そして何とかトゲに触れることなく切り終わりました。
ここまで来たらあとは内臓とエラと血合いを取り除くだけ!これは召し上がるならどの魚でも、釣った後に出来るだけ早く行うのがおススメでございます。

そんなこんなで楽しい時間も終わり、後片付けを済ませると、私は釣り場を後にしました。
ちなみに生の魚はすぐに傷んでしまいますので、冷やして持って帰りましょう。参考までに私のやり方はクーラーボックスに海水と氷を入れてその中にいつも魚を入れております。

自室に戻ると早速魚を調理いたしました。下処理をしたアイゴの他にカサゴやメジナなど、ぱぱっと三枚おろしにします。そして今回はアイゴをお刺身に、その他を竜田揚げにしました。竜田揚げはその晩頂き、お刺身は一日寝かせることにしました。

お刺身で頂く場合、直ぐに食べるか一日寝かせるかは人それぞれかと存じます。私は食感を楽しみたいなら直ぐに、味に深みを出させるなら一日置くのが良い気がします。

最後になりますが調理したお魚は全部美味しく頂きました!
アイゴのお刺身も意外と臭みが無く、真鯛と比べても遜色ないくらい美味でございました。私だけ頂くのも申し訳ないので、お嬢様にも召し上がっていただきたかったですが、大旦那様の許しが出なかったので、今回は断腸の思いでお刺身の写真を掲載して終わろうかと存じます。

それではお嬢様、失礼いたします。

追伸、写真を撮るのは中々に難しゅうございます。

終わり。

8周年と2歳の富田

いかがお過ごしでございますか。桐島でございます。

さて最近の富田ですが

はい、完全に豆腐ライフを満喫しております。

なんか悔しゅうございましたのでこの何も考えて無い頭を

こうして…

こう!でございます。

見事に情けない顔でございますね。

美味い話には裏がある。これでしっかりと富田も勉強できたかと存じます。

ギフトショップも8周年。お嬢様には美味しい物だけをご用意し続けますので、これからもどうぞよろしくお願い致します。

記念のアソートも美味しい物ばかり、是非お手に取ってみて下さいませ。

…あ、ご安心を、顔をむぎゅとは致しませんので。

エイス・アニヴァーサリー。

お嬢様、お坊ちゃま。ご機嫌麗しゅうございます。
本日でギフトショップも8周年を迎えることができました。
これも一重にいつも足を運んで下さるお嬢様、お坊ちゃまのおかげでございます。

私もギフトショップへ赴いてから、かれこれ5年半が経過致しました。
色々な事がございましたね。

新しいお品物もたくさん増えました。
洋菓子の入れ替わりも盛んになり、2年前からはフットマンスイーツも登場致しました。
今では生菓子もフットマンがご提案させていただいているものが様々ございます。
彼等とはなかなかティーサロンで一緒にお仕事をする事が叶わない間柄ではございますが、
こうして毎月フットマンスイーツを考案してくれる事で繋がりが生まれている感じが致します。

現在並んでいるアクセサリーやソムリエナイフなど、お屋敷オリジナルのグッズもたくさん増えました。
万年筆やトートバッグなど、こちらも使用人が考案したお品物をお出しする機会もございました。

執事歌劇団は多くのイベントを行い、CDやDVDもおお嬢様、お坊ちゃまに喜んでいただいていることかと存じます。
その水面下で八幡率いる歌劇団以外のメンバーも「執事たちの休日」という企画でDVDをお出し致しました。
今月の終わりにも久々に万を持して第3弾がお披露目されますね。
歌やダンスだけではなく、イベントもバラエティができる使用人が増えてまいりましたね。
私と能見の漫才も負けてはいられません!

8年間「ここまで登ってきたなぁ」という実感と、周りの使用人との思い出や絆にじんわりする気持ちと共に「まだまだこれからもっと!」という気持ちが鎌首をもたげてまいります。
ギフトショップでお仕えするバンドゥールの仲間たちと共に更に熱いギフトショップにしてゆく為に日々邁進してまいります。
9年目もお嬢様、お坊ちゃまの温かいご声援を頂戴できればと存じますので、今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

紅茶のススメ

お嬢様、お坊ちゃま。
奥様、旦那様。
ご機嫌麗しゅうございます。
才木でございます。

先日ティーサロンの日誌を読んでおりまして、
百合野の紅茶の入れ方についての話が
使用人としてもとてもいいものだなと感じました。

私もギフトショップのヴァンドゥールとして、
またティーサロンにて紅茶係を拝命する一使用人としても、
皆様に紅茶の入れ方というものについて
お話させて頂くことも多くございます。

素晴らしい入れ方というものもあるかと存じますが、
的場などがよく申し上げるような
水出しアイスティーにしてしまうというのも
手軽でよろしゅうございますね。
家庭用の一リットル程度のボトルに、
底が見えなくなる程度(グラムとしては通常の2~3倍)を
使用して半日程度放置するだけです。
茶葉をこすのが面倒な場合は、
手に入りやすいお茶出し用のパックなどを
ご使用いただくのもよろしいかと存じます。

とはいえ寒さが増す季節にございますから、
ホットティーを楽しまれたい機会も多いと存じます、
茶葉入りで味を調整するというのは、
百合野がご提案しておりました。
ですので私が紅茶を入れる際に
最低限気を付けていることなど、
認めさせていただければと存じます。

===

1、茶器を温める。

ティーサロンにおいては専用のウォーマーを使用しておりますが、
ご別宅では、簡単に湯通ししていただくのがよろしいかと存じます、

ティーカップやポットに少量のお湯を入れてから、
茶葉の計量に取り掛かりましょう。
軽量後にお湯を捨てていただければ、
程よく温まっていますので、お湯は捨ててください。

紅茶の抽出の適温は、
出来るだけ100度に近い、沸騰したてのお湯と言われます。
茶器を温めることで、あまりお湯を冷まさず抽出出来ますし、
より温かいままで紅茶をお召し上がりいただけます。

余談ですが、この抽出の際の湯温には諸説あります。
使用人間でも意見の分かれるところでして、
使用する茶こしも温める者もおりますし、
抽出時にティーポットにコージーを被せる者も。
修業時代に教官から聞いた話によると、
やかんからティーポットにお湯を注ぐその間にも、
湯温が下がるという考え方もあるそうです。

紅茶というのは嗜好品でございます。
こだわりも人それぞれですし、
ある意味それも楽しみ方の一つでもあります。
興味あれば、色々とお試しください。
(締めのようですが、まだ続きます)

(1.5、沸かしたてのお湯を使用する)

何を隠そう一番面倒(と私は思います)。
この沸かしたてのお湯というのが曲者で、
可能であればやかんを使うのが適切です。

湯を沸かすことで、
程よく水に空気を含ませる目的があるという点。
沸かし過ぎも厳禁なので、
調整がしやすいという点で、やかんがベターです。

(これもステンレスのやかんのほうがいいだとか、
 少し使って馴染んだものがいいですとか、
 色々なことを言う人がいますね)

またこれは百合野も申しておりましたが、
水の鮮度も大事であるという点。
入れる直前に汲んだ水を沸かして、沸かし直しはしない。

先程から申し上げている湯温100度に近い状態は、
「グラグラと煮立った状態」のことを言います。
より正確に言いますと、
5円玉超の大きな気泡がぼこぼこと
浮かび上がってきている状態を指します。

ですが今の世の中電子ケトルなど、
便利なものもありますし
使っていただいてもよろしいかと存じます。
私も部屋で飲む時は、もっぱら頼りにしております。

面倒な入れ方は、
私も含めた紅茶係を務める使用人たちに、
お任せいただいてもよろしゅうございます。
ですので、「1.5」にさせていただきました。

2、茶葉の計量と湯量と抽出時間。

紅茶協会のすすめでは、
茶葉を抽出する場合
【5g/300ml/3分】とされています。
細かいことを申し上げますと
茶葉によって様々あるのですが、
概ねこの通りでよろしゅうございます。

ハーブティーは個々の違いが
茶葉以上に多くございますので、
難しい部分がございます。
ご興味あれば、お尋ねください。

この【茶葉の計量・湯量・抽出時間】が、最も大事です。
これさえ押さえていれば美味しく入ります。
他の部分は、より美味しくする為のものです。
(特に「こだわり」と申し上げているのは
 100点により近づける為のもの)

茶葉の計量について、はかりがあればいいですが、
なければティースプーンで2.5杯弱。
(山盛り2杯と少しです)
目分量なので何度か入れていただいて、
丁度いいあんばいをお探しくださいませ。

湯量に関しては、
一度300mlを計ってティーポットに入れてみてください。
注いだ際の大体の水位が分かりますので、
以降はそれを目安にお試しくださいませ。
実際の湯量は茶葉を含みますので、
お湯のみの水位より、気持ち高めに考えると
上手くいくかと思います。

抽出時間はタイマーなどで計ってください。
抽出後は、茶こしをかませてセカンドポットに。
茶葉は出していただいた方が
余分な渋みやえぐみが出ません。
面倒であれば、茶こし付きのガラス製ポットがお勧めです。

ちなみに使用人の中には、
セカンドポットに移すまでを3分と考える者と、
抽出開始からが3分と考える者がおります。
ここもこだわりポイント! ですね!

3・4、湯を注ぐ、抽出する、セカンドポットに移す。

湯を注ぐ一つとっても、
ジャンピングが云々、やれ優しく注ぐ、
いや高い位置から注ぐべきだ、
いやそんなものは意味はないetc…
様々なことが言われます。

私としては、
香りを立てたいときは
少し高い位置から強めに注ぎ、
ピュアティーなどは優しく注ぐようにしております。
とはいえこれも、
良くなる気がするといった部分ですので、
精進が必要ですね……。

セカンドポットに移す際も、
同じイメージが私にはあるのですが、
伊織などは普通に移しているので、
あまり関係がないのかも。

カップに直接注ぐのであれば、
高めから注ぐと香りは広がりやすいはずです。

この辺りは人それぞれ千差万別の部分ですので、
機会があればまたお話いたします。

===

美味しい紅茶はお楽しみいただけたでしょうか?
長くなりましたが、以上です。
まだまだ若輩者ですのに、語りすぎてしまった気も。
口だけにならないよう精進いたしますね。

是非、使用人たちの考案いたしましたブレンドを、
ご別宅でもお楽しみくださいませ。

あ! お勧めのブレンドですよね!

入れやすいのは圧倒的に、リリスと眠り姫です。
物腰の柔らかい百合野らしい柔らかな味わいと、
どんなに入れ方をしてもしっかりと芯がぶれません。
ストレートでもミルクでもよろしゅうございます。

フレーバードティーですと、
フリグが入れやすくてお勧めです。理由は言わずもがな。

少しこだわって入れてみたい方には、
ストレートなら姫睡蓮・アレキサンドライト。
姫睡蓮はステビアをしっかり入れるのが大事。
アレキサンドライトは私のイメージだと、
ジャスミンの味わいとフレーバーのバランスを
上手く出すのが難しい印象です。

ミルクティーですと、
PSG・メドゥアダラク・ゴシックあたり。
PSGは、当家のブレンドで1・2を争う難しい茶葉(私調べ)。
香りが繊細で消えやすい。しっかり出せたら素晴らしい。

メドゥも雑に入れると香りが弱いので難しさが。
ただチャイティー的な楽しみ方と考えると、
気にしなくてよろしいかも知れません。

ゴシックは甘い香りの部分をしっかり立てませんと、
アイリッシュウイスキーのフレーバーを感じにくいので、
バランスが意外に難しいので、出せると嬉しいです。

……ニルスはどうなのか?
作った本人なので簡単なのです……。
ジュニパーベリーを多めに入れるよう、
意識してみてくださいませ。

止め処ないので、この辺りで。
紅茶のお話も是非致しましょう!

才木

カサゴのギョナサン2

ギョナサン・ブライトストンは泳ぎの研究を再開した。さしあたって次なる目標は曲技飛行ならぬ曲技遊泳の会得だった。

 ギョナサンは「なぜ魚は直線的にしか泳ごうとしないのか」と、昔から思っていた。上下左右ジグザグに泳いでみたり、後方に進んでみたり、可能性は無限大にあるはずなのだ。

 ギョナサンは練習を始めた。そして今回は他の生物の観察も同時に行った。クラゲ、えび、たこ、イカ、色々な生き物の泳ぎ方や動き方を参考にし、次々と新技を開発することに成功した。さらに今までの経験と練習によって、それらの技を簡単に体現できることにギョナサンは深い喜びを感じた。

 この広大な海の中で、水中宙返り、スクリュー、後方一回転、ギョナサン流キューバンエイトを決められる魚はギョナサン以外一匹もいなかった。

 ある日ギョナサンがいつものように練習に勤しんでいると、ある変化に気づいた。若いカサゴ達がこちらを見ていたのだ。勿論、蔑むような目で見られることは昔からあったが、それとは様子が違うようだった。好奇の眼差し、さらには憧憬の念を抱く者もいた。

 その数は日に日に多くなっていった。10匹、20匹、30匹と、、、ギョナサンは思った「曲技遊泳はエンターテインメント性に富んでおり、傍から見てもきっと楽しいものなのだろう」
 
 そしてある時、一匹の若いカサゴが話しかけてきた。「僕にもその技術を教えてください」ギョナサンは驚いた。「ダメでしょうか?」彼はギョナサンの返答を待たずに尋ねた。

「、、、わかった、いいだろう。しかし曲技遊泳は極めてきけn、、」「待ってください!!」
 なんと、そのやり取りを聞いていた他の若いカサゴ達も一目散に集まってきたのだ。

「僕も!」「俺も!」「私も!」
「待て待て落ち着け」「いいか君達、曲技遊泳は極めて危険だ。つまり練習は相当ハードになると予想される。それでも耐えられるのか?」ギョナサンは冷静に答えていたが、内心は少し喜んでいた。初めて自分以外に泳ぎを極めたいと思うカサゴに出会えたことに。

「はい!もちろんです!」そしてギョナサンによる泳ぎの指導が始まった。

 初めはヒレの使い方や水平遊泳など基礎から教えていった。最初は地味な練習に不満を漏らす者も現れたが、そんな声も次第に無くなっていった。若さゆえか皆真面目に練習し、新しい課題を求め、どんどん覚えていった。

 ギョナサンは嬉しかった。自分の教えた事を熱心に取り組み、広まっていく。なにより自分と同じように泳ぐことが楽しいと思うカサゴ達がこんなにいたことに感激した。

 数週間後。ここら一帯の若いカサゴ達は、曲技遊泳を身につけていた。彼らは一匹一匹個性があり、時にはギョナサンをも驚かせるカサゴもいた。

 例えばクリス・マートンは曲技遊泳の才能が著しく、最も難易度が高いギョナサン流キューバンエイトを最速で成功させ、今ではギョナサンさえも考えつかなかった技を開発していた。

 やんちゃなアニー・キーディスは最もギョナサンに怒られた生徒と言えよう。しかし彼はあの最速遊泳記録を樹立した様子を隠れて見ていたらしく、それに憧れてスピードばかりを追及していた。アニーが自分の持っている記録を塗り替えた時は悔しかったが、嬉しくもあった。

 そして一番初めにギョナサンに声をかけたトム・ヨースターはとても勇気があるカサゴだった。海流を使った訓練など誰もが躊躇してしまう場面で、先陣を切って取り組んでいた。またギョナサンの補佐を率先して行っていた。トムとはこの期間で一番話したかもしれない。

 ギョナサンは一人で訓練していた時とは違う感動で溢れていた。そして最も充実した日々を過ごしていた。

 ギョナサンの指導が板についてきた頃、群れの長から呼び出された。「多分、最近の活動が評価されたのだろう」ギョナサンは嬉々として長のもとに向かった。
 
「来たかギョナサン・ブライトストン」
「族長、おまたせしました」そこには長以外にも幹部と呼ばれる大人たちも集まっていた。
「今回君を呼んだのは他でもない最近の活動についてだ」
「はい!」ギョナサンの声は歓喜に満ち溢れていた。

「ギョナサン、今行っている活動を即刻中止しなければ、君をこの縄張りから永久に追放する」

ギョナサンは頭が真っ白になった。
「え!?いったいなぜですか?」
「君の活動は今後群れに危険を及ぼすと判断されたのだ」
「、、、、」
「つまりこのまま活動を続けると、、、」ギョナサンは放心状態になりながら、長の話を聞いていた。

15分後
「先生、どうかされました?」いつもと雰囲気が違うギョナサンにトムが心配そうに声をかけた。
「、、、トムか、いや何でもない。すまんが今日は自習練習をしててくれ」
「わ、わかりました」トムはあえて何も聞かずに快諾した。
「悪いな」

 その夜ギョナサンは眠れずにいた。

 ギョナサンは落ち着きを取り戻していたが、そのせいか「長の言っていたこともあながち間違っていないな」と、感じていた。

 長が言うには、このまま自由にたくさんのカサゴ達が泳ぎ回っていたら、サメなどの天敵に見つかってしまう恐れがある。ギョナサンと共に早く泳ぐ術を身に付けた者はいいだろう。しかし生まれたての幼い子供や長のような老魚はそんなわけにもいかない。
 さらにはそんな生物がやってきたら他の種族にも影響を及ぼし、我々だけではなく、この楽園そのものが危険にさらされる。

 少し前ならそんな事に聞く耳を持たなかった。しかし、トム達との出会いでギョナサンの心も大きく変化しており、それが彼を迷わせていた。
 期限は明日の朝。ギョナサンは決めなければならない。活動を中止し、普通のカサゴ達のように生きるか、それとも永久追放か。

 次の日

「族長!いったいどういうことですか!?先生が、いやギョナサンが永久追放されたというのは」
「聞いたかトムよ」

「あんなに偉大な方を追放するなど、おかしいじゃないですか!」
「もう決まったことだ。彼はもう帰ってはこない」
「、、、」
 その後、長から全てを聞いたトムは、共に泳ぎを学んだ仲間たちに伝えた。

「そうか、そんなことが」
「仕方ないとはいえ、酷い話じゃないか」
「先生も僕たちに相談してくれればよかったのに」

「でも、先生は何か新しい目標ができたんじゃないかな」
「トム、それはどういうことだい?」
「ほら族長が言っていた、先生の最後の言葉」

”この泳ぎで世界を見て回ります”

「だから僕たちも先生から学んだことを、なんとかして伝えていこうよ!」

 ギョナサンから学んだ生徒たちはギョナサンの意思を他のカサゴ達にも伝えるよう努力した。ギョナサンのことを完全に否定する者があまりいなかったこともあり、それは徐々に広まっていった。
 そして数年後、ついに長や幹部たちを説得し「法と制限の範囲であれば自由に泳いでもよい」と自由への一歩を踏み出した。

 時を同じくして世界中の海域で、あるカサゴの噂が流れ始めた。

後編完


                    

           われらすべての心に棲むカサゴのギョナサンに

後日譚

 今日もカサゴのポコピーは泳ぎの特訓をしていた。

 ポコピーはあるカサゴの伝説を信じ、いつも一生懸命泳いでいた。しかし周りのカサゴ達はそんな彼を、いつも小馬鹿にしていた。

「おいポコピー!今日もくねくね泳ぎの練習かい?笑」
「そんなことして何になるってんだい!笑」

「うるさいぞ!君たちは伝説のギョナサン・ブライトストンを知らないのか!」ポコピーは精一杯声を張り上げて言った。

「お前そんな伝説、信じているのか?」
「馬鹿な奴だなぁ笑」
「大人たちはみんな言っているぜ、あれは昔からある、おとぎ話だって」

「そんなことない!伝説は本当さ!」

「どこの世界に回遊魚より速く泳げるカサゴがいるってんだ!」

「いたさ!それにギョナサンは速いだけじゃないぞ」
「例えば、え、えーと、、、そうだ [きょくげいおよぎ]だってできたんだ!こんな風に」ポコピーはしっぽをピョコピョコ動かしジグザグに泳ごうとした。

「わはははは!」
「またくねくねしてるぞ!」

 ポコピーが必死に泳いでいると”ゴツン!”何かに頭をぶつけた。
「いてててててて、、あっ、ごめんなさい」どうやら別の泳いでいたカサゴにぶつかったらしい。

「ポコピー、そんな変な泳ぎをしているからぶつかるんだよ笑」
「でも、あんなカサゴ見たこと無いな。それに体中ボロボロだぞ」そのカサゴの鱗は剥がれており、ヒレも所々傷ができていた。

 ポコピーも驚いていたが、なぜかその姿に懐かしさを感じていた。
「あのー、どこかであったことありますか?」ポコピーが聞いた。

「いや」「君は泳ぎの練習をしていたのかい?」
「は、はい。あのギョナサン・ブライトストンのようになりたくて」

 するとそのカサゴは静かに笑った。そして次の瞬間、目の前から一瞬で消え、いつの間にか水面ギリギリまで移動していた。

 遠くで見ていたいじめっ子のカサゴ達は何が起きたのか分かっていなかった。しかしポコピーは確信していた。
「今、絶対に泳いでいた!!!」「あ、あなたは何者なんですか?」大声でポコピーは聞いた。
 
 すると今度は海底にものすごいスピードで泳ぎ始めた。しかも途中で前後左右、何回転も回り、渦巻き状にも泳いでいた。そしてまた一瞬の内にポコピーの前まで来ていた。

「どうやったのですか!?」
「今のはただの戯れさ。カサゴの限界を突破し、途中で[曲技遊泳]を組み合わせただけのこと。君もやってみるかい?」
「はい!」そしてポコピーはある確証と共にその者の名前を尋ねた。

「私かい?ギョナサン・ブライトストン。ギョナサンとでも呼んでくれ」

                       完

ハロウィンのすすめ

お嬢様、お坊ちゃま。
奥様、旦那様。
ご機嫌麗しゅうございます。
才木でございます。

皆様、ハロウィンはお楽しみいただけておりますか?

この度は「お屋敷」がテーマでございます。
三カ国の使用人達がティーサロンに集い、
パーティーが催されるというストーリーです。

しかしハロウィンに集う使用人達でございますので、
一筋縄では参りません。
使える主人のの幸せを守る為、
荒事も辞さない輩共にございます。

そんな彼らが一堂に会する時、
穏便に済むような謂れなどございますでしょうか?
それぞれのお屋敷の誇りをかけて、
三つ巴【Triangle】の争いが巻き起こります。

……

そんな使用人達の姿を!
収めた一冊をご用意しております!
それが
【Swallowtail Halloween Photobook「TRIANGLE」】
にございます!

この度は、
ハロウィンの配信イベントも
合わせてお楽しみいただけます。
フォトブックとして仮装姿を楽しむもよし。
配信の副読本として楽しむもよし。
一粒で二度美味しいものに仕上がっておりますよ!

なお配信の内容なのですが……。 
使用人達のゲーム対決ですとか、
彼らの日常の記録をミニシーンとして撮影いたしましたり
様々、楽しんで頂けるようにお作りしております。

それぞれのキャラクターの設定などを
フォトブックにて予習いただきますと、
より楽しめるかと存じます。

数に限りもございますので、
是非お早めにお手に取ってくださいませ!

色々と申し上げましたが、
使用人一同、皆様にお楽しみいただけるよう、
精一杯考えたハロウィンでございます。
お楽しみ頂けますと幸いです。

才木

カサゴのギョナサン

夕暮れだ。今日も騒がしい海に、夜の帳が下りようとしている。

 ここら一帯の沖合は、水面から大きく飛び出すほどの岩礁がいくつもあり、常に潮の流れが活発であった。プランクトンや甲殻類は豊富で、それらを食べる小魚にとっては絶好の海域であり、さらにそれを食べる大きな魚達はここを楽園と呼んだ。

 岩礁は住処としても優秀であった。魚達は知る由もないが複雑な潮流は漁船を決して近づけず、岩礁の岩陰や無数の珊瑚は絶好の隠れ家となっており、サメ等の天敵からも守られていた。

 つまりこの楽園に住む大きな魚達は、毎日安心して美味しい餌を食べ生きているのだ。ただ一匹を除いて。

 今日もカサゴのギョナサン・ブライトストンは眼下に広がる餌には目もくれず泳ぎの練習に夢中になっていた。
 普通、魚は食べるため、逃げるため、生きるために泳ぐものだが、ギョナサンにとって重要なのは泳ぐことそれ自体だった。彼は泳ぐのが好きだった。

 ギョナサンは特に速度を追及しており、「どうすればよりスピードが出るのか」という事ばかりを考えていた。普通に泳いでいてもカサゴの域を抜け出せない、ではどうすればよいか。

 まずギョナサンは、しっぽの振り方や背ビレの角度を変えながら、朝晩問わず何度も泳いだ。するとある日を境に、だんだんと速く泳げるコツを掴みだした。
 どうやらしっぽの動きは振る回数よりも、一定のリズムを崩さない事の方が大切らしい。そして背ビレは、速度によって角度を微妙に調節することが重要であるという事を彼は知った。

 次に、ギョナサンは海流を利用しようと考えた。これはとても難しく、気を抜くと流されてしまう。さらには、ただ泳いで乗るのではなく、先ほどの動きを取り入れなければならない。何度も失敗した。しかし彼は諦めなかった。

「要はバランスが大切なのだ。バランスが崩れると体が傾き、泳ぐどころではなくなる。つまり最も水の抵抗を受ける頭を正確に保てれば、バランスを失うこともないはずだ」そこからの上達は恐ろしく早かった。
 そしてついにギョナサンは海流での泳ぎをマスターし、カサゴ界の最速遊泳記録を大幅に更新した。

 しかし成功の裏には大きな犠牲もあった。ギョナサンの体はハードな練習によりボロボロになっていたのだ。鱗は所々剥がれ、ヒレも傷ができていた。また、ろくに餌を食べずに練習していたので体はやせ細り、そして群れの仲間達からは距離を置かれていた。

 ある日、群れの長から「ギョナサン、少しは他の仲間達を見習って、海底でじっと餌を待つことはできないのか」と怒られた。それからの数日間ギョナサンは素直に従い、海底で餌をじっと待ってみた。
 だが、やはりギョナサンには耐えられなかった。

「小魚や小さいカニを待って現れなければちょびっと移動して、また待つ。それの繰り返し。これに何の意味があるというのだ。時間の無駄だ!」ボケっと口を開けている仲間達を余所に、ギョナサンはまた泳ぎ始めた。

前編完

今回も長くなってしまい、勝手ながら途中で区切らせていただきます。申し訳ございません。
そして今回の内容に関しても、「ぱk、、、パロディかな」と察してくださったお嬢様、温かく見守っていただければ幸いでございます。

終わり。

拉麺。

お嬢様、ご機嫌麗しゅうございます。
本日は歴史の勉強を致しましょう。

お嬢様は「辮髪」をご存じでしょうか?
「べんぱつ」でございます。

言葉では聞きなじみがないかと存じますので、私が描いた絵でご覧になっていただければ
きっとお嬢様もどこかでご覧になった事のあるヘアースタイルかと存じます。

前期。
一般的にイメージされるのはこちらかもしれません。

後期
あまり見覚えがないかもしれませんが、的場はこちらの方が格好良いと感じております。

昔の中国人男性の頭髪で、現代では見ることができませんが、
日本で言うところの「ちょんまげ」に近い感覚のものだそうです。

馬に乗る時、戦う時に邪魔にならない様にこういう髪型にしたそうでございますよ。
「じゃあこんなに前や上をたくさん剃る意味があるのか!?」とも思いますが…。

日本の江戸時代ぐらいの時期に中国ではみんなこのヘアーだったそうです。
非常にナウい感じがして気分が良いですね。

今見ると「とても変な髪型だなあ」という感じも致しますが、
何故か一周回ってノスタルジィというか、古き良き時代の浪漫を感じたり
現代の俳優が辮髪にしていると凄く格好良く見えたり致します。

つまり何かと言えば、私は辮髪にとても魅かれた、という次第でございます。

ギフトショップではハロウィンの使用人がたくさん!
私のお勧めはフォトブックでございます。

それでは本日はこれにて。